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  • 【レポート】海外進出企業が知っておくべきコンプライアンスリスク

2018.10.04

2018年9月20日(木)、帝国データバンク本社にて、「法律の専門家から学ぶ 海外進出企業が知っておくべきコンプライアンスリスク」と題した開催しました。本セミナーでお伝えした内容の一部をご紹介します。

世界的に企業活動に関連する規制・罰則が複雑かつ厳格化されている中で、適切に業務を推進するにあたり、『コンプライアンス』というワードの注目度はますます高まっています。 海外関連会社の管理を含めたコーポレートガバナンスやコンプライアンスチェックはグローバル企業の課題と言えます。一方で、多くの企業がコーポレートガバナンスの方法やコンプライアンスのチェック方法に難しさを感じています。

セミナーは2部構成で、第1部では西村あさひ法律事務所の弁護士根本様からコンプライアンス管理について、特に海外企業買収時・海外子会社管理における留意点をお話しいただきました。つづく第2部では、帝国データバンクの業務提携先であるグローバル企業情報データベースを提供するビューロー・ヴァン・ダイク・エレクトロニック・パブリッシング株式会社(BvD社)の内田様と弊社岡田からグローバル企業に求められるコンプライアンスチェックと規制対応において利用可能な企業情報について紹介しました。

◆セミナー講師
第1部 根本 剛史 様
 西村あさひ法律事務所
 パートナー弁護士・ニューヨーク州弁護士
第2部 内田 芳裕様
 ビューロー・ヴァン・ダイク・エレクトロニック・パブリッシング株式会社
 (ムーディーズ・アナリティクスグループ)
 データコンサルティング事業本部 市場開発チーム シニアセールス

第1部 海外進出企業のコンプライアンス・リスク対応

表1 過去の罰金額上位10社(米国司法省) 2017年6月現在
第1部では、コンプライアンスリスク、コーポレートガバナンスの視点から、海外進出における企業買収・子会社管理の留意点を説明いただきました。

■海外企業買収時の留意点
海外企業の買収時に注意すべき事項として①出資規制、②資金決済・外国為替管理、③競争法、④土地の所有制限の4つのポイントを挙げています。

①出資規制では、対象国によって外国資本が全面的もしくは出資割合が制限されていたり、反対に一定額以上の資本投下が義務付けられる場合があり、現地パートナー企業を立てるなどの対策が必要となります。②の資金決済・外国為替管理における注意事項として、海外子会社であげた利益や買収後の親会社への配当・ロイヤリティの送金の制限、株式取得の対価決定方法や支払方法等への影響について説明されました。また、昨今では安全保障の観点から政府機関による買収審査が必要な場合があり、本セミナーでは、米国のCFIUS(対米外国投資委員会)による米国内への投資案件審査について紹介しました。CFIUSは買収対象国が米国であれば、米国外の企業であっても審査対象となる可能性があるため、事前に当該案件が国家安全保障にリスクを与えるとみなされるか確認の必要性が指摘されました。
また、③競争法の観点からは、買収対象国以外にも各国競争法に基づく企業結合審査の必要性が紹介されました。当該審査によって案件の棄却やスケジュール遅延の可能性が指摘されました。④土地の所有制限として、株式取得の結果、買収対象会社を通じて土地を取得する場合、対象国が定める適切な使用権に切り替える必要性を説明しました。

■海外子会社管理の留意点
続いて、先進国・新興国における海外子会社管理の特徴について説明しました。
先進国での不正の特徴としては、物理的な距離はあっても本社との距離感が近く、緊密な連携を取っていることや、会計・税務調査の適正な実施から、収賄・横領のリスクは低いことが挙げられます。一方で、カルテルなど競争法違反のリスクが注目され、最近では当局による摘発やリニエンシー制度による発覚が増えてきています。
一方で、新興国の特徴としては、商習慣の違いや情報収集の難しさに加えて、公務員の倫理感が高くないことや、ビジネス上でも贈収賄が横行していることから、汚職リスクが高いことが特徴です。また、先進国での不正発見の端緒である会計・税務調査や内部調査が機能していないことも不正発見が困難になる理由の一つです。

■海外腐敗防止法(FCPA)
海外子会社管理の留意点の一つとして、海外腐敗防止法(FCPA)を取り上げました。海外腐敗防止法(FCPA)とは、米国の連邦法で、以下の要件に則した利益を供与(申込、約束を含む)することにより罰則の対象となります。

①営業上の利益を得る目的
②外国公務員や国際機関の職員、外国の政党、政党の職員、外国の公職の候補者(「外国公務員等」)等を対象とする
③当該外国公務員等の職務権限に関係する行為や決定に影響を与える目的、当該外国公務員等の法的な義務に違反する行為や不作為をさせるよう当該外国公務員等を誘導する目的、不適切な便宜を得る目的、または、外国政府やその機関に当該外国公務員等の影響力を使って、当該政府や機関の行為や決定に影響を与えるよう当該外国公務員等を誘導する目的

 FCPAによる罰金額は高額になることも多く、2017年6月時点で過去の罰金額上位10社(米司法省)は表1の通りとなります。

第2部 グローバル企業に求められるコンプライアンスチェックと規制対応

第2部では、コンプライアンスリスクに係る実務上、必要な対応について紹介しました。

■海外進出企業のコンプライアンスリスク
グローバル企業に求められるコンプライアンスチェックでは、まず、「取引先が何者なのか」を把握することが重要です。「そもそも存在しているのか」「すでに合併・解散・清算していないか」「どこの系列・資本傘下か」など、物理的にも離れており商習慣が異なる海外取引先の実態を把握することは容易ではありません。これら実態把握をした上で、コンプライアンスチェックを行うことが重要です。
BvD社では、インターネットでどこからでも利用可能な全世界221の国・地域、2億9,000万件を収録した世界最大級のデータベース「Orbis」を提供しています。また、コンプライアンスチェック・ソリューションとして、Orbis収録企業をLexisNexis WorldCompliance 社(以下WOCO)提供のチェックリスト情報357 万件超と照合させた結果を提供しており、Orbis 収録企業のうち約50 万社が該当します(2017/12 現在)。
このコンプライアンスチェック・ソリューションの活用シーンとしては以下のような場面が挙げられます。

・取引先の存在確認・基本情報の確認
・取引先役員のPEPs・役職兼務確認
・制裁対象の確認
・ネガティブニュースの確認
・役員、最終親会社やベネフィシャルオーナーのコンプライアンスチェック
・国営企業・国家資本の出資確認
・企業の公表ドキュメント(AML書類等)確認
・名寄せ・マッチング・データメンテナンス・アラート

■OFAC (米国財務省外国資産管理室)50%ルールへの対処法
Orbisの特徴的な機能としてネガティブニュースやOFAC50%ルールに対応したアラート機能が挙げられます。これにより,OFAC (米国財務省外国資産管理室)50%ルールへの対処が可能になります。
OFAC(およびEU)の制裁リストに掲載されている個人と企業は、制裁の対象になると明白に判明した個人と企業のみが掲載されており、対象となる人物・企業の一部でしかありません。しかし、OFAC・EUの50%ルールでは、制裁対象と50%を超える出資でつながっているグループ企業も制裁対象とみなされますが、どの企業が50%ルールの対象になるかや、頻繁に変化する所有比率を常に把握することは困難な作業です。
Orbisのオーナーシップ情報を活用することで、検索時点での最新の所有比率を使用して50%ルールの対象先を一括で確認できます。この情報は、世界中の大手金融機関などAMLに対応しなければならない事業者に広く利用されています。

終わりに

本セミナーでは、海外取引におけるコンプライアンス上の留意点と、コンプライアンスチェックソリューションについてご紹介しました。現在、海外進出企業には海外グループ会社の取引先も含めコーポレートガバナンス、コンプライアンスチェック体制の構築が求められています。本セミナーでは、グループ取引先の可視化・ガバナンスの強化、不正や過失の防止・未然のリスク回避を図る重要性が指摘されました。

セミナー終了後のアンケートから、コーポレートガバナンスに関する業務に従事されている参加者の問題意識として「管理体制構築のチェックリスト」「現地法人の管理体制」が56.3%と最も多く、社内体制づくりの重要性が認識されていることが伺えます。同様にコンプライアンスチェックに従事されている方が注目している法令・規制として「FCPA/UKBA」「制裁対象国・対象者の確認」が41.7%と高い回答でした。
講師お二人の話がこれら今後の取り組みや課題解決のヒントとなりましたら幸いです。
帝国データバンクでは国内のみならず海外の企業情報の活用に関する情報発信を続けていきますので、今後ともよろしくお願いいたします。

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