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  • コンサルティングの現場から~5:組織と仕組みで実践するマーケティング

2016.05.07

 前回のコラムでは、「強みを生み出している仕組み」について触れました。自社で「仕組み化」されているものを改めて考えていただき、列挙するだけでも自社についてのよい整理の機会になると思います。
 我々にお寄せいただく相談内容は様々ですが、多くの企業で経営課題の真因(現象面の問題点ではなく、その問題を起こしている本当の原因)は、「仕組み化がなされていない」ことがほとんどのケースで当てはまり、仕組みがない企業が非常に多いことに気づかされます。
優秀な経営者が率いる会社や、成長している会社には必ず「仕組み」が存在しています。逆に経営者がどんなに優秀でも、会社に「仕組み」が存在しなければ、成長は危ういものとなるでしょう。
 そこで、今回は仕組みの必要性をより身近に感じていただくために「売上を上げたい」という経営者のよくある経営課題をテーマにしながら、「仕組み」としてのマーケティングを社内にどのように位置づけるべきかをご案内いたします。

営業とマーケティングの違い

 1つ質問です。普段、従業員に「マーケティングと営業の違い」をどのように説明されていますか?

 マーケティングという言葉は非常に示す範囲の広い言葉です。「売上を上げる」「販売を強化する」という概念の中で、あまり区別されずに使われている方も多いのではないでしょうか。特に日常業務において「マーケティング力を強化する」と「営業力を強化する」を明確に定義し、使い分けている経営者は少ないように思います。
 マーケティングの定義について、誤解を恐れずに一言で表現すると「営業を必要としない状態にする活動」ということができます。詳細は以下で触れますが、まずはそのように仮に捉えておくと、マーケティングと営業を区分しやすくなるかと思います。

営業マンのスキルアップだけが売上向上策ではない!

 お会いする経営者の多くは、「自社の営業マンのスキル」に満足されていません。そして、売上を上げるために「営業マンのスキルアップによい方法はないか?」と相談を受けます。このテーマだけでも、年間かなりの件数です。
 「うちの商品はよいものなのに、それが売れないのは、営業マンがうまく伝えらえてないからだ。」とおっしゃる経営者の声を聞くことがありますが、果たして売上向上に足りないものは、営業マンのスキルアップだけでしょうか。「よい商品×できる営業マン」それさえ揃えば、売上は上がっていきそうですが、そうではありません。よい商品を揃えてもそれだけで、商売が成り立つほど、世の中単純ではありません。かといって、何でも売ってくるスーパー営業マンがいれば解決する問題でもないのが、このテーマの難しいところです。そこで必要になってくるのが、「営業を必要としなくするような組織的なマーケティング活動」の取り組みです。

スーパー営業マンは、つくるべきではない!

 企業を成長させたいのであれば、一部の営業担当者に売上が偏らない体制を目指すべきです。その営業マンがいなくなったときのことを考えてみると、退職することも考えられるし、病気で長期的に会社を休むということだってありえるでしょう。
 したがって、売上の割合が、一部の営業担当者に偏り過ぎている場合は、早期に脱却への舵を切らなければなりません。「この人がいなくなれば、会社が回らない」という優秀な社員が増えるほど、そのままにしていては、会社は危うい状態にあるのです。誰かがいなくなっても、会社が自然と回る仕組みをつくること。これが経営者にとって理想の形だと思います。
 経営者はつい「こいつがいればうちの会社は大丈夫!」という優秀な社員を育てようと考えてしまいがちですが、それは実は逆なのです。

会社が成長しないのはなぜか?

 経営者の仕事は、自ら営業し、お客さんを集めることではありません。世の中の動向や会社全体のことなど全体を俯瞰し、これからどう会社を舵取りしていくのか意思決定していくことです。社長が営業から離れなければ、経営者は本来自分がやるべき仕事に専念できないのです。
 社長が会社で一番のトップ営業マンという会社がありますが、確かに会社の規模が小さいうちはそういう時期もあると思います。もちろんそれで社員がうまく育てばいいのですが、社長がプレイヤーとして活躍している限り、いい管理職も、いい営業マンもなかなか育たないということに是非気づいてください。
 創業してから成長段階にステップアップする企業も年商3億円の壁とも5億円の壁とも言われる売上が伸び悩む局面をむかえます(業種によってその年商ラインは幅がありますが)。その局面にある企業を分析していくと、ほとんどのケースで社長が営業から抜けられていないという条件が当てはまります。社長が自分の時間を最大限活用して、仕事に身を投じて、稼げる売上が3億円・5億円の年商の壁なのです。
 つまり、会社が成長しない原因を社長自身がつくっているのです。このように、社長が営業から抜けられない企業は、幹部が育たず成長の踊り場局面を抜け出せなくなります。そうすると成長が実感できず社内に重たい空気が流れ、企業活力が目減りしてしまいます。

社長が営業から抜けるためには「仕組み」が必要

 よく言われる法則に「2対6対2の法則」と呼ばれる法則があります。それを企業に当てはめると2割の優秀な社員と6割の普通の社員と2割のぶら下がり社員によって構成されていると言われます。営業面に当てはめると優秀な上位2割の社員が売上の8割を稼いでいるということになります。
 これでは、社長依存から抜け出したとしても、会社として、組織として売上をつくっているとは言いがたい体制です。社長が経営者として取り組むべきは、「残りの8割の営業マンを戦力化する」ことです。ここで注意すべきは、「営業マン個人のスキルアップ」に傾倒し過ぎないことです。上位2割は放っておいても売上を作っていくでしょう。動かすべきは残り8割の営業マンです。特に6割の普通の営業マンたちを如何に戦力化し、動かすかで組織の明暗が分かれるでしょう。
 個人の能力・スキルに依存しないためには「仕組み」をつくる必要があります。6割の普通の営業マンが機能するようになれば、上位2割と合わせて、全体の8割が有効に機能することになります。組織の8割が稼動すれば、おのずと成果はついてくるでしょう。

スキルアップは「個人」が、マーケティングは「組織」がするもの

 スキルアップは、個人がするものです。しかし、マーケティングは組織でするものです。この違いを明確にする必要があります。
 個人でマーケティング(と思しきもの)を仕掛けたとしてもそれは、その人のスキルとキャラクターに依存し、他の人にとって活用できない(再現性のない)ものであったならば、それは1人の秀でた人の「仕掛け」でしかありません。組織として、誰もが(とまで言わなくても一定以上の人材が)それを活用できて、一定の成果を出せるものを「仕組み」と呼びます。
(今回のコラムでは、マーケティングを簡素化し、ここでは「見込み顧客を集める」とひとまず定義します)
 行き当たりばったりの会社と、しっかりとした仕組みがある会社。企業としての成長の差は明らかです。仕組みとして、組織でマーケティングを実践していくに際して、まず取り組むべきは、自社のお客さまがどこに存在し、どこに集まっているのかを「見える化」することです。
次に取り組むべきは、営業部門とマーケティング部門の線引きです。つまり、お客さまを集めるという作業において、どこまでが営業部門の領域でどこまでがマーケティング部門(組織として)の領域なのかをはっきりさせることが必要です。見込み客がいないと、せっかくスキルアップして個人が高めた営業の力はまったく活かせないという残念な状態を生んでしまいます。

組織としてのマーケティングの仕組みを考えるのは、社長の仕事

 自社の営業マンの活動を振り返ってみてください。本来マーケティングでやるべき「見込み客探し」の仕事を、営業マンに任せっきりになっていませんか?「見込み客を集める」効率によって、営業マンの成果にバラつきが出ているとしたらどうでしょう?
 上位2割の営業マンは、優秀ですから会社の方針を汲んで、見込み客を集めることはできるかも知れません。6割の普通の営業マンとの違いがこの「見込み客を集める」機能だとしたらどうでしょうか?そこを会社が組織として補ってあげることができたなら、営業マンたちに均等に前提条件として提示してあげられたのなら、「組織の上位8割の戦力化」に一歩近づけるのではないでしょうか。
 ここで是非考えていただきたいのは、会社の戦略に則って、優先的にお客さまにするべき層は、どのような特徴を持ち他の客層と何によって区分されるのか、どこに多く存在しているのか、そしてそこにどのような働きかけをすれば、自社のビジネスメッセージを伝えることができるのか。そこを考え、定義し、社内に共有するという業務は、まさに経営者である社長の仕事ではないでしょうか。社長が本来するべき業務に集中し、遂行することができれば、企業をもう一段高いステージに成長させることができるのです。


次回テーマは、「経営者が陥りやすいISOに対する誤解」です。

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