小売業界最前線
2013.10.16
ここ10年で、百貨店の売上は8.3兆円から6.1兆円へと大きく後退し、GMS(総合スーパー)も14.4兆円から12.5兆円へと後退している。率にすると、百貨店が27%、GMSが13%のダウンである。これら2業態については、商品は総花的な扱い、顧客ターゲットは老若男女の全てを対象としている。物不足の時代には発展したが、今日ではもはや衰退産業に近い形となっている。
反面、顧客ターゲットを絞り、コンセプトを明確にしている業態は、着実に売上を伸ばし、消費者の支持を得ている。その代表例は、コンビニエンスストア(CVS)であり、売上面では百貨店と完全に入れ替わった感がある。
専門店も成長を続けている業態である。ユニクロやしまむら、無印良品、ニトリ、ヤマダ電機等、枚挙にいとまがない。今まさに伸びているのは、こうした専門店である。既述の大手や上場会社だけでなく、中小・零細企業の中にも、伸びている、もしくは伸びていく会社は数多く存在している。ネットの存在も無視できないが、これもリアル店舗とセットとなっている企業が好調である。
キーワードは「明確なコンセプトと顧客ターゲット」
まずは、
【1】戦略として、明確なコンセプトと顧客ターゲットの設定がある。次に、
【2】戦術として、確固たる4Pの策定と実施が挙げられる。
4Pとは、Products(商品)、Price(価格)、Promotion(販促)、Place(立地)である。
最後に、
【3】戦闘として、やる気のある有能な人材である。とりわけ、本社スタッフや店舗の販売員の充実が重要である。これらの要素がそろえば確実に伸長する専門店への仲間入りができる。
出店戦略の練り直しで、6店舗から38店舗に急拡大した企業の事例
以前、小中学生を対象にしたファンシー雑貨を扱う企業を支援した時の話である。その企業は、数百円の単価のアクセサリーを雑誌広告の通販と、駅近の中堅スーパーで販売していた。当時、6店舗を展開していたが、販売低迷により苦戦を強いられていた。
購買層の小中学生は、単独で駅に近いスーパーに訪れ、アクセサリー等の雑貨を頻繁に購入することは考えにくい。そこで、ファミリー層が訪れる大型のショッピングセンターに出店したところ、家族連れの顧客が増え、顧客単価・店舗売上も一挙に増大した。5年で店舗数は6店から38店舗に拡大し、当期純利益も毎期数千万円確保できるようになった。
コンセプトを絞り込む際には、様々な仮説を立てる。その際は、徹底的に購買に至るまでのシーンを思い描きながら、自社の強み・こだわりについて議論を重ね、絞り込むことが重要である。
また、出店場所の選定では、デベロッパーの動向把握が成功の鍵となる。
次回は、専門店の出店先であるデベロッパーの最近の動向について触れてみる。
株式会社エムジェイワイコンサルタント
代表取締役 大和 幹夫