老舗2万6千社に学ぶ生き残る企業の条件~老舗企業トップ5~
2016.10.21
第1位は大阪府にある金剛組で、創業は何と578年と飛鳥時代までさかのぼります。聖徳太子が四天王寺建立のため百済の国から招いた工匠がルーツといわれており、江戸時代までは四天王寺の宮大工として事業を続けてきました。いわば幕府のお抱え大工ですから、ある意味事業を続けることにさほど困難はありませんでした。
ところが、明治維新後に環境は一変します。明治新政府による廃仏毀釈によって寺社の建築・修復需要が縮小したのです。金剛組は幕府という後ろ盾を失くし、経営は困難を極めます。そうしたなか金剛組は、第二次世界大戦後以降、一般建築を手がけるようになり、バブル崩壊の影響を受け経営難に陥ります。
結局、中堅ゼネコンの高松建設の支援を受け、債務を切り離した上で、新会社を設立、高松建設グループの子会社となりました。旧会社は2006年に破産手続きに入っています。
第2位は西山温泉慶雲館
2位から4位は旅館がランキングされました。いずれも温泉旅館です。温泉はその薬効成分によって古くから医療の一環として利用されてきました。そのため、温泉で病気を治療しようと訪れた人々が宿泊する施設ができ、それが綿々と続いて、老舗旅館として現在に至っているというわけです。
業種から見た老舗企業
老舗企業を帝国データバンクの産業分類に沿って分けると、最も多い業種は、清酒製造という結果となりました。そのほかにも、酒に関連する業種は、3位の酒小売、7位の酒類卸と「お酒」に関する業種が川上から川下まで3業種トップ10にランクインしています。
清酒は、古くは平安時代に現在とほぼ変わらない製法が見られるなど、古くから日本に定着していた産業ですから、自ずと老舗企業が多くなったのだと思われます。
この中で意外に思われたのは第2位の貸事務所業ではないでしょうか。そもそも創業時から貸事務所業を行っている会社はほとんどないと思われます。元々は小売店などを経営していたのですが、のちに店舗をオフィスビルに建て替えて、店は1階に構え、上階はテナントとして賃貸するうちに、本業の小売が伸び悩み、代わりにビルの賃貸の方が事業規模が大きくなり、やがて本業となってしまったというケースが、この結果となってあらわれています。
長年の経営で積み上げた資産によって、本業が伸び悩んでも、企業は生き延びているという例です。
また、9位にはガソリンスタンドが入っています。もちろん、自動車が発明されてからまだ100年ちょっとしか経っていませんから、創業時からガソリンスタンドを経営していた会社は皆無でしょう。創業当初は、照明用の油や、食用の油を扱っていたところが、戦後になって転業してガソリンスタンド経営が本業になったというような理由から、ガソリンスタンドがランクインしたのです。