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  • 調査会社の活用法 ~調査会社の人~

2014.05.02

[企業審査人シリーズvol.31]

金曜日の午後、応接にいた中谷から青山に電話が入った。
「いま調査会社の横田さんが来てるんだけど、まだ会ったことないでしょ。紹介するから来てよ」
「すぐ行きます!」と受話器を置いた青山だが、(なんだ、来客なら事前に言ってくれればいいのに、今日はラフな格好だよ・・・)と思いながら、しばらく机にしまってあった名刺入れを取り出した。営業部にいた頃はしょっちゅう名刺を発注していた青山だが、審査に来てからはまだひと箱も使い切っていない。
(調査会社の人ってどういう人なんだろう。いつもの電話の感じじゃ若いけど・・・)
格好のことはすぐに忘れて、青山はエレベータで1階に降りていった。
 応接に入ると、若い男性と中年男性が眼に入った。
(2人?聞いてないぞ?)
中谷に紹介され、慌ただしく名刺を交換して席に座った青山は、改めてふたりを見た。横田は30歳くらい、キリリとして男前、いや、江戸前の匂いがする。軽く伝えてみたら、実家が羽田にあり、親の世代までは漁師をしていたそうだ。もうひとりの大柄な人は大川課長、横田の上司であり、冗談を言いながらガハハと笑う陽気な人だ。3年前までウッドワークを担当していたらしい。

「調査会社の人って、何となくこわいイメージがありましたけど、安心しました」
ひとしきり初対面の挨拶をした後、青山は正直な感想を漏らすと、横にいた中谷が吹き出した。
「トレンチコート着て電柱の陰に隠れているイメージでしたか。ガハハ」と大川が笑う。
「報告書を拝見していて、これだけのことを取材するのにどれくらい時間がかかるんだろうって、いつも思っていたんです」と青山が聞くので、「それはですね・・・」と江戸前の横田がにこやかに説明をはじめた。

調査会社の調査にも特徴がある

調査会社というのはどこか謎めいた雰囲気があり、実際の業務の動きというのもイメージしづらいものです。実際に1件の調査報告書ができるまでには、さまざまな調査会社が持つ情報ネットワークや膨大な蓄積データが活用されています。同じことを自社でやろうとした場合、取引先が遠隔地にある場合も含めて相当のコストと労力がかかることを考えると、調査会社の利用は有益です。ただ調査会社の調査や報告書には特徴があり、、そこをおさえておくことで、自社での調査とうまく併用することが可能になります。
 エピソードが途中になりましたが、横田が青山に説明した調査会社の調査は次のようなものです。
・調査員は依頼者を知らされずに調査先を指示され、毎日1~2社の調査を行っている
・調査の情報網はいろいろあるが、調査先に直接コンタクトをとって取材することを原則としている
・調査員が出向くのは原則として調査先の本社であり、本社住所を管轄する事業所の調査員が出向く
・調査員が調査先で面談する相手は経営者、もしくは管理部門の責任者である
・調査員が調査先で取材を行う時間は、会社にもよるが短くて30分、長くて2時間である 

拠点の現況は自社で補うべし

 これらの特徴の中で意識しておきたいのは、調査会社は基本的に調査先の本社に出入りしているということです。中小企業では社長が応対することが多く、本社の様子や会社の方針、経営者の現状認識についてはよく引き出せますが、地方に工場を持つ企業などの場合は工場の現地確認はできません。したがって、まず工場など本社以外の拠点の動きについては自社の営業マンを通じて変化を報告させるといった相互補完ができます。また社長から得られる情報は「公式見解」という側面もあり、とくにガバナンスに問題がある企業の場合、従業員や現地責任者から得られる情報が生きるケースもあります。こうした調査会社の調査の「限界」をも知っておくことで、自社の営業マンを活用してより複合的に情報をおさえ、精度の高い審査ができるようになります。

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