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  • 課税取引の話 ~非課税?不課税??免税???~

2016.10.24

[企業審査人シリーズvol.125]

その日、得意先回りから戻ったベテラン営業マンの八木田が、経理課の木下を訪ねてきた。急に涼しくなったこともあり、八木田はビシっとしたジャケットを着込んでいる。その「いかにも」イタリアンな感じが、横文字好きなしゃべりと合わせて、年上の上司らから「ルー」という愛称を得ている所以である。一方の木下は、年中同じ上着姿に見える。
「木下さん、また教えてほしいことがあって立ち寄りました。今日、国産のハイ・グレードな資材を国外に輸出している得意先で、輸出免税の話になったんですよ。消費税のかからない取引があるというのは知っていたんですが、そのあたりがどうもあやふやでして・・・」
「なるほど。私も会計事務所に入ったばかりの頃は、この消費税区分に苦しめられました。早速ですが、消費税のかからない取引には、非課税と不課税、そして八木田さんが今話した免税、の3つがあります」
「非課税と不課税?私にはどれも同じに聞こえますが・・・」とルーが首を捻った。
「そもそも消費税が課せられる取引ってどのようなものかわかりますか?」
「法人が商売を行う上で発生するトレード全般、かな?改めてきかれるとおぼつかないですが・・・」
「ざっくり言えばそうですが、より正確に言うと、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等と外国貨物の輸入、ということになります」と、木下は淀みなく頭の中の辞書を読み上げた。
「この事業者というのは、法人ということでいいですか?」
「いや、事業者には個人事業者も含まれます。あくまで商売で行っているかどうか、がポイントになります。たとえば八木田さんが車を買い換えるために中古車を手放す、というのとは違います」
「なるほど。実は私は趣味で個人輸入をしますが、確か事業者でなくても消費税を払っていますよ」
「さすが八木田さん、本物の舶来好きですね!そうなんです。外国貨物の輸入については、一般消費者も納税義務を負いますので、注意が必要です」
「じゃあ木下さん。消費税のかからないトレードというのは、これらに該当しないもの、ということですか」
「そうです。それを『不課税取引』と言います。そもそも課税の対象ではない、という意味になります。寄付とか贈与が該当します。我々サラリーマンの給料も不課税です。対価を得ない資産の譲渡など、対価の支払いがない取引も不課税です。配当金や見舞金、無償による試供品の提供、保険金も不課税取引ですね」
「不課税取引はよく分かりました。では、非課税や免税はどう違うんでしょうか?」
「不課税はそもそも課税の対象外というものでしたが、非課税・免税取引は本来、課税取引の範疇のものなのに税金がかからない、というものです」
「何かスペシャルな理由があるのですね?」
「はい。先に非課税取引を説明しましょうか。国内の取引は原則として課税の対象になりますが、課税対象としてなじまない取引や、社会政策的な配慮から課税の対象としない取引は非課税として扱われます」
「具体的にはどんなものが非課税になるのですか?」
「土地や有価証券、商品券の譲渡が非課税取引の代表例です。社会保険料なども非課税取引ですね」
「そういえば、土地には消費税がかからないと聞いたことがありましたな。じゃあ、残るは免税取引ですが・・・免税というと免税店とか、輸出入に絡んだ言葉という印象があります」
「はい。商品の輸出や外国にある事業者に対するサービスの提供などが、免税取引に該当します。免税取引は仕入税額控除ができるという点が大きく異なります」
「仕入税額控除?なんでしょう、その難しいワードは・・・」
「難しくありませんよ。今日、八木田さんが行ってきた資材の輸出業者のケースで説明しましょうか」
「そのお客さまは、国産のプレミアムな檜を国内の林業家から買って、アメリカの業者に輸出しています」
「その会社が消費税込108万円の檜を国内で仕入れて、アメリカの業者に120万円で免税にて販売すると、どうなるでしょう?」
「消費税を除く20万円が利益になりますが・・・消費税の8万円は払いっぱなしになりますね」
「そうですよね。消費税計算の仕組みは、売上の際に預かった仮受消費税から、仕入の際に支払った仮払消費税を控除した差額分を納付します。免税売上を『0%課税』とイメージして、0円の仮受から8万円の仮払を仕入税額控除できるという事になりますので、差額のマイナス8万円が還付消費税となるわけです」
「なるほど、何だか得をする感じですね。我が社も海外向けをもっと増やすストラテジーが必要ですな!」
「消費税だけを見ればお得に見えるかもしれませんが、為替リスクや様々なノウハウも必要ですからね。ただ、そうなると舶来好きな八木田さんが活躍する場面がますます増えそうですね」
「That’s great!そうだ、いつも教わっているお礼に、木下さんに英会話のティーチャーをしましょうか」
上機嫌となった八木田に、木下は「僕は英語もフランス語も得意なので結構です」とは言えず、「免税はtax exemption、非課税はnon-taxable、不課税はuntaxableと言うらしいですよ」と返した。
「免税はduty freeかと思っていましたが」と、八木田は木下の語学力より英語表現に食いついた。
「免税店はduty freeともtax freeとも言われますが、それぞれ免除される税金が違います・・・」
ここから先、会計と英語が入り混じったふたりの立ち話はさらに30分も続いたのであった。

■課税取引

国内において事業者が事業として対価を得て行われる取引は、原則消費税の対象となります。この取引とは、具体的には資産の譲渡等となりますが、資産の貸付や役務の提供も含まれます。対価を得ずに無償で行われた資産の譲渡には原則として消費税がかかりません。ただし、個人事業者が販売目的で保有する商品等を家庭で個人的に消費した自家消費や、法人が有する資産をその役員に贈与するような場合には、通常販売する価額にて資産の譲渡を行ったとみなされる点に注意が必要です。また、外国貨物の輸入も消費税の対象となります。

■不課税・非課税・免税

国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等と輸入取引に当たらない取引は、消費税がかからず、一般的に「不課税取引」と呼ばれます。これに対して、課税取引の範疇であっても課税になじまないことや社会政策的配慮から課税しない取引を「非課税取引」といい、土地の譲渡や社会保健医療費などの取引が該当します。また、輸出取引も課税資産の譲渡等に当たりますが、一定の要件が満たされる場合、その売上について消費税が免除される取引を「免税取引」と言います。非課税取引と異なり、輸出のために行った仕入は原則として消費税額を控除することができるため、八木田の顧客のように輸出がメインの法人では、消費税が還付されるケースがあります。

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