他社事例に学ぶ海外取引先管理
2019.03.15
本セミナーは、TDBカレッジにて全6回に分けてお届けしたコラム「海外ビジネスを失敗させないためのヒント」をより分かりやすくお伝えすることを目的として開催しました。
これまで海外取引先管理の仕組み導入を支援してきた海外サービスの担当者が、近時の海外取引先管理で求められるもの、導入に際しての課題・効果を 導入事例を交えてお話ししました。
当日の内容の一部を本コラムで紹介します。
■担当講師
営業企画部 マーケティング課 岡田 明
海外企業情報の概観
企業情報(財務情報)が取れる・取れないの観点で、地域別の特徴をご紹介しました。情報が取得しやすい地域はヨーロッパですが、中には情報開示に消極的なスイスなど未上場企業の情報が取得できない国もあります。
日本企業の取引先として多いアジアは、比較的情報が取りやすい傾向にあり、例えば中国では企業調査での決算書入手率は8割を超えます。ただ、途上国地域では情報の取得が難しい現状もあります。
また、意外と思われるのがアメリカです。アメリカは未上場企業の売上や利益などの数字情報は取得が困難です。
そのためアメリカの与信管理担当者はどのように仕事をしているのか、アメリカでは日本と入手できる情報が異なることも踏まえて紹介しました。
海外取引先管理の課題
このコンプライアンス対策は法令順守全般を指しますので、業務範囲が広く、かつ海外の法律が知らない内に適用されていて、対応が後手に回るというケースも出てきていますので注意が必要です。
日系企業でもFCPA(米国の海外腐敗行為防止法)違反で多額の課徴金を受けた例があってから、コンプライアンス対策に取り組もうとする機運が高まってきています。
コンプライアンス対策の中で、相手先を確認することを「KYC:Know Your Customer(顧客確認)」と言い、その業務プロセスのイメージは図1.のようになります。
■ポイント
・ 自社に必要なコンプライアンス対策の把握
・ 顧客確認の一連の流れを仕組化・体制構築
・ 信頼できるデータベースを参照した顧客確認の実践
・ スポットではなく、継続的にチェック
具体的な取り組みとして、このようなプロセスで業務を実施することが求められてきています。
海外取引先管理に必要な情報
帝国データバンクで支援させていただく場合、海外取引先管理には財務データを元にした定量的なスコアを用いることが多いです。
また、海外で実施している取引先管理を日本に持ってくる(日本から海外企業の取引先管理を実施する)ことは情報の非対称性や海外現地法人などとの棲み分けも問題となり、なかなか仕組み作りが進まないということがよくあります。まずは、日本の本社で一定額以上の取引高がある先は管理するなど業務の範囲を明確に決めましょう。
事例紹介 海外取引先管理の仕組みを構築した商社の例
このような取引先のマスタデータべ―スを構築すると、外部から信用情報を含めた情報を連携させることが可能になります。これをデータベースのリッチ化と呼んでいます。
取引先データベースをリッチ化することで、取引先の信用度の全体感が見えてきます。その後は、重点的に管理が必要な取引先に対して、海外企業信用調査を利用して深堀調査を実施します。
このようにして全体管理と重点管理を実現できれば、あとは継続的に管理する=モニタリングです。この事例では、取引先に倒産の予兆などネガティブなニュースや信用度の悪化などがあれば自動的にアラートを受け取る設定をして、変化を見逃さない仕組みを構築しました。
また、管理する仕組みとしてはクラウドツールを用いて、取引先の債権残高と信用度を併せてダッシュボードで見て管理、レポートする機能も使用することで、業務の効率化を図りました。
事例で進めた課題解決のステップ、実施内容、用いたソリューションは図2.のイメージです。
デモンストレーション
データベース上で企業情報がどこまで見られて、収録項目や財務スコアがどのように表示されるかを実際の画面で確認いただきました。
まとめ
今回ご紹介したグローバル企業情報データベース「orbis」