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2019.08.06

~SUPPORTERS スポーツを支える企業~

プロチームとしての変化と躍進 サンロッカーズ渋谷(東京都渋谷区)

2015年にバスケットボールのプロリーグ「Bリーグ」が発足したことで、株式会社日立製作所の実業団であった日立サンロッカーズ東京を改め、サンロッカーズ渋谷が誕生した。実業団からプロチームに転向したということは、法人として独立するということだけでなく、運営面や存在意義も大きく変わる。プロチームとして4年目を迎えるサンロッカーズ渋谷を取材した。 (東京支社 情報部)
現在のプロバスケットボールリーグ「Bリーグ」の歴史は、少し複雑な経緯をたどって誕生している。日本にはJBLと、bjリーグ、2つのリーグが存在していた。最大規模の実業団を主体とするリーグと、新興のプロリーグ、2つが各々の運営方針を主張し、統合されずにいた。しかし、世界バスケットボール協会(FIBA)より「トップリーグは1国1リーグが望ましい。日本のバスケットボールリーグは統率が取られていない」として、2014年に日本はオリンピックなど国際試合に出場できないという事態が生じていた。こうした折、サッカーのJリーグ初代チェアマンを務めた川淵氏が調整役となり、2015年に統合したのがBリーグだ。ただし、統合は急な出来事で、両リーグに所属する各チームは、対応に追われる慌ただしいスタートを切った。サンロッカーズ渋谷も、そんなチームの一つ。株式会社日立製作所という大企業の実業団から、プロチームに転向するうえで、数々の苦難を乗り越えている。

新たな拠点を探せ!!

まず、プロチームとして活動するためには、1つの法人として組織体制を整備しなければならない。法人登記して、チーム運営に必要な人員を取り揃えて組織を作り上げた。また、Bリーグの登録チームになるためには、収容可能人員5000名以上のアリーナをホーム登録しなければならないという規定があり、ここでも対応に追われた。これまでは柏市や東京都にある体育館で試合を行っていたが、Bリーグ B1所属が必要な要件を満たす体育館の確保は難しかった。東京都にある東京体育館や代々木体育館ですら、5000人の収容という条件はクリアできたものの、もう一つの条件であったホームアリーナで8割のホームゲームを開催するという基準をクリアが出来なかったため、新たな拠点を探さなければならなかった。ひと言に“新たな拠点”と言っても、その選別はなかなか難しい。立地条件や使用料が重要になるほか、何よりその地を拠点とする意義が必要になってくる。そうしたなか、サンロッカーズが拠点として選択したのは、東京都渋谷区。渋谷区内に体育館を持つ青山学院大学をホームアリーナとして、活動をスタートさせた。新たな拠点探しに苦戦していた当時の担当者は、「渋谷区役所の方々にもご協力いただき、まさに産官学の力で活動ができるようになった。青山学院大学の学生方・関係者各位にも協力をいただいており、本当に感謝している」という。

渋谷との共存

東京都渋谷区は、日本の中でも特別な地域。ファッションやカルチャーの発信拠点として、これほど存在感のあるエリアはないだろう。渋谷区民や、渋谷区内に拠点を置く法人だけでなく、渋谷を利用する交通客を含めると、数十万人以上の人々が渋谷区と関わりを持っているといえる。ここに拠点を置くサンロッカーズ渋谷は、「渋谷ファースト」の思いを胸に運営してきた。これまでの約3年間で、数々の貢献活動をしている。たとえば、渋谷区内の小学校への訪問だ。近年は少子化や学校の運営体制により、満足な練習や指導を受けられない子どもたちが大勢いる。こうした子どもたちがプロのバスケットボール選手と一緒にプレーし、直接指導を受ける機会を作っている。このことで、夢や目標を持ち、一つの事に真剣に取り組む子どもたちが増えているのは喜ばしいことだ。また、渋谷警察署の特殊詐欺根絶キャンペーンにも協力した。チームのマスコットキャラクターである「サンディー」が同キャンペーンに参加し、特殊詐欺に騙されないよう注意喚起するなど、バスケットボールという枠にとどまらない活動も行った。

こうした地元貢献の活動が認められ、支援者も年々増えている。渋谷区内の商店街や、渋谷で事業を営んでいる経営者らからも「サンロッカーズ渋谷を応援したい!」との声が集まり、様々なコラボレーション企画が実現している。メキシコ料理のタコベル道玄坂店では、パブリックビューイングで試合観戦できるイベントを開催。飲食店の集客にもつながるとして、喜ばれている。

また、渋谷駅の発展とともに成長してきた東急百貨店とのコラボレーション企画も開催。東急百貨店 渋谷・本店、渋谷駅・東横店、渋谷ヒカリエといわゆるデパ地下にて、お弁当の特設販売場を設けた。身体をつくるお肉たっぷりのボリューム満点弁当や、お酒好きの選手が薦めるビールに合う丼ぶりが集客の目玉となった。このほか人気だったのは、日々の体型維持に余念がないサンロッカーズガール(チアガール)がお薦めするヘルシー丼。カロリー控えめで栄養バランスが整ったこの丼ぶりは、女性客への販売が好調だったという。

サンロッカーズ渋谷を支える企業

こうしたサンロッカーズ渋谷を支える企業の一つが、アパレル企業の(株)せーの。同社の運営するVANQUISHは、渋谷発のギャル男ファッションから始まったブランドで、「渋谷から世界に文化を発信する」「世界で勝負できるブランドを創造する」という強い思いを胸に事業を続けている。この思いを形にする手段は、アパレル事業に捉われず、飲食事業も展開。そして、この飲食事業において、サンロッカーズ渋谷とのコラボレーション企画を手がけている。同社は、日本から世界に発信する飲食事業として、「カレー」に着目。世界的には、インドカレーやタイカレーの知名度は高いが、日本のカレーはまだまだ知られていない。このポテンシャルを信じて、「渋谷ハチカレー」の運営を手がけている。このカレー事業にて、サンロッカーズ渋谷のマスコットキャラクター「サンディー」をかたどって盛り付けしたカレーを販売したほか、カレーのトッピングと組み合わせて選手名を覚えてもらうための企画も行った。サンロッカーズ渋谷の知名度向上に一役買っているというわけだ。「渋谷をより良い街にしたいという思いが同じだったからこそ、シナジー効果の生まれるコラボレーション企画になった」(せーの広報担当者)

チームの魅力

こうした活動の根底には、より多くの方にBリーグを知ってもらい、サンロッカーズ渋谷を応援してもらいたいという思いがある。

日々、選手たちは試合に勝つために、過酷な練習を乗り越え、コート上で最大限のパフォーマンスをしている。そのため、アリーナで見る試合は見応えも満点だ。例えば、2016年までNBAのレイカーズでプレーしていたロバート・サクレ選手のポストプレーは圧巻だ! 迫力満点のスラムダンクを魅せたかと思えば、華麗で軽やかなフックシュートも使いこなす。まさに剛柔合わせ持つプレイスタイルは、見ていて飽きることが無い。

また、選手のバックヤードを知ると、よりプレーに重みを感じられる。ガードのポジションを務める山内盛久選手(写真)は、身長175センチ。バスケットボール選手としては決して恵まれた体格ではなく、練習生からこのバスケ界、プロにのし上がったが、bjリーグ時代の琉球ゴールデンキングスに所属し、3度の優勝に貢献した。しかし、Bリーグ2シーズン目には契約満了となり退団。現在はサンロッカーズ渋谷に移籍している。家族を沖縄に残してでも、バスケットボールをプロで続けるという選択をした。3P(スリーポイントシュート)など飛び道具を駆使するガードポジションとしての働きだけでなく、果敢なドライブでポスト内に侵入しスコアを決めるプレースタイルには、なぜか目頭が熱くなる。現在は膝の故障により前線を離れているが、「少しでも早く復帰して本来の姿を見せてほしい」というファンの声に応える姿を見てみたい。

野球やサッカーと同じように、プロスポーツ選手として生きていく人間の様は、感動を与え、人を励ます力がある。サンロッカーズ渋谷は、初代Bリーグ覇者である栃木ブレックスや、チャンピオンシップ常連の千葉ジェッツがいる激戦区の東地区という事もあり、残念ながら勝率は思うように伸ばせていない。しかし、決して順風満帆ではない自分の人生に照らし合わせ、思い重ねながらサンロッカーズ渋谷を応援するファンが大勢いる。

バスケットボールのこれから

サンロッカーズ渋谷には、法人スポンサーが約60社ある。日立製作所グループ約15社だけでなく、その他約45社がスポンサーとして、活動の意義や必要性を感じているという事は、少しずつ渋谷の地に根差した活動ができているという証ではなかろうか。地元での発信力が高まれば、活動の幅はさらに広がっていくだろう。

振り返れば、リーグ統合からわずか3年の間に、Bリーグの各チームで、それぞれのドラマが生まれている。いずれも多くの人や企業に支えられながら、プロのスポーツチームとして、誰かを励ますようなプレーや活動で、その存在感を示している。これからは、野球やサッカーと同じように、日本でもメジャースポーツとして、バスケットボールが社交場で飛び交う話題になっていってほしい。
サンロッカーズ渋谷
■運営会社 株式会社日立サンロッカーズ
■所在地 東京都千代田区丸の内1-6-6
■ホームタウン  東京都渋谷区
■ホームアリーナ 青山学院記念館
■資本金 6000万円
■設立 2016年4月
■代表 岡 博章 氏
https://www.hitachi-sunrockers.co.jp/

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