運送業界にドライバー不足の壁 労務環境改善急務に
2019.09.13
物流需要の拡大を受け、特積み輸送量は好調
企業間物流およびEC市場の拡大で「追い風」が吹く運送業界。「トラック輸送情報」(国土交通省調査)によると、特別積合せ貨物の輸送量は2015年度から2017年度にかけて3年連続で増加。直近の2018年度は約6583万トン と、相次ぐ自然災害の影響など により前年比減少となったが、依然として高い水準が続く。
運賃適正化急ぐ大手各社 今後は荷動き鈍化も、小口輸送中心に需要は堅調か
こうした取り組みの成果は、2018年度の業績にも表れた。セイノーホールディングス(株)は、生産関連貨物の輸送が堅調に推移したほか、荷主に対する運賃適正化交渉が奏功し、2019年3月期も増収増益を確保した。
今後は、中国経済の減速や天候不順、消費税率引き上げともなう荷動きの鈍化 が懸念材料となるほか、外注費用の増加も課題として挙げられる。
しかしながら、国内の物流需要は宅配など小口輸送を中心に堅調な推移が見込まれ、トラック運賃は依然として高水準を維持 。「追い風」の恩恵が続くかは、上昇した運賃水準を維持できるかにかかっている。
運送業界に立ちはだかる「ドライバー不足」の壁 正社員不足は6割超に
帝国データバンクがまとめた「TDB 景気動向調査(全国)」によると、道路貨物運送業で正社員の不足を感じる企業は、2019年7月時点で67.7% にのぼる。労働集約型の同業界において、人手不足は死活問題である。
「持続可能な運送業界」実現なるか
また、国土交通省は長時間労働の是正など「ホワイト経営」への取り組み状況を評価する制度の創設について検討を進めている。法令遵守や労働時間などについて評価項目を設定し、一つ星~三つ星の認証段階を設定。認証を新規就業者へのアピールポイントとして活用してもらうことで、人員拡充につなげる狙い だ。
運送業界のドライバー不足対策は、ソフト面に留まらずハード面にも及ぶ。2022年の商業化を目標に、後続車無人システムによるトラック隊列走行の実証実験が進められているほか、今年1月には大型トラック2台分の輸送力を持つ、車両長25mのダブル連結トラックが本格導入 された。将来的には輸送量あたりのドライバー数を従来の2分の1以下に抑えることが可能となる。
運送業界の持続性をも揺るがしかねないドライバー不足。ソフトとハード、両面で進む改革の行方に目が離せない。
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