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2020.02.27

∞∞ Data Designers ∞∞


全銀EDIシステム(Zengin Electronic Data Interchange system、以下ZEDI)は2018年12月25日に稼働を開始しました。
ZEDIとは、支払企業から受取企業に総合振込を行う際に、支払通知番号や請求書番号など様々なEDI情報(受発注に関して支払企業から受取企業に伝達する電子的なメッセージのこと)の添付を可能とする金融EDIシステムです。入金消込み業務の効率化など、企業における資金決済業務の合理化が可能となります。

クラウドサービス推進機構 理事長 松島氏は金融EDIの名付け親の一人としてその普及の役割を中心的に担い、企業の生産性を向上させるべく活動されています。金融EDIは資金決済スピードを速め、日本の中小企業を活性化させる推進力になるものであり、ZEDIは金融EDIを実現するための重要なプラットフォームであると、松島氏は考えています。またZEDIでは支払企業と受取企業の特定に法人番号が推奨されています。法人番号はユニークコードとして認知されています。

今回松島氏には金融EDIとZEDI普及の現状と今後の展望について、また法人番号の関わりも含めてお話を伺いました。
全銀EDIシステム(ZEDI)とは
-金融EDIの稼働背景やきっかけをお聞かせください

金融EDIという言葉は2010年頃から使い始めました。
商取引というのは、受発注だけで完結するのではなく、資金決済まで行かないと完結しませんよね。納品してもその後の入金処理まで管理する必要があります。受発注のみに注目するのではなく、その先が重要であることから、金融EDIは始まりました。ITやRPAのように決済にも自動化を導入すれば、支払業務の効率化が図れます。その中で重要な役割を担うのがZEDIであることは言うまでもありません。

ITを推進する第4次産業革命では「つなぐ」がキーワードです。私たちにとっては、それは「企業間業務をつなぐ」ことを意味します。企業内で業務完結するのではなく企業間取引があって初めて価値が生まれるということです。
課題としては、まだデジタルでつながってないということです。第4次産業革命では「つなぐ」という部分により着目することが重要だと思っています。

受発注は企業間のやり取りですが、決済は銀行や物流等、バリューチェーン全体の商流や物流をつなぐものであり、その意味で最後の結線という役割になります。企業内のシステム化やデジタル化だけでは足りず、今は企業間のデジタル化が重要だと思います。そこを金融EDI、とりわけZEDIで解決することが出来ると私は考えます。

-具体的に金融EDIを推進するに至った事例はありますでしょうか?

きっかけは経産省からの受託事業で、愛知県に本社を置く製造業のA社と取り組んだ事例でした。A社の下に階層的につながるサプライチェーンの受発注の仕組みを作りたいというものでした。資金決済の流れを自動化しよう、その仕組みをデジタル化しようというのが一つの動機付けで始まりました。
金融EDIの活用効果
-現状、効果や課題についてはどのようにお考えですか?


従来より発注者が受注者に対して受発注の方法を提示するケースが多いですが、おそらく発注のうち半数程度はネットで行われているのではないでしょうか。一方で受注者側としては、発注がネットやFAXで混在になるのは効率的ではないので、集約してほしいというのが現状です。よってデジタル化するためには、100%を目指さないと結果として効率化にはなりません。発注者と受注者の双方がデジタルでやり取りすることが重要です。ではどうすればデジタル化が普及するのか、その部分が課題だと思います。

また従来大きな課題だったのは、発注書と受注金額の突合です。私は、従来の仕組みをZEDIに置き換えることで大幅に効率化できると思います。この突合作業を大幅に削減するという意味でZEDIはベストプラクティスだと考えています。

最近ではERPとの連携等はパッケージ側で対応可能です。これにより例えば支払処理をZEDIで実施し、決済に必要なEDI情報をもとに入金処理をするという仕組みができます。各企業が個別で対応するのではなく、共通で利用できる仕組みを作ることが私は重要だと思います。

多くの企業では商品やサービスの競争力を高めるための自社開発は実施していますが、決済の自動化についてはこれからという企業が多いように思います。独自の振込処理業務はあまり競争力に関係するものではなく、必ずしも他社に対する優位性を示すことにはならないからです。ZEDIは特別なシステムなしに利用できるので、企業の理解が深まるとともに普及が進むと思います。

この取り組みを推進すべく、次世代企業間データ連携調査事業の実証検証に参加したITベンダーを中心に、中小企業共通EDIの普及推進を目的に2018年4月に結成された「つなぐITコンソーシアム」において、ベンダー内で共同研究と意思統一を図っています。
必要な仕様についてはベンダーでタッグを組んで金融庁や全銀協と情報交換を実施しています。


-ZEDIを活用している企業はありますでしょうか?

都内に本店を置く大手製造業のB社は自社グループ内でシステムを構築しています。発注者側であるB社が共通EDIやZEDIを導入すること、つまり発注者側がシステムを使うことを決めてしまえば、受注者側でも対応が必須になるからです。そうなれば、サプライチェーン内の中小企業で共通EDIを活用できると思います。大手企業がZEDIを採用しているという流れが出来れば、さらに普及すると思っています。

入出金時点でのみの業務に注目するではなく、「受発注」「請求」を含めた「支払い」から「入金」のプロセスを一体で見ることが重要です。この大手企業には受注者との業務連携の中に銀行やクラウドサービスが関係するという構造がありました。昨今、大手企業では請求や支払いの部分でクラウドサービスを使うことが増えてきていますが、中小企業もクラウドサービスに対応するようになればこのような事例は増えてくると思います。



-ZEDIは多くの企業で普及しているのでしょうか?

正直、まだまだというところです。問題は自社だけがZEDIを導入していれば運用できるというものではないというのがあります。受発注両社の対応が必要だからです。このあたりが難しいところではあります。

まずは、2025年の姿をビジョンとして全国で共有して進めていく必要があります。一方で今はDX(デジタルトランスフォーメーション)のビジョン、とりわけ持続可能な開発目標という名目で1社だけで取り組みを表明するというのは、それこそ昨今話題のSDGs的にはいいかもしれませんが現実には機能しません。

全体的に取り組みやすい仕組み作りができればいいと私は思います。例えば受注者側が支払期間を30日にしている場合、何らかの関係で発注者側にもベネフィットが発生する等の社会的な意義に直結する動きが出てくれば理想的だと思います。
「早くお金を支払う体制があるのはいい会社だ」や「そういう意思決定したのはいい社長だ」等の社会的認知が進めばいいと思います。いずれにしても雰囲気作りが重要です。
-法人番号とZEDIのつながりはどのようなものとお考えでしょうか?

マイナンバー(個人番号)は、セキュリティが厳しすぎて普及の阻害になっています。一方で法人番号は公開されており、ZEDIでも法人番号の活用を前提としています。取引先データに法人番号を付与して管理する企業も多いので、今後インフラ化できると思います。

顧客管理システムで企業情報を管理する場合、企業IDや法人番号の活用が有効だと思います。連結会社やグループ会社があれば、さらに事業所ごとにアカウントナンバーを使うケースもありますよね。

法人番号で管理された情報をより深堀りして管理するには、TDB企業情報との紐づけなども必要になると思います。法人番号やTDB企業コードと社内の企業情報が名寄せされた環境を実現していくことが企業に求められてくるのではないでしょうか。
-今後の展望についてお聞かせいただけますでしょうか?

ZEDIを普及するためには、大企業による積極的な利活用が重要だと私は思います。
なぜならグループ企業内の決済の仕組みをZEDIで行うという意思決定は、トップダウンで比較的容易に出来ると思うからです。多くのグループはグループ内で与信管理会社や金融サービス会社を持っています。そこにZEDIが入ればグループ内すべてで対応できるようになります。

一方で連結子会社の経理はこれからIFRSの件も含めて一元管理、資金の見える化が必要になります。そこでZEDIを利用することにより、入出金明細、資金移動の透明性が高まります。それと同時に海外取引においても透明性が高まることになります。マネー・ローンダリング対策の観点でもメリットが出れば、そこもまた普及するポイントになると思います。

ZEDIは業務効率化の観点での活用がまだメインですが、世界的には透明性、公平性、フェアトレード等が求められていますので、これらの観点でも魅力を打ち出していきたいです。また大手企業の多くではSDGsを掲げていることもあり、まずは大手企業で活用してもらうことで産業と技術革新の基盤づくりの観点で支払いの迅速化を実現してほしいです。
-帝国データバンクは企業ベースで660万件、拠点ベースで900万件のデータを保有しています。自由にそのデータを使えるとすると何をしますか?

情報は集めて利用するものだと思います。データは2次利用、3次利用することで新たな価値が出るものです。データとデータを掛け合わせて新しい価値を作ることが求められているので、集めたデータをただ単体で見るということでは価値は生まれづらいと思います。

重視すべきはデータの保管、更新です。どこに何の情報があるかを確認し、データ更新された場合には参照やトレースの機能が必要になると思います。各種データが共通の場所で保管され、それらがどのように更新、加工されたかを分析することで、その組み合わせの正解、不正解がわかります。私が、TDBのデータを自由に使えるとしたら、このような加工、分析を行い、個人的に情報銀行のような環境を構築してみたいと思います。
-TDBカレッジは「ビジネスパーソンのデータリテラシーを高める」をコンセプトに運営しています。ビジネスパーソンに向けてアドバイスをお願いします。

よく講演で話している内容ではありますが、人間は、デジタル化されるとなぜか、安心してしまうイメージがあります。人間は、すぐデータを信じる傾向があります。
そこで「誰がどのようにして何のデータを持ってきたのかを知る」ことが重要だと私は思います。

例えば「万歩計とiPhoneでは、同じ距離でも歩数が違うのはなぜ?」という疑問を投げかけられたことがあります。その答えとしては、それぞれ加速度センサーの歩幅が違うので計測が異なるということを挙げています。また消費カロリーも何十キロカロリーと表示されますが、これもモデル式で算出されるもので、機器によって算出に多くの誤差が生じます。

これはモデル式が違うから当たり前のことで、違うということに慣れてほしいです。どちらが正しいということではありません。私たちが扱っている数字はモデル式の計算結果であることが多いです。最初に測定したものはどのデータで、それをわかりやすくしたものがこの数字で、モデル式にしたものはこの実数でと理解することが大事です。

ビジネスパーソンはプロとして、数字を扱う際にこの認識を持つことが重要です。加工する際に時々「このデータはそもそも何なのか」「いつ誰が何を測ったものなのか」を常に把握することが重要です。
-松島さんにとって「データ」とはどのような存在でしょうか?

「データ」とは、私たちが生活したりモノを考えたり、人と議論したり価値ある仕事をするために、アナログなものをわかりやすい言語として数値化したものです。

自然現象はそもそも数字では表せません。風速何メートルとか温度何度とかというのは人間が測って出てきたものです。数字の世界は人間の世界であって、自然の世界ではありません。要するに必ずしも客観的なものではないということです。同じものを見ていても、測り方や見る人によって数値が異なります。

数字になった途端、それは誰かが数値化したものであり厳密には誤差も生じるからです。
これらのことを意識しながらデータを扱うことが重要だと私は思います。


(聞き手:株式会社帝国データバンク 営業推進部 三本木亮太)

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