プレーヤー数の減少で先行き暗い“ゴルフ場” なのにナゼ「倒産は激減」したのか
2020.03.13
“しぶこ”に“ZOZO”、2019年は明るい話題が多かったゴルフ業界
昨年はゴルフ業界に強いフォローの風が吹いた。
8月のAIG全英女子オープンゴルフでは渋野日向子選手が優勝。その後は渋野選手を目当てに試合会場へ足を運ぶ人も目立ち、彼女の活躍は“ゴルフ”への注目度を高めた。加えて、10月には日本初のPGA TOURトーナメント「ZOZO CHAMPIONSHIP」が開催。海外のスタープレーヤーたちが出場したこともあり、大会は大いに盛り上がった。特に、タイガー・ウッズVS松山英樹となった熾烈な優勝争いにしびれたファンも多いだろう。
なにかと明るい話題が多かった2019年のプロゴルフ業界。一方で、ゴルフ業界のビジネス面に目を向けてみると、2019年はある一つの特徴が表れた。
倒産件数は減少基調
まず初めに、ゴルフ場の倒産トレンドについて確認したい。
2000年代中盤までは、バブル期前後に設立された企業が、預託金の償還期限を迎えても資金の工面ができず、多額の負債を残したまま倒産に至るケースが多々発生。1社で複数のゴルフ場を経営していた企業や、預託金を不動産取得・投資に費やしていた企業が多く、大型倒産も頻発した。
しかし2005年(倒産件数65件)以降は、預託金償還問題もある程度の落ち着きをみせ、54件(2006年)→48件(2007年)→28件(2008年)と減少傾向で推移。その後もゆるやかな減少基調が続き、2018年の倒産は20件発生していた。そうしたなか、2019年の倒産はわずか“7件”と激減。たしかに減少トレンドであったことは事実だろうが、1桁まで激減したのは驚きだ。
倒産の激減理由を考えると、“ゴルフ人口の急増”などの好材料があったのではと推察してしまうが、最近はそのような話も聞いたことが無い。だが念のため“プレーヤー人口と市場規模”のデータも見ておこう。
お金と時間が大きなネック
ゴルフはお金と時間が必要なスポーツ。最近では土日でもプレーフィが1万円を切るゴルフ場もあり、以前に比べると金銭面での敷居は低くなった。ただそれでもクラブ一式を揃える初期費用やゴルフ場への移動費、ボールなどの消耗品にはお金がかかる。またハーフプレイやスループレイでもしない限り、移動とプレーで丸一日潰れるため、独身ならともかく、小さな子供がいる所帯では頻繁にプレーするのは難しいのが実情だろう。そのため若年層が徐々に離れていき、ゴルフ業界は比較的お金と時間に余裕がある60・70代におんぶにだっこの状態となっている。
“倒産”ではない選択肢の台頭
ゴルフ用品のEC販売やゴルフ場のインターネット予約サービスを手がける(株)ゴルフダイジェスト・オンラインの伊藤修武取締役は、「事業整理の方法が、負債を残さない自主的な清算や倒産する手前で大手グループの傘下に入る、もしくはゴルフ場を引き取ってもらうといったケースに変化したからだろう」と言う。
つまり、今までの主流であった「法的整理としての清算や法的にスポンサー企業の支援を得て再生するケース」いわゆる“倒産”ではなく、倒産としての数値には反映されない上述の整理手法が増加しているということだ。
最近では、“高額なゴルフ会員権を販売したが経営が上手くいかず、償還できないほどの高額な預託金が残り身動きとれない”といった、今後の選択肢に“倒産”しか残されていない企業は少なくなった。倒産する手前で清算・譲渡するケースが増えれば、倒産件数という“見かけ上の統計データ”が激減していても不思議ではない。
総じて、「倒産件数に加えて、これらのケースを含めると数としては今でも一定数あると感じる」(伊藤取締役)の言葉通り、ゴルフ場経営企業として“事業を止めた”という意味合いでは、今までとあまり変わらない件数水準にあるということだろう。
裾野を広げるために
また、渋野選手が全英オープンで着ていたウェアが即日で完売したように、ファッションからでも新たなプレーヤー層を取り込むチャンスはある。超えなければいけない壁は相当高いが、業界の取り組みが軌道に乗りゴルフの裾野が広がれば、この先どう転ぶかはまだ分からない。
過去のYahoo!ニュースでのリリース記事はこちらからご確認いただけます。
https://news.yahoo.co.jp/media/teikokudb