従業員の新型コロナウイルス感染、上場企業200社超に拡大
2020.04.22
感染拡大防止に業界特有の難しさ露呈も
建設・製造では2倍超に拡大
複数拠点で感染、死亡するケースも発生
帝国データバンクの調べでは、グループ会社や関連会社を含め新型コロナウイルスに感染した従業員が判明した上場企業は、4月3日以降の10日間で約100社が新たに公表。13日までに累計210社に上ったほか、感染により従業員が死亡したケースも発生した。国内で感染者が相次いだ2月以降、従業員を多く抱える国内上場企業にも影響が拡大している。
上場企業の従業員が新型コロナウイルスに感染したケースは、2月に初めて発生して以降増加を続け、3月は90社超が公表。4月は従業員の感染を公表した企業が10社超に上った日が計4日間発生した。各社とも在宅勤務の導入やマスクの着用、アルコール消毒の徹底など、従業員の感染防止策を導入している。ただ、特に納期の厳しい建設や製造などの業種では感染者が大幅に増加、複数拠点で従業員が感染したケースも相次いだ。対面接客せざるを得ない小売やサービスでも従業員の感染ケースが増加しており、感染防止にも業界特有の難しさが浮かび上がってきた。
感染リスク高い小売・サービスで増加続く 急増の建設では業界全体が停止する可能性も
次いで多かったのは「サービス」(38社)で、「運輸・通信」「卸売」(19社)、「小売」(18社)が続く。B to C業種となるサービスと小売で全体の2割超を占めている。
不特定多数の消費者との接触などで感染リスクの高い小売では、ウエルシア薬局が千葉県内の店舗に勤務する従業員の感染を公表。同社によれば、当該従業員はマスクを着用し勤務していた。ドラッグストアやスーパーなどの小売店は、緊急事態宣言における休業要請の対象ではなく、社会インフラとして営業を続けている。
新型コロナウイルスに従業員が感染した場合、行動履歴の確認や濃厚接触者の特定のほか、各地域の保健所との連携、事業所の一時閉鎖・消毒作業の実施、さらには営業活動の停止にまで至るケースも多い。
従業員の感染公表が相次いだ建設では、業界全体が数カ月にわたり停止する可能性が浮上している。建設は15社で従業員の感染が発覚し、10日間で2.5倍に急増。こうしたなか、作業員の感染が判明した清水建設は工事中止や現場の閉鎖を表明。また、西松建設では緊急事態宣言の発令による工事中止などを表明している。大手ゼネコンのこうした動きは、ジョイントベンチャーなどを組成する他ゼネコン各社にも影響する可能性があり、下請企業などに大きな影響を及ぼす恐れがある。
「従業員の感染」万が一の発生に備え、 適切な情報開示姿勢も求められる
MS&ADインターリスク総研が4月8日に公表した調査では、有効回答137社のうち、感染の疑いがある「体調不良者・濃厚接触者の出社制限」を実施していると回答した企業の割合は73.0%と高水準だった。しかし、「社内で感染者が発生した場合を想定した対応フローの整理」の実施企業は24.1%。「社内で感染者が発生した場合の広報方針の整理」は10.9%にとどまるなど、自社で感染者が発生した際の対応について具体的な策定ができていない実態も浮かび上がっている。
新型コロナウイルスの感染拡大に収束が見通せず、影響は長期化する兆しを見せている。感染による自社、他社への影響を最小限に抑えるためにも、各企業で感染症リスクに対する行動指針の見直し、適切な情報開示が急務となっている。
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