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  • 【ウェビナーレポート】営業成果に差が出る法人EBMのススメ

2020.12.08

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに開始した働き方改革への取り組みは、「オンライン会議の導入」(39.0%)がトップとなった。次いで、「在宅勤務の導入」(33.9%)が続き(新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査:2020年9月)、リモートワークが急速に進んでいます。このような中、営業がお客さまに対面で会えないという代わりにマーケティング部門でメールマガジンやウェビナーにより顧客接点を増やす取り組みをする企業も多いでしょう。しかし、インサイドセールスが電話をしてもお客さまが在宅勤務のためにつながらない、メールが多く飽きられてしまうといった新たな課題も発生しています。セールスを受ける側も無駄な商談や打合せをしなくなっており、今まで以上に会う必然性が求められる時代になっています。
本ウェビナーでは、会う必然性を作り出す、顧客の変化を捉えてタイミング良くアプローチする手法「法人EBM」について紹介しました。

■担当講師
営業企画部 東日本営業企画課 課長 北野 信高

BtoB企業の営業戦略における悩み

図1 TAM・SAM・SOM
「法人EBM」とは何かの前に、営業戦略立案の基本的なプロセスから説明します。
営業戦略を立案するうえで、SWOT分析や3C分析を用いて“市場を把握”し、STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)を明確にして“市場のどこを攻めるのか”を明確にし、4P(Product:製品、Price:価格、Place:流通、Promotion:販売促進)の観点から具体的な施策を検討する流れが一般的です。この考え方は理解しているものの、BtoB企業のマーケティングや営業推進部門の方と意見交換をするなかで、どのように市場を定義するかというTAM・SAM・SOM(※)を明確にすることができないことが悩みであるという声を多く聞きます。TAMとは「獲得可能性のある市場全体」、SAMは「TAMの中でターゲティングした自社がサービス提供可能な市場」、SOMは「自社が獲得できる市場」を意味します(図1)。既に取引がある企業やアプローチ済みの企業は当然把握できますが、それ以外でターゲットとなりうる企業がどれくらいあるのか、シェアがどれくらいであるかがわからず、根拠のない営業戦略となってしまうケースがあると聞きます。
また、顧客分析を行っているが、自社が把握できている既存顧客とアプローチ済み企業のみを対象としており、ターゲット市場全体を見ることができていない点も営業戦略を検討するうえで問題といえます。
ターゲット市場を明確にする考え方のひとつに近年注目を浴びているABM(アカウント・ベースド・マーケティング)があります。営業部門が攻略したいと考える企業(アカウント)を特定し、そのターゲットの興味関心を誘うようなコンテンツをマーケティング部門が作成・配信し、反応があった顧客へアプローチをする手法です。このアカウントの特定に際しても正しくターゲット市場を把握しなければ、他社に攻略する余地を与えてしまうことになります。

ABMを実践するために必要なデータマネジメントの観点については、以下のコラムで詳しく紹介していますので、そちらをご覧ください。
マーケティング効率化のためのデータマネジメント 全3回

法人EBMとは

図2 法人イベントの種類
ターゲット市場とアカウントの特定をした後、タイミングや優先順位を決める際に「法人EBM」は有効です。

EBMとは、
イベント・ベースド・マーケティングの略で企業のライフステージを考え、企業情報からイベントや変化および予兆を把握し、成約期待値が高い企業に対してタイミング良くアプローチする手法
です。

具体的な内容は、わかりやすい個人のケースから説明します。
個人が住宅を購入するタイミングの一例として、「結婚して子供が生まれ、転校させる必要がないように小学校入学前に住宅を購入」というイメージをお持ちの方も多いかと思います。このケースを金融機関で住宅ローンを提案する側にたって考えると、子供が小学校入学前からアプローチをしておく必要があるでしょう。その際のキーファクターはアプローチするお客さまが結婚有無や子供の年齢といったイベントのタイミングです。

法人についてもライフステージがあり、企業の誕生から成長、成熟、成長鈍化、衰退という流れのなかで個人と同じように様々なイベントが発生しています。体制に関わるもの、営業計画、ヒト・モノ・カネなどの分類でみると、図2のようなものがあげられます。

企業の変化

図3 イベント有無による設備投資意欲の差
企業は生き物と言われるように、皆さまが想像している以上に変化は発生しています。例えば、商号は年間で2万社以上の変更があり、60分に換算すると2.3社が変わっていることになります。また、住所は60分で14.3社、代表者は6.2社の変更が発生しています。これ以外にも、資本金の増資・減資、従業員の増減、商流の変化、休廃業、倒産に関しても多く発生しているのが実態です。
例えば、代表者の変更がどのような影響があるかを考えてみると、経営方針が打ち出され、現場レベルでは業務プロセスの見直しや新しいことへのチャレンジをするケースも多いでしょう。アプローチするには絶好のタイミングですので、このような変化を捉えることは非常に重要です。

企業の変化を捉えてアプローチすると営業成果につながりやすいのかを裏付けるデータのひとつとして、イベントの有無で設備投資意欲に差があるのかをみていきます。図3は、弊社が実施した「2019年度の設備投資に関する企業の意識調査」をもとに分析したものですが、全体では62.3%の企業が設備投資をすると回答しています。商号変更があった場合は、ない場合に比べて5ポイント意欲が高いことがわかります。また、当然かもしれませんが、業績が伸びている場合は設備投資をしていることが数字にも表れています。

法人EBMの5つの効果

企業の変化を捉えてアプローチする法人EBMの定性的な効果は5つあります。

1. 顧客・営業双方にとって心地よい
2. 気付くことができる
3. 仮設力が高まる
4. 営業マネジメントが向上する
5. 優先順位が明確になる


~1.顧客・営業双方にとって心地よい~
営業ノルマを達成するために、「社長、最近調子はいかがですか」「情報交換しましょう」「近くに寄ったので」といった顧客ニーズを無視したアポイントは、成果に結びつきやすいとは言い難いものがあります。さらに、コロナ禍においては訪問もしづらくなっているため、目的のないアポイントは避けられてしまうでしょう。
法人EBMの考え方を導入すると、周年や代表者変更といったイベントを捉えてアプローチをすれば、お客さまからも「当社のことをよく知ってくれているね」「新しいことを考えていたので、良いタイミングで来てくれたね」と感じてもらいやすくなるでしょう。会う必然性が顧客側にあるため、商談率も高まりますので、双方に心地よいといえます。


~2.気付くことができる~
営業パーソンは自身の顧客を理解しているという自負はあると思いますが、顧客数が多くなれば、日々忙しい中で変化を把握することは容易ではありません。そのため、営業パーソンへ変化をプッシュ型で通知する仕組みが有効です。通知を受けた営業パーソンは「A社は30周年が近いから、何か考えているかヒアリングしてみよう」となります。仕組みで変化を通知することができれば、担当者の能力に関係なく、アプローチのきっかけを得ることができます。


仕組みを構築した事例にご興味がある方は、横浜銀行様の取り組みについてのインタビュー記事をご覧ください。
企業概要データの利活用で効果的なEBMを実践!~横浜銀行・浜銀総合研究所~


~3.仮設力が高まる~
商号の変更を例に考えますと、「何か大きな判断をしたのか」「CI(コーポレートアイデンティティ)の刷新によってブランド強化を図るのか」「親会社が代わり、方針転換があるか」などの仮設をたてることができます。所在地の変更では、都市圏への進出であれば、伸び盛りの企業で色々な投資をする可能性があるといったことが考えられます。

ウェビナーでは時間の都合、この3点について説明しました。

法人EBMの情報収集方法

図4 法人EBMの情報収集方法
最後に「変化の情報をどのように収集すればよいのか」についてですが、企業ウェブサイト、商業登記、不動産登記、法人番号公表サイト、gBizINFO、企業情報データベースなどがあげられます(図4)。それぞれ特徴がありますので、目的に応じて入手・活用してみてください。


働き方が急激に変化し、営業活動にも影響がおよぶなか、会う必然性を見出すために法人EBMは有効な手法です。ぜひ、企業情報の変化に着目して必然性や再現性の高いアプローチを実践していただければと思います。
法人EBMについては、近代セールス社から書籍を出版しています。ウェビナーで、お伝えしきれなかった法人営業で使えるノウハウをふんだんに盛り込んでいますので、ご興味があるかたは是非ご覧ください。

「すべては仮説とタイミング 営業成果に差が出る法人EBMのススメ」 近代セールス社

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