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  • 景気の大変動期には「社歌」ブームあり~景気のミカタ~

2021.01.22

景気変動と「社歌」の関係とは・・


今回の景気のミカタは、戦後の日本経済において、景気が大きく変動する時期には「社歌」ブームが起こっていることについて焦点をあてています。

新型コロナウイルスで2020年の国内景気は大きく落ち込んだ

図表1:景気DIの推移
2020年の国内景気は前年の消費税率引き上げの影響が継続していたなかで、新型コロナウイルスの感染拡大という未曽有の事態に直面しました。

新型コロナウイルスの影響による景況感の落ち込みは非常に大きく、2020年3月の景気DIは前月比6.2ポイント減、4月は同6.7ポイント減となり、2002年の調査開始以降で最大の下落幅を更新しました(図表1)。

その後は、緩やかな持ち直し傾向が表れていましたが、12月に入ると、新型コロナウイルスの感染再拡大にともない、観光支援の各種施策が全国的に一時停止されたことなどが悪材料となり、景気DIは7カ月ぶりに下落するという状況となっています。さらに、冬季賞与の減額や新型コロナウイルスに関連した失業者の増加など所得環境が悪化したほか、一部地域での休業・営業時間短縮などで、小売や個人向けサービスなど個人消費の落ち込みがみられました。

景気の大変動期には「社歌」ブームあり

図表2:マスコミにおける「社歌」の出現件数
こうした景気の動きを追っていくと、あることが思い出されます。それは「社歌」の存在です。
近年、再び社歌ブームが訪れています。これまで社歌がブームとなったのは、景気が極端に良い時か、極端に悪い時でした。第1次社歌ブームは、1920年代後半から30年代、世界大恐慌のなかで社員一丸となって乗り切ろうと制作されました。第2次ブームは、1960年代の高度経済成長期です。業績や給与が右肩上がりとなり、明日への希望に満ちていた時代に表れました。第3次ブームは、1980年代後半から始まったバブル期で、コーポレートアイデンティティ(CI)やブランディングなどの言葉とともに、社名や社歌を変更する企業が多くみられていました(弓狩匡純(2006年)[1])。

第3次ブーム以降、バブル崩壊後には朝礼で社歌を斉唱するという光景はあまり見られなくなっていました。とはいえ、2000年代前半に神奈川県の建築解体業者が制作した社歌のCDがヒットするなど、社歌が完全に廃れていたわけではありませんでした。

そして現在の第4次社歌ブーム。楽曲は、主に若い社員が主体となり、Hip-HopからJ-POP、ROCK、演歌などオールジャンルの状況となっています。また、動画投稿サイトを通じて企業理念や社風を発信していることも特徴です。その作り方は企業PVやショートムービー、ミュージックビデオ、ドキュメンタリー映像など、多種多様といっても過言ではありません。このような情報発信は2008年に社名を変更し、作詞に森雪之丞氏、作曲に久石譲氏を起用して社歌を改定したパナソニックが先駆けだと言われています。さらに、2016年に始まった「中小企業社歌動画コンテスト」など、ここ数年の間に開催されてきたさまざまな社歌のコンテストも盛況です。

こうした動きはマスコミにおける「社歌」の出現件数にも表れています。2017年は、社歌コンテストの盛り上がりがテレビを中心に年間84件取り上げられました(図表2)。また、2020年は年間69件取り上げられましたが、その背景として、社会全体を覆った新型コロナウイルスの影響がありました。在宅勤務であっても従業員のコミュニケーションを積極的に行う手段として「社歌」が再評価されることになったのです。そこにはビデオ会議システムの拡がりも重要な役割を果たしていました。

今回のブームは、社員が自社の魅力や風土、会社で働き続けることの意義などを真剣に考えて作詞するなど、これまでにない動きとなっていることが特徴です。複数の部署から参加し侃々諤々に意見を出し合うことで、日常の業務では味わえないシナジーも得られるでしょう。あるいは若手社員には社歌が新鮮に感じられたのかもしれません。新型コロナウイルスの影響が続くなかで、社員がそろって社歌を歌うことは難しいでしょう。また、新しい生活様式に自社がどのように対応していくか、模索している企業も多くあります。このような時代だからこそ、社歌の持つ可能性が改めて注目されているのではないでしょうか。


[1] 弓狩匡純、『社歌』、文藝春秋社、2006年

執筆:情報統括部 産業情報分析課 窪田 剛士

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