損益計算書と貸借対照表|財務会計のイロハのイ
2021.06.15
~決算書は会社の成績表のようなもの~
決算書には、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュ・フロー計算書、注記表など複数の帳票が存在することがわかりました。また、このような定量情報だけで会社の善し悪しを判断せず、数字以外の定性情報を収集する必要性についても触れました。引き続き、先輩社員のレクチャーを新入社員とともに聞いてみましょう。
新入社員「『たいしゃく』対照表と呼ぶのですね…。確か貸借対照表には、現金や社有の土地、借金などの金額が記載されていると何かの本で読みました」
先輩社員「そうですね。ゆくゆく、細かな内容について説明していきますが、今回はおおまかなイメージを掴んでもらえれば十分です。また、貸借対照表は冒頭に『令和2年3月31日現在』といった感じで、決算期末の一時点の情報であることが示されています」
新入社員「決算書は、必ず期末時点で作成されるものなのでしょうか?」
先輩社員「そうですね。中小零細企業でも必ず税務申告する必要がありますので、一会計期間つまり基本的には一年ごとに作成されます。ただ、よりタイムリーな情報提供をするため、上場企業の中間期や四半期報告といった形で、決算期間の途中で作成されることもあります。これは、損益計算書も同じですね」
新入社員「損益計算書は一番上に売上高がきていて、一番下に利益があるものですよね?私には損益計算書のほうがイメージしやすいです」
先輩社員「確かに、一年間の売上やそれを獲得するために発生したコストをまとめたものですので、どちらかというと損益計算書の方が理解しやすいでしょう。こちらは『自 平成31年4月1日~至 令和2年3月31日』といったように集計期間が示されます」
新入社員「作成するタイミングは同じでも、貸借対照表は期末の一時点、損益計算書は決算期一年間という違いがあるのですね」
先輩社員「そして、その貸借対照表と損益計算書の金額は強く連動しているんですよ」
新入社員「時点情報と一年間の集計では全く別ものに見えますが・・・どのように繋がっているのですか?」
先輩社員「一年間の売上とコストを損益計算書で集計して、その結果として、期末にどれだけの資産や負債が残っているかが貸借対照表に計上されます。そして、その翌日から次の期の損益計算書の計算期間が始まりますので、会計的には貸借対照表は損益計算書をつなぐ『連結環』とたとえられることもあります」
新入社員「なるほど!損益が赤字続きであれば、コストばかり嵩んで現金が減りますし、場合によっては借金が増えている状態になるわけですね」
先輩社員「そんなイメージです。もう少し細かく話すと、損益計算書の最終的な損益結果である利益が、貸借対照表の純資産の項目に反映していくのですが…これは、次回以降に説明しましょう。このようなことから、二帳票をチェックするときは、どのような点に気をつけたらよいと思いますか?」
新入社員「役割が違うので、どちらか一帳票だけ見て判断してはいけない、ということはわかりました。他には『連結環』というキーワードから、決算書はずっと繋がっているという印象を受けました。過去期も確認して企業の趨勢を見極めた方がよさそうですね」
先輩社員「その通りです。大前提として現代では経済が発展して、企業は将来にわたって事業を継続していくことが当たり前になりました。その前提に立つと、損益計算書の結果が赤字でも、財務内容が充実している企業とそうでない企業とでは見え方の印象が大きく変わってくるはずです。特に昨今はコロナの影響で売上が減少しているところも多いですから、その企業が培ってきた財務基盤の善し悪しも大きなポイントになります」
新入社員「貸借対照表は積み上げた結果、ということですね。そうであれば、企業の強み・弱みがつかめそうですね!」
次回のテーマは、貸借対照表の構造(資産の部)です
ポイントの整理
2:損益計算書は一事業年度の期間情報
3:損益計算書の結果である利益・損失が貸借対照表に反映される関係により、二つの帳票はつながっている
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貸借対照表が一定時点のストックを表している一方で、損益計算書、株主資本変動計算書、キャッシュ・フロー計算書は一事業年度のフローを表しています。前期末の貸借対照表からスタートして、フローを表す諸表を介し、結果として残った科目残高の集積が当期末の貸借対照表という時系列的な関連性があります。