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  • 本質を理解し、向き合い方を知らずしてデータ活用には至らない 第4回

2021.12.06

第4回 企業データを有する帝国データバンクが取り組む領域の幅

帝国データバンクという会社のイメージ、みなさまはどのようなイメージを抱いているでしょうか。信用調査会社、倒産集計を発表する会社という認識がある人は多いと思います。認識のとおり、企業信用調査を主業としている帝国データバンクはそのイメージでも間違ってはいません。またすでに帝国データバンクのサービスをご利用いただいたことのあるお客さまであれば、データを購入したり、市場調査を依頼したりしたこともあると思いますので、企業調査以外にもそのようなサービスを展開する企業だという認識はあると思います。
図12 地域経済分析システム
一方で、データ分析の会社、データの会社というイメージを持っている人は少ないのではないでしょうか。実際には、官公庁や民間企業のデータ分析の分野でも帝国データバンクが関係しているところがあります。
官公庁での代表例としては、地域経済分析システム(以下、RESAS)や地域未来牽引企業、新型コロナウイルス感染症が地域経済に与える影響を可視化したV-RESASがその最たる例です。RESASでは、帝国データバンクの企業データをはじめ、官民のビッグデータを扱い、地方自治体が地域経済等を分析できる環境を用意し、地方創生の戦略立案、実行にデータを役立てる取り組みです。ここでは、地域の中心的な担い手を探し出す際に、どのような企業が地域の中核企業と言えるかを探し出すための指標を作り、中核企業分析をできるようにしました。企業の売上高や従業員数、利益などだけでは規模の大小はわかっても地域貢献の度合いは見づらいところがあります。そこで、企業業績のほか取引情報にも着目し、地域に取引やキャッシュを循環させる機能を持つ企業を地域中核企業として定義し、それを図るためのコネクター度、ハブ度というものを作成しました。この指標で見ると、取引量と企業規模は相関するものの、その企業規模が地域貢献と必ずしも結びつかないことがあります。コネクター度はどのくらい地域外から資金を稼いでいるのか、ハブ度はどの企業がどのくらい地域内に資金を分配しているかを見る指標ですが、域外からの稼ぐ力があっても地域外との取引が販売・仕入ともに多く、地域内の企業との取引がさほど多くない企業は、企業としての業績が良くともその影響は地域内にまでは波及せず、その企業のみの範囲でしか変化しません。企業規模の大小だけではとらえきれないものを目的に合わせたデータや指標を作成し、分析結果どのような企業に着目すべきかを捉えるような取り組みがされています。
図13 地域未来牽引企業図
地域未来牽引企業も同様です。地域経済の中心的な担い手になる企業を選定するためにこのコネクター度、ハブ度の考え方を発展させた評価指標を作り、地域未来牽引企業であると経済産業省が選定され、企業PRに貢献するというものです。単純に企業の業績データを提供するというのではなく、データ分析を通して新たな評価軸を作りだしたり、示唆を提供したりするような取り組みが行われています。
図14 新型コロナウイルス感染症が地域経済に与える影響の可視化サイト「V-RESAS」
V-RESASはほか2つと少し違った観点で取り組みに関わっています。異なるデータをそれぞれ異なるデータビジュアライゼーションで表現して、データごとにインプリケーションを読み解くようにするのではなく、各データの特徴を踏まえつつ、複数のデータを横断的にみることで示唆を得られやすくするよう、いかに統一的なビジュアライゼーションでデータが指し示すものを的確に伝え、ユーザー体験に結びつけるのかをデータビジュアライゼーション、データマネジメント、Webサイト構築の各担当をまとめ上げる総合マネジメントとしての立ち位置で関わったプロジェクトです。そこにはデータに対する理解の仕方やデータホルダーの巻き込み方、データごとにデータマネジメントするのではなく、統一的なデータマネジメントの在り方を指し示し、関係者を巻き込むなど、表には見えてこない細かな仕事に取り掛かっていました。こうした取り組みもデータ前処理の苦労や重要性、ビジュアライゼーション等のデータの見せ方などデータの扱い方をよく知る帝国データバンクだからこそ、全体をディレクションして取り組めた事例と言えます。
民間企業の場合は、企業信用度を測る「評点」を顧客管理として活用しているケースや、営業ターゲットを特定するために、企業概要データベースCOSMOS2で企業の所在地や業績から企業抽出する定型サービスから、駅から半径数百メートル以内に立地する企業や企業の事業内容からキーワードを特定しターゲットを抽出するなど、お客さまの細かなニーズに合わせた非定型サービスも行っています。これらはいわば虫の目にあたる部分で、Customer Jobsの「ターゲットを特定し営業する」ということに対して、Painsでは「営業がひたすら訪問営業するにも限界があり、ネットで情報収集するにも情報不足でターゲットリストを作りづらい」ということが挙げられます。これに対して、特定キーワードや距離、企業概要などの情報を駆使して、営業ターゲットリストを作り出すことがPainsを解消し、情報取得スピードや情報品質の向上を果たし、お客さまに顧客価値として提供していることになります。

そのほかにも、帝国データバンクのデータ等を活用して、市場分析や、企業分析、取引構造分析なども行います。分析は基本的に目的設定が重要となりますので、お客さまの課題やどのような示唆や発見を求めているのか、その要望を受けるところから始まります。それは、内容によって、分析方法はもちろん、必要なデータセットや活用する指標が異なるからです。場合によっては、既存のデータでは説明が難しいものもあるので、新たに指標やデータセットを作成することもします。難易度によって異なりますが、分析案件は半年から一年かけて取り組むものが多いかもしれません。それは、最初の課題や要望を受けて、分析してアウトプットを出して得られる示唆によって、お客さまも自分たちの見るべきものが徐々にクリアになり、分析仕様の追加や変更が発生するためです。つまり、分析でも目標の階層性というのがあり、お客さま自身も気づかない、その階層性が分析という工程を通して、理解が進み、最終的に得たいアウトプットまで何度か試行錯誤が発生します。

分析もピンキリなところがあり、特定のお客さましか見ないであろう分析フレームワークから、複数のお客さまから同様のオーダーを受ける分析フレームワークまで、様々です。ただ、どちらの場合であっても分析案件となるとまず目的を明確化させるためにお客さまのニーズを聞き取り、分析仕様を設計やデータセットを作成し、それから分析しますので、分析というと少々時間のかかる、難しいものというイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。ただ、先に述べてきたように、分析はものすごく単純化して言えば、比較するということです。そのためそこまで縁遠いものと感じることもないのですが、この工程が難しく感じさせてしまっているのも事実です。
そのため、最近ではこうした分析のうち、よく使われる分析フレームワークを活用して、分析をより身近なものにするHELFECLOUD(ヘルフェクラウド)という分析サービスも展開し始めています。

HELFECLOUDの紹介動画はこちら
https://www.tdb.co.jp/lineup/helfecloud/index.html
これは、分析作業の特徴の一つである試行錯誤をしやすくし、分析結果は関係者とシェアして議論するために理解しやすいよう可視化し、既存の分析フレームワークで集計・比較した結果を表示することで、分析というものをより身近なものにしようというものです。データを扱うには前処理が8割と言われるのはなぜかでもお伝えしましたが、分析において最初に立てた仮説が思い通り1回で終わるケースは少ないです。仮説が間違っていても分析結果さらに精度高い洞察を導きたいと思っても、繰り返し作業が発生してきて、なかなかデータ分析と施策検討に十分な時間を割けないことが課題に上がります。サービスについてはサービス紹介ページにも掲載しているのでご覧いただきたいと思いますが、HELFECLOUDサービスはValue Propositionに当てはめて言えば、

・何度も試行錯誤して分析軸を切り替えて、データ分析できる
・市場分析から企業分析、時系列分析など鳥の目、虫の目、魚の目での分析要素でデータ分析できる
・情報取得後のデータ加工や集計作業は不要で、集計済の可視化がされたグラフ等が一目で確認できる

など、分析の要望のうち、試行錯誤をスピーディに行いたい、営業担当などにもデータ活用させたい、分析に必要な手間はなるべく省きたいといった声などを反映して展開しているサービスです。
帝国データバンクは、調査を通して、企業の信用を興すことを中心的な生業としています。しかし、別の視点で見れば、調査等で誰しもが調べられないことを代わりに調べることで情報を収集し、データ前処理等を通してデータ活用しやすいようデータベース化し、データを提供したり、データを分析支援したり、お客さま自身がデータを活用・分析しやすいようにしたりして、情報パートナーとしてデータ社会と経済の発展、お客さまの活動の支援をしている会社でもあります。仮に読者のなかで帝国データバンクを調査会社というイメージだけで見ていたならば、データの会社として視点を変えて見ることで、新しい発見や帝国データバンクの取り組みに従来とは異なった関心を持つことができるかもしれません。面白い見方ができるかもしれません。



執筆:企総部企画課 六信 孝則
<バックナンバー>
第1回 なぜデータが今そこまで注目されるのか
第2回 目的なき文脈を避けるための目的の特定方法
第3回 データ社会の今後期待される2つのこと
第4回 本質を理解し、向き合い方を知らずしてデータ活用には至らない(本コラム)

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