キャッシュフロー計算書(前編)|財務会計のイロハのイ
2022.08.02
与信管理の観点からは特に重視したい「キャッシュフロー計算書」についての説明です。
「キャッシュフロー計算書」とはどういうものなのかを理解し、貸借対照表や損益計算書との使い分けができるようになりましょう。
新入社員「損益計算書だけでは、お金の動きが追えないため、キャッシュフロー計算書が必要なんですよね」
先輩社員「そうです。黒字倒産という言葉を耳にしたことがあると思いますが、損益計算書上は利益がでているのに、キャッシュが足らなくなって債務の返済ができなくなってしまうケースです。なぜ、このようなことが起こるかイメージできますか?」
新入社員「売上は計上したけど、お金になっていない…売掛金が増えて行くパターンが思い浮かびます。その売上自体が、架空の場合も想定されますよね」
先輩社員「いいでしょう。そのようなケースにおいて、キャッシュフロー計算書を見ると、実際にはお金になっていないという事が確認できます。損益計算書の計算期間と同じように、期首から期末までを集計期間としてキャッシュフロー計算書は作成されます」
新入社員「貸借対照表は期末時点の財政状態をあらわすものですから、確かにBSやPLでは抜け落ちてしまう重要な情報をキャッシュフロー計算書が補っているんですね」
先輩社員「では、実際にキャッシュフロー計算書を見たことはありますか?」
新入社員「上場企業の有価証券報告書で少し見たことはあります。ただ、中小企業のものはあまり見た記憶がないですね」
先輩社員「キャッシュフロー計算書自体、新しい考え方の帳票です。2000年3月以降に上場企業では作成が義務化されましたが、中小企業は任意ですからね」
新入社員「与信管理がより重要な中小企業こそ、キャッシュフロー計算書を確認したいですよね」
先輩社員「資金繰り表という形で、年間の資金計画を立てるために内部的に作られることはよくありますが、外部提供のために作られることは珍しいと思います。調査会社の資料で、推定で作成されたキャッシュフロー計算書を入手するのも一案です」
新入社員「推定で作るには相当なノウハウがいりそうですね」
先輩社員「自分で計算するのは至難の業だと思います…。ただ、キャッシュフロー計算書の“作られ方”についてもゆくゆくお話ししますので、おおまかなイメージはつかめるかもしれません。まず今回は、キャッシュフロー計算書は、お金の動きを色分けして示している、という事を覚えておいてください」
新入社員「どこからお金が入ってきたか、また、お金の使われ方によってカテゴライズしているんですよね?」
先輩社員「大別すると、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローの3つに分かれます。次回は、各々のカテゴリーを掘り下げて紹介します。また、キャッシュフロー計算書の基本的な見方、分析方法や注意したいケースを順番にレクチャーしていく予定です」
ポイントの整理
■キャッシュフロー計算書の作成は、上場企業のみ義務があり、非上場企業には義務づけられていない。
■キャッシュフロー計算書の役割とは、お金の動きを「営業キャッシュフロー」 「投資キャッシュフロー」「財務キャッシュフロー」に大別し、示すことである。
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