キャッシュフロー分析とDCF法|財務会計のイロハのイ
2022.09.20
キャッシュフロー計算書における財務分析についてです。「キャッシュフロー・マージン」「有利子負債返済能力」「DCF法」それぞれの具体例を通してポイントを掴み、着実に知識を身につけていきましょう!
新入社員「営業キャッシュフローの『間接法』による作成方法については少し難しかったですが、キャッシュフロー計算書の構造や役割はよくわかりました。キャッシュフローにも分析指標があるのですね?」
先輩社員「代表的なところを紹介していきます。まずは、損益計算書科目との組み合わせで算出する『キャッシュフロー・マージン』です。計算式は『営業キャッシュフロー÷売上高×100』となりますが、何を意味しているかイメージできますか?」
新入社員「売上がきちんとキャッシュ獲得に結び付いているか、特に営業によるキャッシュインとなっているか、といった感じでしょうか?」
先輩社員「正解です。営業活動の結果としての売上高に対し、どれくらいの営業キャッシュフローを生み出しているかを表しています。つまり、この比率が高いほど、営業活動で順調にキャッシュフローを生み出していることを示しています」
新入社員「営業利益はしっかり計上できているのに、キャッシュフロー・マージンが僅少というケースもありそうですね」
先輩社員「そうですね。他の帳票との組み合わせ、また、過去期からの推移のチェックを心がけましょう。繰り返しになりますが、重要な観点です。では、次に貸借対照表科目との組み合わせで算出する『有利子負債返済能力』ですが、算式をイメージできますか?」
新入社員「返済能力を見る分析指標は使えそうですね。分子は有利子負債、つまり借入金や社債を合算したものですが、比べる分母はどのキャッシュフローの科目を使うのでしょうか?」
先輩社員「正解の算式は『有利子負債÷フリーキャッシュフロー』となります。つまり、フリーキャッシュフロー何年分で借入金・社債等を返済できるかを表しています」
新入社員「フリーキャッシュフローは営業キャッシュフローと投資キャッシュフローの合計額ですね。返済能力が高くても、私なら、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローの割合も見ておきたいですね」
先輩社員「なかなか良い着眼点です。連続して営業キャッシュフローがマイナスで、投資キャッシュフローのプラス、つまり資産の切り売りでキャッシュを賄っている状態が続いていると、少々不安ですからね」
新入社員「そうなってくると、現預金の残高はまだ十分あるのか、というところが気になってきますね。やはり、財務諸表はそれぞれが関連しているという実感が強くなってきました」
先輩社員「もうひとつ、DCF法についても紹介しておきましょう。ディスカウント・キャッシュフロー法という考え方で、企業価値の算定や、設備投資の効果を見積もる一手法で、色々な局面で用いられる考え方です」
新入社員「横文字で難しそうですが、ディスカウントというのは『割引』という意味ですよね!」
先輩社員「そうです。将来キャッシュフローを割引計算して現在価値を求める方法ですが、今回は、ごく簡単な例を挙げて考え方のみ説明しますね。例えば、100万円で設備投資をしたとき、向こう5年間で20万円ずつ稼ぐとすると、この投資効果はいかがでしょうか?」
新入社員「100万円使って20万円×5で100万円稼ぐので、トントン。つまり儲かってもいないし、損もしていないという結果でしょうか?」
先輩社員「ここで『割引』の考え方が重要になります。今もらえる20万円と、来年もらえる20万円、さらに再来年もらえる20万円では、どんどん魅力が落ちて行っているのが感覚的にわかりますか?」
新入社員「なるほど。では、その設備投資は損ですね。1年で20万円超、合計でしっかり100万円よりも多く稼いでもらわないと困りますね」
先輩社員「今はそのようなイメージをもっていればOKでしょう。より深く、会計の勉強や、企業価値測定をしようと思うと出てくる考え方になります。『DCF法』というワードと概要を覚えておいてください」
ポイントの整理
■「有利子負債返済能力」は「有利子負債÷フリーキャッシュフロー」の算式で求められ、フリーキャッシュフロー何年分で借入金・社債等の有利負債を返済できるかを表すものである。
■将来キャッシュフローを見積もり、割引現在価値を求める方法をDiscount Cash Flow法(ディスカウント・キャッシュフロー法)という。
◆関連コラム
営業・投資・財務の3つの活動において、それぞれの良い状態などに触れています。
実践的に活用したい方はこちらをご確認ください。
■企業審査人シリーズvol.233 Time is Money ~時間価値を考えた投資の意思決定~
投資意思決定の手法である「正味現在価値法」について説明しています。
当コラムの“『割引』の考え方”についてあまり理解ができなかった方は、ぜひこちらを参考にしてください。