これがパクリ屋の手口だ ~取込詐欺に遭わないために~ 第3回
2023.05.08
今回も実際に発生したケースを見てみましょう。
~架空の決算書に注意!E社のケース~
面談の際は直近3期分の決算書をしっかり用意しており、内容はいかにも優良企業であるかのような業績が記載されていました。また仕入先や得意先をヒアリングすると、大手企業の名前も含まれていましたが、後ほど側面調査としてE社との取引有無を確認したところ、取引の事実は確認できませんでした。E社の様子は対応した人物以外に女性事務員が1名いる程度で、外部から電話がかかってきている様子もなく、玄関には様々な商品名が記載された段ボールが雑然と積みあがっているというパクリ屋の典型的なパターンでした。
その後、「これまで取引がなかったE社から突然取引を持ち掛けられたがどうしたらよいか?」「期日とおり売掛金が回収できていない・・・」といった問い合わせが全国から寄せられました。
~実質経営者に逮捕歴があったS物産のケース~
S物産には、取引相手をだますための“三種の神器”がありました。具体的には、「休眠会社」「決算書」「ホームページ」の3つ。S物産の商業登記上の設立は5年以上前でしたが、実際には活動を始めたばかり。一定の業歴のある「休眠会社」を手に入れ、代表や役員を変更したうえで、活動を行うための「ハコ」にしたのです。
地理的に遠く離れた会社に「御社のホームページを見た」と囁き、自社の会社案内と3期分そろったピカピカの内容の「決算書」を送付。相手への信頼度を上げつつ、サンプル品の送付や新規取引を持ちかけました。
その際に「取引して大丈夫」と思わせるための“舞台装置”が、立派な会社ホームページでした。S物産は多数のイメージ写真を使い、好印象を与える内容をちりばめ、さらには「取引銀行名」まで記載がありましたが、もちろん内容は架空のものでした。
S物産は16都道府県で詐欺被害を生んだ末に、突然事業を停止しました。その後、警察は実質経営者A氏を逮捕。A氏は過去にも前歴があり、業界では有名人だったそうです。
~偽コンサルタントに乗っ取られたD商事のケース~
調査の事前に確認した商業登記ではD商事の取材窓口の役員は従来通りで替わっていなかったが、いざ訪問をするとパクリ屋の指南役とみられる役職なしの社員が窓口担当として出てくるため、最初はパクリ屋と気づきませんでした。しかし、もともと建設資材関連の事業内容であったにも関わらず、途中からOA機器など業態違いの商材を扱い始めるという、一般的にはあまりないケースの商材変更でした。
その後、「D商事はどんな会社なのか?」「お客さまから問い合わせが増えているが、何かトラブルがあったのか?」といった問い合わせが増え始めました。
その1か月後、現地を訪問するとすでに退去しており、もぬけの殻状態でした。事務所入り口には債権者と思われる会社の名刺や書類が散乱しており、突然の出来事だったことを表していました。
第4回に続く
[作成者:株式会社帝国データバンク TDBカレッジ事務局]
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