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  • 「金利のある世界」へ意識のスイッチを切り替えるとき~景気のミカタ~

2024.01.26

マイナス金利の解除は金融政策の大きな転換点に

今回の景気のミカタは、国際的に大きな関心を集めている日本銀行による大規模な金融緩和政策の行方について焦点をあてています。

国内景気の小幅な変動が続くなかで、金融緩和政策の行方が国際的な関心事に

図表1
2023年12月の国内景気は、暖冬による季節商品の不振や自動車メーカーの不正問題などがマイナス要因でしたが、インバウンド需要の継続やボーナス支給による堅調な年末需要がプラス要因となっていました。好材料と悪材料が交錯するなかで、帝国データバンクが算出する景気DIは前月比0.1ポイント増の44.9と3カ月連続の改善ながら、その規模は小幅にとどまりました(図表1)。

2024年の景気は、賃上げの継続により左右される個人消費の行方がカギになると見込まれています。それと同時に、国際的に大きく注目されているのが、日本銀行が実施している大規模な金融緩和政策の見直しが行われるのかどうか、さらにタイミングはいつになるのかということです。

2024年は金融政策の転換点に!意識のスイッチを切り替えるとき

図表2
日本銀行は、2013年4月から異次元の量的・質的金融緩和政策を始めています。その後、2016年1月にマイナス金利操作付き量的・質的金融緩和政策の導入を決定し、さらに同年9月に導入した長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策にともない、イールド・カーブ・コントロール(YCC)が政策の主軸となってきました。そして今年は、マイナス金利政策の解除を含め、何らかの金融政策の転換が予想されています。

非伝統的金融緩和政策では、主として長期金利の押し下げを通じた波及経路が想定されていました(図表2)。中央銀行が行うさまざまな政策が、予想金利やタームプレミアム(期間の長さにともなう上乗せ金利)に影響を与えることで長期金利を変動させ、それが貸出金利や貸出量の動向を通じて、経済や物価などの実体経済へと効果が波及していく、という流れです。

国内外の先行研究[1]などによると、日本における非伝統的金融政策は経済・物価の押し上げに対して、デフレではない状況を作り出したことや資本ストックの蓄積、労働市場の改善などで、一定程度の寄与があったことが示されてきました。

とはいえ、インフレ率の押し上げ効果は1%程度にとどまっているほか、貸出金利の低下は、金融機関の収益が圧迫される要因ともなっています[2]。中長期のインフレ予想の変化に対する持続的影響への分析に加えて、物価と賃金の好循環を実現させることなど、いまだ達成できていない課題が多く残されていることも確かです。

そうしたなかで、2024年は、これまで続けてきたマイナス金利政策を解除するかどうか、解除するならどのタイミングで行うのか、またYCCは継続するのか、といったことが金融政策の大きな焦点となるでしょう。

もし今年に金利が引き上げられることになれば、2007年以来17年ぶりの政策金利の引き上げとなります。それは、ゼロ金利政策やマイナス金利政策など25年以上も続いた「金利のない世界」から「金利のある世界」への大きな転換点となります。時代が変わるターニングポイントに直面しているなかで、私たちの意識もスイッチを切り替える時に来ているのではないでしょうか。


[1] 例えば、[1] Kubota, Hiroyuki and Mototsugu Shintani, "Macroeconomic Effects of Monetary Policy in Japan: An Analysis Using Interest Rate Futures Surprises," CARF Working Paper, CARF-F-555, The University of Tokyo, 2023、[2] Michaelis, Henrike and Sebastian Watzka, "Are There Differences in the Effectiveness of Quantitative Easing at the Zero-Lower-Bound in Japan over Time?" Journal of International Money and Finance, Vol.70, 2017, pp.204-233.など参照。

[2] 非伝統的金融政策による、経済・物価・金融システムなどへの副作用を指摘した研究としては、Altavilla, Carlo, Wolfgang Lemke, Tobias Linzert, Jens Tapking, and Julian von Landesberger, "Assessing the Efficacy, Efficiency andPotential Side Effects of the ECB’s Monetary Policy Instruments since 2014," Occasional Paper Series, 278, European Central Bank, 2021などが詳しい。

(情報統括部 情報統括課 主席研究員 窪田剛士)

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