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  • 猛暑による消費効果と消費者ニーズの発掘法とは~景気のミカタ~

2024.07.19

猛暑と消費回復に必要なこととは・・・

今回の景気のミカタは、猛暑が予想されるなかで、低調な個人消費の回復には何が必要なのかということについて焦点をあてています。

猛暑が押し上げる家計支出は何?

図表1
気象庁によると、2024年の夏(7~9月)の気温は平年より高くなる予想です。また、民間の気象会社の予測では、観測史上最も暑かった昨年に匹敵する猛暑になる可能性が示されています。チベット高気圧と太平洋高気圧が上空で重なり合っていることが要因となり、35度以上の猛暑日が続いたり、地域によっては40度以上となる酷暑日にも注意する必要があるようです。

猛暑による天候不順は、農作物への生育状況に大きく影響を与えます。同時に、気温の上昇はエアコンや扇風機の利用が増え、それにともなって電気代も増加します。ビールや清涼飲料など夏の定番商品だけでなく、紫外線対策商品やスキンケア商品などの売れ行きも押し上げることになるでしょう。このように、猛暑が続くと家計支出に加えて、夏物商材の販売や屋外レジャーなど企業の売上動向にも波及すると予測されます。

例えば、昨年の猛暑では、平均最高気温が平年通りだったときと比べて、東京の家計支出に関して約466億2,700万円の増加が試算されていました[1]。

具体的な支出項目でみると、「食料」は、夏バテなどを受けて主食となる穀類や魚介類への支出が大きく減少しましたが、飲料が大幅に増えたほか、キッチンなどで火を使わずにすむ弁当や加工食品などを含む調理食品なども増加したことで、約34億8,000万円増となっています(図表1)。また、「保健医療」は猛暑対策や熱中症などの医療サービス等への支出(約105億9,400万円)が増えたほか、宿泊料を含む「教養娯楽」(約184億3,500万円)や理美容サービス・用品などへの支出(約65億4,900万円)も増加していたとみられます。

個人消費DIが低下傾向にあるなか、消費者ニーズをいかに発掘するか

図表2
一方で、実質賃金が26カ月連続でマイナスとなっていることは、家計にとって大きな重荷といえます。実に2年以上も実質賃金が減少していると、家計の購買力を徐々に奪い取っていることは明らかです。

帝国データバンクが行った調査においても、個人消費関連の低下が目立つようになってきました(図表2)。特に2024年6月は、宿泊業や娯楽サービス業など個人向けサービスを中心に個人消費DIが大きく落ち込む要因となっています。

春闘などを通じた賃上げの動きやボーナスの増加が消費の押し上げ要因として本格化するのは、これからかもしれません。賃上げ率を物価の上昇率が上回る限り、個人消費の回復は見込めないと考えた方がよさそうです。

前述した個人消費DIに関して、しばらくは緩やかな低下が続くと予測されています。日本経済の5割超を占める個人消費が盛り上がらなければ、景気の回復もままなりません。企業にとっては、夏の季節需要を上手に活用したアイデア商品をいかにして市場に投入するかが問われてきます。そこでは、さまざまな数字をしっかりと読み解き、ニーズを捉えていくことが肝要です。とりわけ、家計調査や消費状況調査といった公的統計をうまく利用することで、消費者行動やライフスタイルの変化に対応するヒントが得られるのではないでしょうか[2]。


[1] 帝国データバンク、「東京都の猛暑が家計支出に与える影響調査(2023年)」(2023年8月25日発表)

[2] 詳しくは、帝国データバンク情報統括部著、『帝国データバンクの経済に強くなる数字の読み方』、三笠書房、2024年を参照(猛暑による影響は7章03「気温と消費の関係」、公的統計を用いた消費者ニーズの発見は9章05「家計消費は日本経済を知る宝庫」をお読みください)


(情報統括部 情報統括課 主席研究員 窪田剛士)

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