機能する人事評価制度の設計と運用のポイント
2014.02.25
・報酬の決定・改訂
・人材育成
・モチベーション
そのような中、“キチンと機能させられているのかどうか?”を各社の人事担当者に自問自答してもらうと疑問符を付けざるを得ないというケースが結構多くあるようです。
「目標管理」・・・ご利用は計画的に
目標を立てること自体は大変有意義なことで、自分を振り返り、今後の成長を見据えて、各自が自分の思いを目標にするだけなら問題はありません。
しかし評価制度に組み込むと、「評価するに値する」目標である必要が出てきます。
組織の方針との連動性や、同一階層(等級など)との難易度のバランス、評価しやすい達成水準をどう表現するかなど・・・・
売上や粗利といった一つの目標で、組織の方針に連動し、個人のすべての活動の結果を表現できるのは営業職種くらいしかなく、ほとんどの部署は特定の業務やテーマに絞らなければなりません。
さらに、ルーティン中心の部署、例えば工場の現場の作業員などは、不良率とか掲げても個人としての不良率は計測できないというように、個人の責任範囲が特定しにくいため、なおさら「評価に値する」目標のテーマの選択と達成水準の設定は困難となってきます。
これらの「評価に値する」目標を、一般層でいる間にトレーニングを受けてこなかった管理職が部下に対して、いきなり指導できるわけがないのです。あらためて教育を行い、職場でのトレーニングとチェックを行う機会を仕組みとして導入しておかないと、いつまでたっても問題のある目標がスルーし続けることになります。
全階層に目標管理にもとづく評価システムへと一気に改訂した企業では、ほとんどがこれらの問題に直面し、社員も人事部員も経営陣も誰もが不満を抱えるという、当初の制度改定目的とは正反対の事態が推移しています。
したがって、「目標管理」に基づく評価制度を、無理に全部の一般層にまで広げて不満の種を広げるよりも、「目標管理」にふさわしい部署・階層に限定して導入し、その他の部署では管理職の【目標査定力】が高まるまでは評価への組み込みは延期する方が得策です。
既に導入済みの企業でも、不満の連鎖を断ち切るには、目標管理の適用を限定するとか、教育とトレーニングの仕組みの導入を早急に行う必要があります。
相対評価のススメ・・・・絶対評価と相対評価の二刀流の使い方
ところが相対評価という言葉は、どうも悪いイメージを持たれやすいようです。
悪評の原因は、「相対評価は実力を評価されたものではない」とか「声の大きい部長のいる部署が優先されるらしい」などという噂が飛び交うことにあります。
確かに「実力で評価」されたものが反映されるべきです。しかし、原資が限られている以上は、何らかの形で相対化しなければなりません。
問題の核心は、「最終評価(評語)=実力」と誤認させていることにあります。実際は、最終的に相対化しているのなら「最終評価(評語)=序列」なのです。この実際の本当の姿を社員にも公開し、用語を区別していく必要があります。
その前提としては、次の2つがあります。
【1】一次、二次評価の段階では、評価表にもとづいて絶対評価する。
【2】一次、二次評価の段階では、評価表にもとづいて点数化し、評語化しない。
つまり、評価表の段階では絶対評価で実力を評価しているわけで、そこに相対化の要素は一切排除します。
即ち、「評価表の点数=実力 評価者の判断」「評語=点数をもとにした序列 上層部の判断」という区分をしっかりとつけておくことでフィードバックが円滑になります。
例えば、昨年80点(100点満点)でAだった人が、今年も同じ点数だったがBに落ちたということが有り得ます。実際にはこの人の実力は昨年同様80点のままです。つまり、上司が正しくフィードバックするためには、「君の実力は変わらないが、80点以上を取る社員が多くなったから今年は最終評価(=序列)が下がったということだ。実力を高めて、またAが取れるように一つ一つの評価項目を見ながらアドバイスしていきたい。それでは・・・」というように育成につなげていく事になるのです。
しかし、最終評価(評語)=実力という認識のまま、このような結果が上層部からもたらされた一次評価者は、「実力は同じなのに最終評価を落とされた!部下にどう説明すればいいんだ?!」ということになります。
絶対評価と相対評価の二刀流の仕組みとフィードバックの進め方について広報、教育していくことで、評価の納得性が高まり、調整段階での一次評価者と上位評価者との軋轢も防止することができるようになります。貴社におかれましても人材育成につながる評価制度の運用となるように再確認いただいてはいかがでしょうか。
クールロジック株式会社チーフコンサルタント 細木 正靖 氏