使える調査会社のアンテナ ~活用法とその掟~
2014.02.28
川路組の支払遅延の情報が持ち上がった後、中谷が電話をしている。受話器を置いた中谷に、青山は少しそわそわしながら「小川土建、どうでした?」と聞いた。
「小川土建には聞いてないわ」と言う中谷に、青山は「え?」と目を丸くした。
「その前に、帝国の横田さんに聞いてみたの。2社に支払延期を要請してるという情報がとれたわ」
中谷は水田や秋庭にも聞こえるように、大きめの声で言った。
青山の隣で初老の水田が「えっ?何じゃて?」と言うのを聞かなかったことにして、青山は中谷に聞いた。
「調査会社ってそういう情報も教えてくれるんですね」
そういえば月に何度か、横田からの電話を中谷に取り次ぐことがある。
横田からの電話はいつも取り次いでいるだけで、話の中身は聞いてなかった。取引先の耳寄りな話があるときに、電話をくれていたらしい。
「調査会社は情報で商売してるから、そういうのは1件いくらって請求されたりしないんですか?」
「そんなことはないわ。もちろん何も買わなきゃ教えてくれないだろうけど。うちから情報を出すこともあるから、そのあたりはお互い様よ」
調査会社から得られる情報
「あの会社、シャッターが閉まってるぞ」
「ここの現場はあの会社が施工してるのか」
「ああ、あの会社はここにも店を出したんだな」など、膨大な情報がストックされます。
また、横田と中谷のように、日頃から情報交換ができるネットワークを全国に張り巡らせているため、そうして集まってくる情報もあります。もちろん、業界紙や新聞記事などの情報は日常的に収集されています。調査依頼の数、といった情報も重要な信用情報となります。
ただ、影響は大きいが真偽がわからない情報、例えば今回のような支払遅延の噂や内紛、不祥事といった情報は、調査会社といえども十分な裏付けがとれるまで慎重に扱います。したがってその手の情報は電話を使って引き出すしかありません。今回のようなケースに限らず、調査報告書を読んで疑問に感じられたり、曖昧に感じられたりする情報は、調査会社の営業担当に問い合わせると「書かれていない情報」を引き出せることがあります。調査会社が「会員制度」を敷いてるのは、そうした無形のサービスを前提としているからとも言えます。活用しない手はありません。
情報を扱う掟
デジタル化が進み、一般に流通する情報は膨大ですが、本当に大切な情報は流通していません。大切な情報は、今も昔も人と人の信頼関係の中を流れていきます。そうした関係は一朝一夕には築けません。調査会社に限らず、日頃から重要な情報をもらえるネットワークづくりも、審査部門の重要な仕事と言えます。