商流把握の重要性 ~毎月同じじゃおかしい?(前編)~
2014.03.14
「ちょっと青山さん、見てください。毎月売上が同じなのはおかしくないですか?」審査資料を揃えていたアシスタントの千葉が、取引明細を見ながらに青山に聞いた。
「・・・確かに、この規模の工務店では不自然ですね。毎月500万円なんて、普通はないですね」
「そうなんです。あまり見たことがないので、どんなものか気になって・・・」控え目だが鋭い指摘である。
「毎月同じ量を生産するメーカーなら取引額も同じで不自然じゃないですけど、建築案件は規模がバラバラですから、仕入額も毎回違ってくるのが当たり前ですもんね」
青山がそう続けると、「取引開始時からそうなっとるか?」と、隣の水田が口を挟んできた。
「取引開始時か限度増額時の申請書に、仕入目的が書いてないか確認してみてくれんかの」青山は千葉から受け取った書類をめくってみた。
「それなら、その規模じゃと消化能力が限られるから、キャパ一杯で受注が安定しとると、そういうこともないわけじゃないぞ。営業担当に最近の案件を聞いて見たらどうじゃ」
「そうですね。私から聞いてみます」と水田に答えて、青山は続けた。
「でも千葉さん、よく気づきましたね」
「更新のときの審査資料では、直近の取引額の推移を見るようにと中谷さんに言われたことがあって・・・」
「取引実績の中に怪しい情報が潜んでいることがあるからな。さすが有能な審査の助っ人じゃ」
自社の販売額と得意先の業況は比例?
こうした取引額の動きは与信管理部門または販売管理部門のチェックポイントですが、その目的は、まずは販売先の業況と自社の販売額の動きの相関をチェックすることにあります。
販売先の売上が順調に拡大していれば、自社の販売額もそれに応じて上がっていくのが自然ですが、販売先の売上が停滞・減少しているのに自社の販売額が増えている場合は、他の仕入先が撤退している、または自社の商材がどこかに横流しされている、といった危険兆候として見るべきです。
やはり重要なのは商流の把握
つまりは、「販売先の販売先」までおさえておくことが重要なのであり、それによって販売先の業況を予測したり、あるいは連鎖倒産の可能性を未然に防いだりといった動きが可能になります。機械部品メーカーや食品加工業者には取引上の機密を理由に取引先を一般に開示しないケースがありますが、継続的に一定額を取引していく先であれば、利害関係者として可能な限りの開示を求めておくべきでしょう。
こうした商流や取引目的の情報は現場の営業マンが把握できるはずです。取引の申請時、とくに与信限度の増額申請時にはその理由を書面で求め、情報が足りない場合はヒアリングを行いましょう。そうした動きを円滑に行うためにも、営業部門とは日頃から協力関係を築いておく必要があるわけです。