与信管理アンケートから-1
2014.06.27
「どう、ちゃんと話を聞いてる?」
調査会社の横田を招いた青山向けの報告書レクチャーでちょうど最初のページが終わったとき、お盆にカップのコーヒーを載せた中谷が会議室に入ってきた。
ひとしきり挨拶を済ませた横田が、おもむろに鞄から書類を取り出した。
「そういえば中谷課長、今日は面白いものを持ってきました。弊社で今年お客さまの与信管理実務について、アンケートをとらせていただいたんですが、その結果がまとまったんです」
「あら、そんなことまでやっているのね。私なんかが見ていいのかしら?」と言いながら、すでに中谷は前のめりで書類を覗き込んでいる。
「ええ、ご協力いただいたお客さまには結果をお知らせします。与信管理をライフワークにされている中谷課長は必ず興味を持たれるだろうと思って、少々早いですがお持ちした次第です」
「ありがとう。レクチャーの邪魔をしちゃ悪いから、さらっと教えてちょうだい」と言いながら、長居するつもりで自分のコーヒーも持参している中谷に、青山は声を出さずに笑った。
「後日まとまったものをお渡ししますので」と横田はA4サイズで4~5枚のレポートを中谷の前に広げた。
「アンケートといっても回答した会社の属性が気になるけど、どういうところが回答してくれたの?」
「回答は3,400名、社数で3,100社からいただきました。企業規模としては従業員100名以下の中小企業のお客さまと、それ以上の大企業のお客さまが半々です。業種では卸・小売・飲食が40%と一番多いですが、製造25%、サービス16%とかなり散らばっています。これだけ多くご回答をいただけて、私たちも驚き、そしてありがたく思っています」
「いきなりアンケートをとってそれだけ回答が集まるのは、さすが調査会社ね」
ヒヤリハットの経験
「何ですか、このヒヤリハットっていうのは」と横から資料を覗き込んでいた青山が、横田に聞いた。
「青山さんは若いから聞いたことないですか。危険な目に遭ったときに、ヒヤリとしたとか、ハッとしたとか言いませんか?建設現場の安全活動なんかじゃ、よく使う言葉です。与信管理の実務をしていて、この1年間にそういう経験をされたことがありますか、とお聞きしたんです。全体の51%の方が、YESと回答されています」
「そういう経験はしないにこしたことないけど、ヒヤリハットを乗り越えるのが私たちの仕事よね」中谷が言う。
ノーマーク先の焦付き
「1/4か。時間軸に直してみると、1年間の焦付遭遇確率が25%。4年に1度は遭遇する、というのは私の感覚に一致するわね」
「心配な取引先が具体的にあると回答された方も61%いらっしゃいました」
「うちはたくさんありますよね。逆に心配な先がないと回答した40%の会社がうらやましいです」と青山が軽口を叩くと、中谷が眼鏡から青山に向けてビームを発したが、その目はすぐにレポートに戻った。
与信管理規定
「与信管理規定を作られているという回答は45%、うち半数が満足いく運用ができていて、半数は課題があると回答されています」
「そう。与信管理規定は社内の仕組み作りとして規定が必要だけど、やっぱり運用は難しいってことね」
「中小企業では、まず規定としてどういうものを作ればよいのかわからない、と悩まれる経営者の方もたくさんいらっしゃいます。アンケートでも、与信管理規定はまだ作っていないが、検討中と回答された方が33%、今後策定する予定と回答された方が46%いらっしゃいます。80%近い方が、与信管理規定の必要性を感じられているようですね」と横田が続けた。
「うちも規定はありますが、営業サイドの動きを含めて、まだ課題があるって感じですかね」と言う青山に、 「次の規定の改定、誰がやるのか、わかってるわよね。そのために来てもらったんだから」と中谷が資料に目を向けたまま言うと、「えっ?初耳ですけど・・・」と青山が豆鉄砲を食らった鳩のような顔をした。
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わたしたちTDBでは今年の2月から3月にかけて、TDBカレッジにご登録いただいているメンバーの皆様を対象に「与信管理実務アンケート」をwebアンケートの形式で実施させていただきました。想定を超える多数の回答をいただき、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
TDBではこのアンケート結果をTDBカレッジメンバーで共有するとともに、この結果を踏まえてメンバーのニーズにお応えするためのコンテンツを整えていきたいと考えております。また、このコラムの中でアンケートの結果を3回にわたってご紹介させていただきます。 今後もこうしたアンケートを不定期に実施し、メンバーの皆さまとキャッチボールを重ねていきたいと思っておりますので、どうぞご協力をお願い申し上げます。