階層別教育研修を考える(管理職研修編2)
2014.08.25
日本経営協会が実施をしている「中間管理職の意識調査」では、10年前も昨年度も、第1位は「部下の育成」でした。この10年間に渡り、企業は当たり前のように「管理職研修=部下育成」として研修を実施してきました。ある人事担当者は、「管理職の仕事は部下育成です!」と明言されたりもします。
ここで一度立ち止まって、管理職の役割について考えてみたいと思います。
「なぜ、部下育成が大切なのでしょうか?」
1.営業所長の佐々木は、自らが切り込み隊長として営業活動をしている。
部下に対してはどちらかというと放任で、「とにかく数字を上げればそれで良い」という結果主義のマネジメントをしていた。
2.営業所長の安藤は、自分はマネジャーとして、部下の営業活動のサポートに徹していた。
数字よりも営業プロセスを重視し、部下一人ひとりの動きに対して、指導をしていた。
3.2014年度上半期、佐々木の営業所は目標の120%を達成した。
一方、安藤の営業所は僅かに、目標には届かなかった。
結論から申し上げれば、どちらの所長にも「管理職の役割」という観点で見ると、一長一短があります。様々な意見もあると思いますが、管理職の役割とは、次の2点に絞られます。
1.部署の目標を達成すること(達成させること)
2.(たとえ自分がいなくなっても)部署の目標を達成しつづける体制を作ること
この2つを果たすことが、管理職の役割です。管理職は「マネジメント活動」を行うことで、上記2つの役割遂行を求められています。部下育成とは、役割を遂行するための「マネジメント活動(手段)の一つ」に過ぎません。
マネジメント活動には、部下育成だけではなく、他にもミッションやビジョンの構想、戦略の策定、課題形成、方針展開、OJTの仕組みづくり、評価フィードバック、コンプライアンスの順守、資金繰り…などがあります。
これらマネジメント活動は、それ自体においては、一円の付加価値も生まれません。極端な言い方をすると、上記2点の役割が果たされるのであれば、別にマネジメント活動の必要はありません。
前回のコラムでも書きましたが、マネジメント活動は大変重要です。ここで申し上げたいのは、「マネジメント活動そのものが目的になってはいけない」ということです。目的はあくまでもビジネスです。部署の目標を達成する/達成し続けるためには、ビジネス活動だけでなく、マネジメント活動も重要ということです。
しかしながら、管理職自身が「自分の役割は部下育成」と思い込んでしまっている場合が多いのです。
管理職研修に求められることは、自分たちの役割は何か?ということを再度確認し、役割遂行とこの研修がどのように繋がっているかを明示することです。
図表では、「役割遂行と手段の関係」を参考として明示しました。目標を達成するためには「数多の手段」があります。
管理職研修を考える際には、目的と手段を理解した上で、どのテーマにするかを決めることをお薦め致します。
次回は「部下育成」について考えます。
株式会社グローネス・コンサルティング
代表取締役 為広雅夫