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  • 系列・沿革その2【沿革情報】~報告書の読み解き方-12~

2014.09.05

[企業審査人シリーズvol.49]

「設立の経緯、特記事項。ここは会社の歴史ですね。報告書によってボリュームがだいぶ違うように感じます」と、青山が少し遠慮がちに言った。報告書レクチャーが続いている。
 「そうですね。特記事項はその会社のトピックスを時系列で掲載していますが、その会社の動きの多さ・少なさによってボリュームは変わりますし、われわれの情報の把握具合によっても変わります。ただ、商業登記事項である商号・本店住所・代表者の変更履歴は、閉鎖簿の追跡ができない場合を除いて100%掲載するようにしています。」
 「確かに、古い会社にはたくさんトピックスがありますね。取材も大変だと思いますが・・・」
 「一度に取材するとなると大変ですが、多くは調査の都度書き加えられてきたものです。100年以上この商売をしていますから、設立の経緯と特記事項は昔から書き継いできたということになりますね。うなぎ屋の『たれ』みたいなものかもしれません」
 「何だかお腹がすいてきますね」と青山が笑った。 
 「商業登記の履歴事項ということで言うと、取り込み詐欺業者の傾向はここに出てくるわけですね」
 「そうです。取り込み詐欺業者がよく用いる、休眠会社の買収による創業は、設立の経緯と特記事項から判別ができます。創業・設立後も商号や本店移転を頻繁に繰り返している場合は、実態のわからない企業として注視すべきですね。私たちが社内でよく使う言葉で言えば『業態不鮮明』企業、ということになります」
 「不良債権の発生についてもよく載っていますね」
 「そうです。不良債権については『資金現況・不良債権』のページに未償却のものを掲載し、償却が済んだものは原則として特記事項に移していきます。焦付の多い・少ないは営業基盤の良否を表していますし、管理体制の良否も表すことになります。何より、連鎖倒産リスクは与信管理では外せない要素ですからね」
 「なるほど。他に質問が思い浮かばないんですけど、他にも何かポイントがあれば教えてください」
 「拠点や店舗の出退店についても、できるだけここに掲載するようにしています。数が多すぎたり、調査の間隔が空きすぎたりする場合はフォローしきれていないこともありますが、これも役立つ情報だと思いますよ。出店・退店の効果を業績と対比して検証することが大切です。スクラップ・アンド・ビルドは前向きな場合もありますが、お店はこれだけ増えたのに思ったより売上が増えてないな、ということがよくあります。小売店や飲食店では出店・退店が増・減収の一番の要因になりますからね。店舗の撤収が続いている場合は、事業が計画通りに進んでいない、あるいはリストラを進めていると見るべきでしょう」
 一瞬の間が空き、お互いに顔を上げたふたりの目が合った。
 「今日はここまで。15時28分、一応目標通りに終わりましたね。じゃあ、続きをいつやるか、決めておきましょうか」と横田が手帳を取り出した。青山も自分の手帳を見て希望日を伝えた。課長の中谷の了解はもらっていないが、来週は比較的案件が少ないようだし、大丈夫だろう。
 「来週もよろしくお願いします!」エントランスで頭を下げる青山に、横田は江戸前の笑顔を返した。 

創業・設立・再開

 このページでは「設立の経緯」に会社の創業・設立を掲載した後に、その会社のトピックスを時系列で掲載しています。「設立の経緯」にはサマリーに掲載された創業・再開・設立の年月が因果関係とともに示されます。平たく言えば、会社が事業を興したのが「創業」、法人化したのが「設立」となります。法人設立後に今の事業を開始した場合は「創業」の代わりに「再開」という言葉を用いています。休眠会社を買収して商売を始めた場合は、設立より創業のほうが遅くなるため、この場合は「再開」と表示されます。

会社の経歴と調査の年輪

 「特記事項」では商号・本店・代表者の交代履歴を必須事項とし、このほかに合併、出資系列の変化、不良債権の発生と償却状況、拠点や店舗の出退店、社有不動産の購入・売却、許可番号・認証の取得などを掲載しています。なおTDBでは「登記主義」に基づき、商業登記の連続性を軸にしてその会社の報告書を作成しています。そのため、経営実体や母体が変化しても、報告書は商業登記の連続性に基づいて更新していきます。つまり、法人として新設会社であれば、旧会社から事業を継承していても、新設法人設立後の特記事項を原則として掲載します。ただし、この場合は便宜を考慮し、「設立までの事項」として旧会社の経緯を参考として掲載している場合もあります。
 ベテランの調査員は取材のときに、調査先の若い取材窓口の方に「帝国さんは私よりこの会社のことをご存知ですね」と言われることが一度や二度はあります。調査という仕事は相手との信頼関係が情報の質量に影響するため、担当をころころ変えずに継続して会社を訪問させていただくことが多くなっています。よって、ベテランの調査員になると、その会社の若手社員より会社のことをよく知っている場合があるわけです。特記事項は地味な項目ですが、お客さまから「新規取引でこういう履歴はわからないことが多いから助かる」という声をいただくことが多い項目です。特記事項の質量は、調査先の会社さまとTDBの「関係の年輪」を示しているとも言えます。

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調査報告書の読み解き方コラムシリーズ

役員・大株主と企業との関係を捉える<登記・役員・大株主>
従業員数・設備の内容から「ヒト」「モノ」の能力を測る<従業員・設備概要>
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