階層別教育研修を考える(部下育成編1)
2014.09.30
部下育成は、非常に幅が広いため、全三回で書いていきたいと思います。
前回のコラムでは「管理職にとって、部下育成とは手段であり、目的ではない」と述べました。
おさらいをしますと、管理職の役割とは以下の2点にまとめられます。
1.部署の目標を達成すること
2.目標を達成し続ける体制を整えること
この2つを果たすことが、管理職の役割であり、その具体的な手段として「部下育成」という仕事が発生する場合がある、ということです。部下育成は目的ではなく、目的達成のための管理職の仕事なのです。
成長とは単に「出来なかったことが出来るようになる」「解らなかったことが解るようになる」といった、表面的なものではありません。他者の心の機微を察する、といった人間としての成長も含まれます。
こうした成長をもたらす一番の要因とは何でしょうか?
良質な経験
「徹夜してなんとか納期に間に合わせた経験」「中途半端な提案書でお客さまから怒鳴られた経験」などの成功・失敗を繰り返した「経験の蓄積」から、気がついたら成長をしていた、という感覚ではないでしょうか?
経験学習理論では、こうした「人を成長させる経験」のことを「良質な経験」と呼んでいます。
管理職が部下育成を考えるにあたっては、まず「良質な経験」をどうやって積ませるかを考えるべきでしょう。
しかし一方で、ある人にとっては良質な経験であっても、別の人にとっては良質ではない、ということがあります。同じ経験をしているのに、AさんとBさんとでは、成長に大きな違いが出る、といったことは良くあることです。
成長速度の違いは、個々人の持って生まれた才能によるものもあるでしょうが、多くの場合は「気質」にあると考えられます。つまり「いま、目の前の経験にどのような姿勢で臨むか」という点です。
部下育成
経験学習理論では、「良質な経験に出会うこと」×「いまの経験を良質なものにすること」の両方を通じて、人は大きく成長をしていくと考えられています。
経験学習理論を通じて、管理職が行うべき部下育成の姿を整理してみましょう。
1.その部下にとって、良質な経験を与えること=仕事を与える
2.その部下が、いま経験をしていることを良質化すること=部下に関わる
グローネス・コンサルティングでは、この2つを併せて「部下育成」と定義しています。
昨今、多くの管理職研修が「褒め方・叱り方」といった「関わり方」に偏っている傾向があります。
確かに、部下との関わりは大切ですが、部下育成全体を考えると、不十分と言えるでしょう。
部下育成研修では、まず「育成とは何か」から考え、仕事を与える/部下に関わるの両面をおさえることが重要なのです。
次回は、部下育成研修を更に掘り下げていきます。まずは「部下に仕事(良質な経験)を与える」ことについて、考えていきたいと思います。
株式会社グローネス・コンサルティング 代表取締役 為広雅夫