判明分報告・個人営業~報告書の読み解き方-26~
2014.12.26
「評点の話のついでに、評点が付かないケースについても話しておきましょう」と横田が話を続けた。
「判明分報告というやつですか?一度か二度、見たことがあります」
「それもありますが、評点が付かないケースというのは、大きく2つあります。ひとつは、TDBとして評点を行わない業種の調査。これらは未評点業種と呼んでいますが、金融業や公務など一部の業種では評点をせず、『信用程度』という形でご提供しています。もうひとつは、青山さんが言った判明分報告で、本来は評点をしたいのですが、取材の結果やむを得ず判明分報告となるケースです」
「判明分報告というのは、調査先が話をしなくてそうなってしまう、というものと考えてよいのですよね?」
「いや、判明分報告にも2種類あります。ひとつは青山さんが言うように、取材で十分な情報が集まらずに信用判断が困難な場合。もうひとつは、倒産している、あるいは所在がわからない、あるいは商売が稼働する前である、などの理由で、信用判断ができないという場合です」
「ああ、判明分かぁって、秋庭さんがぼやいているのを聞くことがあります」
「ええ、評点は信用調査の結論ですから、結論が出ない判明分報告というのは、お客さまの期待に沿えないものだと思っています。情報不足による判明分報告を減らすことは、常に私たちの課題です」
「判明分報告になった場合の与信判断は、どう考えればいいのでしょう・・・」
「内容にもよるので一概には言えませんが、情報不足で判明分報告になるケースは、調査先が情報を開示せず、周囲でも情報が集まらないケースです。私たちへの情報の開示はもちろん任意ですが、情報がないときは保守的な評価をする、情報のない会社に高い評価をしない、というのが審査の定石だと思います。私たちが通常評点を付ける場合も、決算書の内容の良し悪し以前に、決算書の開示がない場合に評価が上がらない仕組みを組み込んでいます」
「個人営業や特殊法人では、報告書のページや項目が一部異なってきます」
「個人営業というのは、個人事業主のことですね?」
「そうです。個人営業はかなりの数があります。商業登記はないので、『登記・役員・大株主』のページは作成されません。決算書についても、企業のようにB/SやP/Lを作ることがないので、個人事業者の税務申告、いわゆる青色申告の内容を取材して、これを『推定資産・負債状況』に反映して報告します」
「個人営業の資産・負債というのは、その人の持っている資産・負債すべてを含むのですか?」
「基本的にはそうです。もちろん把握しうる範囲に限られますが」
「ありがとうございます」と言った青山は、壁の時計を見遣った。
「今日もあっという間に5時になりましたね・・・今日もありがとうございました!」
「まだ財務諸表が残っていますが、それはまた次回ということで。これから上野に行ってきます」
「調査ですか?」と聞く青山に、「それは秘密です」と微笑んだ横田は、お辞儀をして颯爽と会議室を出て行った。青山が一瞬、頭の中で「江戸前なウルトラマン」を想像してしまうほど、颯爽とした退場であった。
判明分報告と留意点
しかし、一般には企業規模が小さくなるほどそうなる確率が高くなり、また業種によっても発生頻度が上がります。とくに飲食業など、個人相手の商売では、信用調査への理解がないことが調査のハードルになっており、一層認知度を上げる努力が必要だと考えています。判明分報告は、実は担当する調査員も情報網をあちこち探ることになるため、情報が開示された場合に比べて数倍の手間をかけており、生産側としての効率も良くありません。
判明分報告では、報告書の『業績』以降のページがなく、判明した内容を文章で記述した形で提供します。調査員にとっては自由度の高い記述となり、通常の報告書には書かないような現地の様子なども書きます。
なお、判明分報告となる場合は、事前にお客さまに了解をいただく形になります。その際、手がかりとなる情報を追加でいただくことにより、それを突破口として通常の報告書で報告できることがあります。判明分報告になる旨をお客さまに電話させていただく時点で、調査員は手を尽くした状態になっていますので、その際は可能な範囲で情報の提供にご協力をお願いします。
特殊な書式
また法人によっては、企業会計のような段階利益の概念がないものがあり、この場合は『業績』のページの業績特記事項欄に、「どの数字を当期純利益として表示したか」を注記することにしています。詳細を確認されたい場合があれば、お手数ですがお問い合わせください。
企業信用調査
https://www.tdb.co.jp/lineup/research/index.html
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