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  • 階層別教育研修を考える(部下育成編3)

2015.01.05

 「シリーズ:階層別教育研修を考える」、第九回は部下育成の続きとして、「部下への関わり方」を書きたいと思います。

1.コミュニケーション
 部下への関わり方、と聞くとすぐに「上司と部下のコミュニケーション」とお考えになる方もいると思いますが、ここではもう少し、厳密に考えます。
良い機会ですので、まず、コミュニケーションについて定義をしたいと思います。

定義:コミュニケーション
 ある事柄について、個々の間で情報が伝達され、その事柄について相互理解、共有がされている状態

 コミュニケーションとは、動詞ではありません。名詞です。目に見えるモノ・コト、あるいは概念を指す言葉です。
コミュニケーション能力とは上記の定義に従うと、

「ある事柄について、個々の間で相互理解、共有がされている状態」を形成するための、個人の活動の量と質

つまり、本来、上司と部下のコミュニケーションとは、上司部下の人間関係ということではなく、会議を通じての情報伝達や日々の業務報告など、
「部署および個人のパフォーマンス向上を実現する手段として、仕事を進める上で必要な情報の相互理解、共有がされた状態をつくること」となります。

 今回のコラムでは、広い意味では上記のような「上司と部下のコミュニケーション」に含まれますが、狭義における「部下の成長を促すための、上司からの働きかけ」として、個対個の「部下への関わり方」を考えたいと思います。

2.部下への関わり方

  上司が、一人の部下に関わる目的は、大まかに分けて4つが挙げられます。
1.部下の存在を承認し、部下の気持ちを前向きにさせる
2.部下の行動や成果を褒め、行動を強化・促進させる
3.部下の行動や成果を叱り(諭し)、行動是正の必要性に気づかせる
4.部下本人に考えさせ、経験学習を促す

この中において、もっとも重要なことは「1.部下の存在承認」です。

 人は認められれば、より頑張ろうという気持ちになるものです。期待されれば張りが出ます。能力が生かされれば心が満たされます。意見を取り入れてもらうと嬉しくなります。そして、参加させてもらえるということ自体が、協力的な気持ちにさせてくれます。
 逆に、無視されれば腹が立ち、声がかからないと淋しくなります。取り残されてしまうという不安感は心をいらだたせ、認めてもらいたいという気持ちを抵抗や反抗で表わすこともあるのです。

このように「自分は価値がある人間であることを証明したい」という一連の行動の源となっているものを総称して「存在証明」と呼びます。
管理職は、部下の存在証明を満たしてあげなければなりません。
「自分は君のことをしっかり観ているよ」というメッセージを送り続けることが大切です。 

3.存在承認

 具体的な行動例を挙げます。

例)部下から、あるお客様の動きについて報告が来た。
  しかしそれは、自分(上司)にとっては、既に知っている情報であった…
  
  上司:そんなことは、既に知っているよ…

忙しい管理職は、ともすると上段のように、部下を扱ってしまうのではないでしょうか?
部下は良かれと思って報告に来たのです。管理職は、部下のその気持ちを汲み取らなければなりません。

  上司:へぇ、それは知らなかったな。詳しく聞かせてくれないか?

こうした、日常の些細な「存在承認」が、信頼できる管理職、信頼出来ない管理職を別けるのです。部下はそれぞれに「私をこのように認めて欲しい」という思いがあります。「上司と部下の関わり」では、まず、部下個々人の「承認欲求」を察することがスタートになります。信頼関係が無い限り、上司がどのように褒めたり、叱ったりしても、部下のほうが受け入れないからです。

 管理職研修では、この「上司と部下との信頼関係」を最初に行っています。
ともすると、褒め方・叱り方といった「表面的スキル」が多い管理職研修の中で、存在承認の考え方は、受講者の皆さまにも受け入れやすく、好評を頂いています。

この「存在承認」はとても大切なことなので、次回も引き続き、考えていきます。


株式会社グローネス・コンサルティング 代表取締役 為広雅夫

 
 
 
 

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