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  • 調査会社の仕事 ~帰り道(後編)~

2015.03.06

[企業審査人シリーズvol.74]

打ち上げの帰り道が同じ青山と調査会社の横田は地下鉄を降り、同じ私鉄に乗り換えるために歩いている。
 「さっき営業の話をしましたけど、横田さんって営業もやるんですよね」と青山が聞いた。
 「そうです。ちゃんと目標数字も持っていますよ」
 「調査会社の営業って、調査報告書や帝国ニュースはわかるんですが、他には何を売っているんですか?僕らのように建材といった形があるものじゃないから、今ひとつイメージしづらいです」
 「それが、最近はサービスがいろいろ多くて、私もひとくちに説明できないくらいなんですよ。うちの社員は常にこれを持ってます」と横田は鞄から青い手帳のようなものを取り出した。右肩にTDBという文字が見える。
 「もともとは信用調査から始まっている会社で、調査のご依頼をいただいて、調査結果を依頼者に報告するというビジネスモデルでやっていますが、私たちの営業というのは、調査の場面で調査先の会社の経営課題に触れる中で、引き出しを広げてきた感じですね」
 「経営課題ですか・・・・幅広そうですね」と、青山は酔いもあってか茫洋とした顔つきをした。
 「そう、幅広いですよ。分かりやすいところで言えば、最近うちも焦げ付きが多いので調査を使いたい、という与信系の相談があります。これは調査でお手伝いができるわけですが、与信系といっても取引先の管理を体系的にできるようにしたい、ということで、弊社の企業コードを使っていただいて取引口座を一元管理していただくこともあります。リスクを定量的に管理したいということで、企業単位で取引高と評点を縦軸と横軸にして取引先をプロットするポートフォリオ図を提供したりもしています。最近はBIMAという取引先管理のソフトを提供して、そこでTDBのデータを適宜吸い上げながら管理をされているお客さまもいらっしゃいます。倒産予測値も、与信管理をより精緻に行えるようにと開発したサービスです」 
 「やっぱり私たちのような与信管理系の仕事が多いのですね?」
 「いや、営業系の話も多いですよ。顧客管理データベースを作るお手伝い、というのは与信管理ともつながりますが、新しい支店を作るので管轄エリアの企業リストがほしい、というお話は昔からあって、そういう場合はデータベースから条件に合う企業リストを提供しています。今はCOSMOS2などの企業概要データベースからだけでなく、調査報告書から特定の商材を扱う会社を文字検索で抽出することもできます」
 「なるほど。企業データを大量に持っているとなると、やはり調査会社ですものね」
 「昨年NHKで放送されましたが、東日本大震災の復興にビッグデータを活用するということで、当社の企業データベースを用いて企業の取引相関を日本地図にプロットし、復興のキーとなる企業や地域を分析するといった形でも活用されています。ほかにも調査会社ということで、各種のマーケティング調査をご依頼いただいていますし、民間企業だけでなく官公庁からも調査や企業誘致などの案件をいただいています」
 「そういう調査も、横田さんのような調査員の方がするのですか?」
 「いや、そういう案件は主に産業調査部門のスタッフが行います。私たちが情報収集をするケースもありますけどね。産業調査部門では、ホームページを作りたいというご依頼があれば作りますし、ISOやプライバシーマークなどの認証を取得したいという場合にはそのお手伝いもしています」
 「いやあ、私には調査会社の営業は難しそうですね。そんなに幅広いと、確かに手帳も必要ですね」
 「ええ。ただ、青山さんもいろんな建材の種類を覚えたでしょ。それと同じですよ。お客さまがほしいものを提供したいですから、それでどんどん増えてきた感じですね。そうそう、3月3日は創業115周年です」
 「いいなあ、お休みですか」と聞く青山に、「いやいや、仕事です」と横田が少し苦笑いをした。 

調査会社のサービス

 TDBといえば企業信用調査や倒産情報のプレスリリースをする会社だ、という認知をされていますが、そのサービスは時代と共に拡大をつづけてきました。企業信用調査と倒産情報のニュース配信は創業当時からの事業であり、今も売上の半分を占めるコアビジネスですが、1970年代に時代を見越して雇用調査といった個人調査事業を廃止し、他社に先駆けて企業情報をデータベース化し、COSMOSというデータベース商品の提供を始めてから、一気にビジネスが広がりました。
 COSMOSというデータベース自体、金融機関などの顧客管理ニーズに基づいて作られたものですが、これによりお客さまがほしい企業情報を必要なだけ提供することが可能になり、各種の分析や加工も可能になりました。
 1990年代からはインターネットの時代となり、磁気媒体などで提供されてきた企業データベースはオンラインベースで提供されるようになりました。そうした中で、1990年代後半からTDBではECサービスという電子認証事業も開始しました。
 これは電子入札などでその会社であることを証明する電子証明書を発行するサービスで、認証局を保有しています。これは企業信用調査で調査員が行う「現地に確かにその会社がある」というリアルな認証をECの世界で活用した、TDBらしいサービスと言えます。 

これからもお客さまのニーズとともに

 2000年代に入ってからは、インターネットベースのCOSMOSNETの内容充実を進めつつ、本業の企業信用調査においても、財務情報だけでなく調査員の定性的な判断を分析・応用した倒産予測値をリリースするなど、本業とその周辺でサービスを拡大してきました。
 企業データベースにおいても、重複がないTDB企業コードを顧客管理に採用されるお客さまが増え、金融機関のペイオフが導入された際は、顧客口座の「名寄せ」にも利用されました。
 これらのサービスはいずれも、日々全国の企業を訪問してお話を聞く調査員が、「こんなことができないか」というお問い合わせをいただく中で、生まれてきたものです。調査でただ情報をいただくだけではなく、それをサービスとして経営に活用いただけるように展開していくことが、TDBの役割だと考えています。
 1900年3月3日、まだ日本経済の勃興期、武士が商人に転じるなど混沌とした経済社会の中でTDBが調査業を創業しました。お客さまのニーズに鍛えていただいて、今年で115周年を迎えることができました。
 「こういう情報がないか?」だけでなく、「こういうことができないか?」というご相談をこれからもお寄せいただき、お客さまに役立つ高品質な商品・サービスの提供に努めてまいりますので、引き続きご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。
 
 

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