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  • 海外ビジネスを失敗させないためのヒント第4回(全6回)

2019.01.10

~第4回 海外でのヒヤリハット事例~

前回は中国での企業情報についてご紹介しました。海外では法制度が異なり企業再生の方法や倒産の予兆が日本と異なることもしばしばあります。第4回は海外ビジネスにおけるヒヤリハット事例についてご紹介します。

海外における倒産

日本での倒産というと任意整理と法的整理の二つに大きく分かれますが、海外では基本的に法の下で整理することになるため法的整理が主体です。法的整理では、再建型と清算型に分かれているのは海外も日本と同様と言えそうです。例えばアメリカでは再建型の民事再生法にあたるChapter 11と清算型のChapter 7があり、日本のニュースでも耳にします。最近の事例では、2017年9月にChapter 11を申請したトイザらスや2018年10月に申請したシアーズなどが身近な例でしょうか。日本と異なる点でいえば、アメリカには自治体の破たんを規定したChapter 9があり、2013年には同法の適用を申請したデトロイト市の破たんが話題になりました。

海外では企業がどのように倒産するのでしょうか。実際の事例として、アメリカで上場の化学品メーカーがChapter 11を申請したケースをご紹介します。
アメリカでは12月決算の企業が多く、2月上旬から中旬にかけて10-Kと呼ばれる年次報告書を提出する企業が大半の中で、当該企業は12月決算にも拘らず3月になっても年次報告書が提出されず、3月上旬には法的申請の準備をしているのではとの噂が流れていました。実際には債権者との調整などで決算報告をまとめるまでに時間を要していたようで、年次報告書が提出されたのは3月31日でした。この時点で法的申請を準備中との報道がされる状況にありました。結局、4月に入っても債権者との交渉がまとまらず、金利返済の目途が立たなかったため、4月半ばにChapter 11を申請するに至りました。

アメリカをはじめ海外の企業は前触れもなく急に倒産するという印象を持っている人もいますが、このケースから言えることは、法的申請をする2か月前には決算発表の遅れという倒産の予兆があったということです。
2か月前に倒産の予兆を察知できていれば、出荷を止める、回収を急ぐなど対策が取れたかもしれません。日本とは担保や抵当権の考え方、権利執行の方法が異なるため、海外における倒産時対応は容易ではありません。

海外ビジネスを失敗させないためには、ヒヤリハット事例を知り、事前に対策をしておくことが肝要です。相手が上場企業であっても、資本異動情報や法的申請の噂などの情報を入手し、変化に気づけるようモニタリングしていくことは有効と言えるのではないでしょうか。

海外の怪しい企業の動き

海外では日本企業は概して高品質なものを作る信頼性の高い企業、取引をまじめに行うといった印象を持たれています。そのためか、日本企業を装って詐欺行為を働こうとする事象も見られます。
日本企業に寄せられる海外の詐欺事例は公的機関が発表していますが、海外には日本企業のWebサイトを制作し、日本からの貿易を想起させる勧誘をするといった手口も存在します。
具体的な手口として、中古車販売をしているように装った日本企業の偽サイトを制作し、メールで日本製の中古車輸出を持ちかけるといったものがありました。取引を持ちかけられたのはパキスタンの人でした。

海外では物理的な課題からWebを通じたビジネスが一般的に行われていますので、健全な商取引に紛れて日本企業をターゲットに詐欺行為を働こうとする動きもしばしば見られます。そのような海外企業から問い合わせや引き合いが来た場合には、相手がどの国でどのようなビジネスをしている企業なのか、その国で実際に存在する企業なのかは確認する必要があるでしょう。

取引先管理方法の紹介

これまでに紹介したような事例に遭遇しないためには、海外の大企業であっても倒産の予兆を見逃さないようにモニタリングする、信頼性が疑われる企業からの問い合わせに対しては、問い合わせの背景やその企業の実在性を確認するなどの対策をしましょう。

近年、海外企業情報の収集・提供方法も進化しており、海外企業データベースを用いたモニタリングや海外取引先の管理を行うことも以前に比べ容易になってきています。

次回は海外取引先管理について具体的な取組事例をご紹介します。

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 執筆:営業企画部 マーケティング課 岡田 明

※本文は個人見解を含むものであり、会社としての見解を示したものではありません。法律の改正等により記載が事実と異なる可能性がありますこと、予めお含みおきください。

バックナンバー

第1回 拡がるコーポレート・ガバナンスの責任範囲
第2回 日本と欧米での法律・商習慣の違い
第3回 “いま”の中国の企業情報事情
第4回 海外でのヒヤリハット事例<表示中のコラム>
第5回 日本からできる海外取引先管理
第6回 マスタ整備の重要性

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