海外ビジネスを失敗させないためのヒント第6回(最終回)
2019.02.07
前回は、海外企業の取引先管理の事例をご紹介しました。最終回は海外企業の取引先管理に必要なマスタ*整備の重要性と最近の取引先管理におけるトレンドについてご紹介します。
*マスタ:マスタデータの略 ここでは、顧客や仕入先など取引先の情報を集約したデータベースのことを指します。
なぜマスタ整備が重要なのか
取引先マスタが整備できれば、基幹業務システムをはじめとしたシステムやアプリケーションとの連携ができるようにもなります。実際に帝国データバンクには、基幹業務システムとの連携を見越して国内外の取引先データ整備に関するマッチングや名寄せ、またその体制作りについてのご相談が増えてきています。
データを活用したマスタ整備の事例
取引先データに外部企業コードを紐づけ、国内外の企業情報(系列情報を含めた会社概要と財務情報)を付与し、自社で有するクレジットリスクをグループ単位で把握し、マネジメントできる体制を構築し与信管理・債権管理を高度化させました。このプロジェクトでは、自社の取引先マスタの整備が大きな課題でしたが、マッチングロジックや頻度・タイミングなどの運用ルールを定め、仕組みを構築することができました。
■総合商社C社
業種別での収益やリスク分析などのビジネス分析を実施するため、プラットフォーム構築プロジェクトを推進する中で取引先マスタの整備に取り組んでおり、既存・新規取引先に対するマッチングを実施しています。
■グローバル電機メーカーD社
取引先データを整備し、親会社や頂点企業などの系列情報を活用して、取引先グループ単位での債権・債務を併せて集約管理する仕組みを構築したことで、経営戦略を練るための基礎資料にも応用しています。
いずれのお客さまにも共通しているのは、まずはデータ活用のインフラとなる取引先マスタの整備にプロジェクトを組織して取り組まれたということです。マスタ整備のプロジェクトで共通する課題は、グループ企業であっても企業によって取引先データの持ち方が異なり、バラバラに入力されたデータや表記ゆれが存在するために、容易に整備ができないことです。帝国データバンクが支援する場合、データを研磨(≒クレンジング)したうえでマッチングし、重複データを名寄せして、国内外取引先のマスタ整備をお手伝いします。
マスタ整備に必須のグローバル企業データベース
・全世界約3億件の企業情報を収録するグローバル企業データベースorbis
海外取引先管理におけるトレンド
大手電機メーカーが米国の連邦腐敗行為防止法(FCPA*)に違反したとして多額の課徴金を受けた例をはじめ、海外の法令が域外適用され制裁を受けるケースが実際に出ていることも影響していると考えられます。
広義のコーポレート・ガバナンスの強化には取引先管理体制の強化も含まれ、最近では上場企業を中心に取引先のコンプライアンスチェックを強化することが求められてきています。2018年から日本企業でも取引先マスタを整備し、コンプライアンスチェック情報を加えて取引先管理体制を構築したいお問い合わせが増えており、新たな潮流となりつつあります。コンプライアンス違反事例では対策の有無が罰則の重篤度を左右するため、海外ビジネスのリスクマネジメントに必要な対策を取られることをお勧めします。
これまで1回から6回まで海外取引先管理をテーマにお話しをしてきましたが、日本にいながらも海外取引先管理をできることが少しでもご理解いただけたら嬉しいです。
TDBカレッジでは「ビジネスパーソンのデータリテラシーを高める」をコンセプトに情報発信を続けてまいりますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。
⇒アメリカ合衆国の連邦法で、主には外国公務員に対する賄賂の支払いを禁止、証券取引法に基づく会計の透明性を要求する規定として知られています。
関連資料:グローバル企業に求められるコーポレートガバナンス
なお、今回ご紹介したサービスは以下のリンクからご確認いただけます。
・グローバル企業データベースorbis
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バックナンバー
第2回 日本と欧米での法律・商習慣の違い
第3回 “いま”の中国の企業情報事情
第4回 海外でのヒヤリハット事例
第5回 日本からできる海外取引先管理
第6回 マスタ整備の重要性<表示中のコラム>