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  • 地方の百貨店は暗雲低迷 ― 2019年は全国で10店舗が閉店

2019.07.05

~Yahoo!ニュース掲載~

大手百貨店が地方から次々と撤退し、閉店ラッシュが止まらない。インターネットによる通信販売が主流となりつつあることや、アウトレットなどの大型ショッピングモールや家電量販店、ファストファッションの台頭などが起因して、百貨店は顧客を失いつつある。特に地方では都市部と比べてインバウンドによる「爆買い」効果も薄いほか、若年層を中心に高級感の強い百貨店で買い物をすることに必要性を感じられない顧客も増えたようだ。

かつての百貨店は、高級ブランドの衣料品や化粧品、高価なジュエリー、最新のものが何でも揃う街のシンボル的存在だったはず。現在は人生の節目や晴れの日の贈答品などを百貨店で購入するという行事も以前より重視されなくなり、百貨店が特別な場所ではなくなってきている。百貨店はどのような変遷を経験し、また令和の時代をどう歩んでいくのだろうか。帝国データバンクの企業概要データベース「COSMOS2」(147万社収録)に収録されているデータと日本百貨店協会の公開情報から読み解く。

総売上高は4期連続の減収

2019年6月現在、COSMOS2に収録されている百貨店経営を主業とする企業は90社。この90社の2017年度の総売上高は6兆1927億円であり、前年比約0.3%減。2014年度から2017年度までは4期連続の減収であった。日本百貨店協会によると、総売上高はピークに達した1991年から26年間を通して減少傾向にある。

地区別売上高を日本百貨店協会のデータで見ると、2017年は前年比で北海道エリア6.0%減、東北エリア4.1%減などとなり、地方の売り上げは軒並み減少が続く。都市部では大阪の6.6%増を筆頭に札幌3.5%増、福岡2.5%増、仙台0.6%増、東京0.5%増、横浜0.4%増と伸びている。富裕層が多く、インバウンド需要が見込まれる大都市中心部を除いた地方百貨店の厳しい現状が伺える。

商品別売上高では、主力商品である衣料品の販売不振が顕著だ。2017年、衣料品の売り上げは前年比2.8%減となった。2004年に約3兆円あった衣料品売上高は、2017年には約1.8兆円となり、13年間で約40%減少した。また、家電製品は前年比12.7%、家具が5.8%、婦人服・洋品が2.8%の減少となる一方で、インバウンドの顧客が好む化粧品が17.1%増と高い伸びを示した。富裕層向けの美術・宝飾・貴金属も3.6%増と好調だった。

倒産件数は低水準も、閉店や事業縮小が相次ぐ

百貨店表
大手百貨店・そごうグループはかつて売り上げ日本一まで上り詰めたが、 2000年に経営破綻した。(株)そごうが抱えた負債は6891億円で、平成に発生した倒産では13番目の大型倒産となった。また、百貨店の倒産は2000年当時30件であったが、2013年以降は発生しても1件以下と低水準で推移している。

倒産件数は少ないものの、地方百貨店の閉店が相次いでいる。(株)三越伊勢丹は伊勢丹府中店と伊勢丹相模原店を9月末で、また、山形県の(株)大沼は米沢店を8月15日での閉店を発表するなど、2019年に閉店(予定も含む)する百貨店は約10店舗にも及ぶ。そのほか、(株)セブン&アイ・ホールディングス傘下の関西にあるそごう神戸店(神戸市)などの3店舗を、阪急・阪神百貨店を運営するエイチ・ツー・オーリテイリング(株)に譲渡するなどして店舗存続を図るケースや、売り場面積を縮小する百貨店も少なくない。

地方の人口減少は深刻である。総務省統計局のデータによると、2017年に人口が対前年比で増加したのは東京、千葉、埼玉、神奈川、愛知、福岡、沖縄の7都県。減少はというと、5%以上減少しているのは北海道のほか24県にものぼり、なかでも青森、岩手、秋田、山形、高知の5県は10%以上も減少した。人口減少によって消費者向け産業の撤退が進んでしまうと生活に必要な商品やサービスの入手が困難になり、ますます日々の生活が不便になるため人々は都市部へ流出する。その悪循環にもまれ、今後も人口減少エリアにおける百貨店は苦戦を強いられることが予想される。

地方と都市部、それぞれの百貨店は新時代をどう歩む

地方百貨店はインバウンド需要が多く見込めないうえに、高級ブランドの衣料品や化粧品などを取り揃える従来型のビジネスを続けていても集客効果は薄い。生き残るためには店舗改革が急務である。地方百貨店最大のライバルである駅ビルに入る衣料品店や飲食店を誘致したり、イベントや催事の実施、公共性の高いレジャー施設を導入したりするなど、従来の百貨店イメージから脱する必要がある。九州地方に住む50代女性は、「昔の百貨店といえば、屋上に遊具があったり動物が飼育されていたり、魅力的なイベントも多くて行けば楽しい場所だった。最近はモノより思い出や経験にお金をかけたいので、百貨店が癒しやくつろぎを感じられる場所になれば、もっと行きたいと思う」と語る。

都市部の百貨店では、2020年東京五輪に向けて訪日外国人客がいっそう増加すると予想されるため、引き続きインバウンド効果が期待できる。国内個人消費については、2019年10月に予定されている消費税率引き上げ前までは高額商品を中心に駆け込み需要も見込まれる。しかし、消費増税後の反動減や節約志向の高まり、東京五輪後の落ち込みなど今後の懸念材料は尽きない。一時的な需要に身を任せるだけでなく、インバウンド対策の強化とコスト適正化を加速させる必要がある。企業によってはスマホ決済の導入やSNSでの積極的な情報発信などの取り組みを進める店舗もあり、各社独自の取り組みが今後加速するだろう。

令和の時代をどう生き残っていくか。時代の変遷に応じて姿を変えつつ、これまでにない発想での革新を続け、未来の百貨店がまた街のシンボルとして輝いていることを期待したい。
本記事は2019/6/28にYahoo!ニュースに掲載されたものです。

過去のYahoo!ニュースでのリリース記事はこちらからご確認いただけます。
https://news.yahoo.co.jp/media/teikokudb

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