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  • 事業継続の準備はできていますか? ~景気のミカタ~

2019.07.26

テキスト
進まない事業継続計画(BCP)の策定状況

企業は、自然災害や感染症の流行、情報セキュリティ事故などの緊急事態が生じた際に、事業資産への影響を最小限にとどめ、事業の継続や早期復旧をすることが求められています。そのため、さまざまなリスクに対する企業活動への影響を想定し、平常時から対応措置などを準備しておくことが、事業の継続のみならず企業価値の維持・向上の観点からも重要となります。
図表1 事業継続計画(BCP)の策定状況
しかし、帝国データバンクが実施した調査によると、自社における事業継続計画(BCP)をすでに策定している企業は15.0%にとどまっていました。また、BCPを『策定意向あり』(「策定している」「現在、策定中」「策定を検討している」の合計)とした企業でも45.5%と半数に満たず、BCPの策定が依然として進んでいない実態が浮き彫りとなっています(図表1)。
図表2 事業継続計画(BCP)の策定意向 ~都道府県別~
他方、都道府県別にBCPの策定意向をみると、「高知県」(72.5%)が最も高く、7割を超えています。さらに、「滋賀県」(58.4%)、「和歌山県」(55.6%)、「岐阜県」(55.2%)、「奈良県」「鳥取県」(いずれも53.3%)が続きます。今後、大地震が想定される地域に所在する企業で策定意向が高くなる傾向を示しており、企業の自然災害に対する強い危機感がうかがえます(図表2)。

実際、企業からは、「BCPの重要性を感じてはいるが、時間や人材が確保できない」(塗装工事)や「BCP自体、勉強不足のためによくわかっていない」(貸家)など、重要性を理解しつつも策定に必要な時間や人材、知識不足などを指摘する意見が聞かれました。また、「南海トラフ地震の発生時には、大きな被害が予想されるので、その時に迅速に対応できるように模擬訓練をできるようにしたい」(冷暖房設備工事)といった、南海トラフ地震を想定してBCPの策定に取り組もうとする姿勢もうかがえます。

景気状況とBCP策定には関係がある

図表3 景況感とBCP策定意向の関係
こうしたなか、企業の景況感とBCPの策定意向との間に、一定の関係性も見出されます。現在の景況感別にBCPの策定意向をみると、現在の景気が「非常に良い」企業では62.1%が『策定意向あり』と回答している一方、景気が「非常に悪い」とする企業では22.4%にとどまっており、そこには39.7ポイントもの開きがあります(図表3)。
総じて、景況感が良い企業ほどBCPを策定する意欲があり、景況感が悪くなるにつれて減少していく傾向が表れています。

BCPを策定していない理由として、景況感が悪くなるほど策定する「費用を確保できない」ことが挙げられます。一方で、策定する人材や時間、スキル・ノウハウの不足は、比較的景況感に左右されない傾向もみられます。やはり、景気が良くなければBCPを策定するコスト負担を気にせざるを得ないことが示唆されていると言えるのではないでしょうか。

BCP策定に向けて社会全体の取り組みが重要に

BCP策定による効果は、特に従業員のリスクに対する意識の向上があげられ、そのほかにも業務の定型化や効率化などの業務改善に一定の効果があることが明らかになりました。企業からは「BCP策定企業として、大手商社からもっとそのことを強調すべきとアドバイスされ、商圏拡大の一要因になっている」(建築材料卸売)といった声もあり、企業価値向上につながることも前向きに捉える要素となるでしょう。

しかし、BCPを策定していない企業も半数近く存在しています。BCPの策定が進まない要因として、策定に必要なノウハウなどが足りないことや、物理的に人材や時間が不足していることなどがあげられ、BCP策定の大きな障害となっています。

BCPの策定は、自社における従業員のリスクに対する意識向上や業務改善に効果があるものの、ノウハウや人手の不足など障壁はまだまだ高いのが現状です。また、企業の景況感とBCP策定状況には一定の関係性も見受けられます。政府や行政機関を含め、社会全体として、企業のBCP策定推進に向けた一層の取組み支援を行う必要があるでしょう。

執筆:情報統括部 産業情報分析課 窪田 剛士

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