「有事の円買い」で進む円高の行方は? ~景気のミカタ~
2019.08.19
以前は「有事」となれば、ドル買いが進みましたが、昨今はどうなっているのでしょうか。今回は「有事の円買い」について取り上げます。
かつては「有事」となればドル買いがセオリーでしたが、いまや「有事の円買い」がすっかり定番化したかのようです。
ショック発生時の円高要因
もともと外国為替レートは、中長期的には実質金利差や貨幣量比率など国際マクロ経済理論(国際金融論)を用いることである程度予測できる場合もあります。しかし、短期的な動きでは、ほとんどランダム・ウォーク(金融商品の値動きには規則性がなく、過去の変動とは一切関係ないとする仮説)になっており、予測することは不可能に近いと言えるでしょう。
あえて、上記のショック時における円高を説明するならば、[1]と[2]は理論通りの動きだったと考えられます。リーマン・ショックが起こった時、米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(BOE)などでは、貨幣供給を急激に増加させた一方、日本はゆっくりとした増加にとどまったことで(図表3)、円は他国通貨と比較して相対的に希少性が高まり、急速に円高が進むこととなりました。つまり、国際マクロ経済学におけるマネタリーアプローチで説明可能でした。
国内外の予想金利差が招いた円高
いわゆる、マンデル・フレミング効果と呼ばれるもので、この現象は、1995年の阪神・淡路大震災でも確認されていました。
「安全資産」としての円買い
ここのところ緊迫度を増している米中貿易摩擦においても、為替レートは同様の動きを示す可能性があります。しかし、米中貿易摩擦が直接「日本の有事」になれば、「有事の円買い」はあっという間に消えてしまうかもしれません。
執筆:情報統括部 産業情報分析課 窪田 剛士
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