ラグビーワールドカップ ジャパンを支える日本伝統の匠の技と最先端のテクノロジー
2019.09.27
ジャパンを支える日本伝統の匠の技と最先端のテクノロジー
カンタベリーオブニュージーランドジャパン(東京都新宿区)
ラグビーワールドカップが開幕した。池井戸潤氏の原作ドラマ『ノーサイド・ゲーム』がTBS系列で放映されるなど、マスコミ各社も初のアジア地区開催、自国開催の大会を盛り上げる。母国開催の今大会、初の8強/決勝トーナメント進出を掲げる日本代表には、最先端のテクノロジーを活用して
データ分析を行うなど、各方面から支えるスペシャリストの存在がある。
ジャージーを提供するオフィシャルサプライヤーは、3匹のキウイのロゴでラグビーファンにお馴染み、(株)カンタベリーオブニュージーランドジャパン。「Supporters ラグビーワールドカップ番外編」は、ジャージーの開発秘話や新機能について、代表の森本邦夫氏に聞いた。(東京支社情報部 ※取材は開幕前に行った)
新ジャージーは選手とコミュニケーションを取りながら開発に取り組み、事前に要望を取り入れながら開発してきました。日本の素材メーカー、ニッティングメーカーと生地の開発を行い、親会社である(株)ゴールドウイン(東証1部)の研究施設の全面協力も得て、選手の動きを邪魔しない縫製やそれぞれの体格に合わせたフィット感を実現させました。着心地には選手にも満足してもらっています。
―今大会は、ポジションに合わせて3種類のジャージーを用意しています。画期的な取り組みですね
前回の2015年大会の際はフォワード・バックスの2種類を用意しましたが、今回は3種類、生地の素材も機能も更に進化させています。ラグビーはポジションごとに役割も体格も異なりますので、フロントロウ(背番号1~3)、セカンドロウ・バックロウ(同4~8)、バックス(同9~15)用に、シルエットや素材・機能面を計算したうえで作り込みました。例えば、軽快な走りが求められるバックスのジャージーの素材は、対戦相手からつかまれにくい生地やシルエットを採用していますが、スクラムを最前列で組むフロントロウの肩の部分はすべらない、しっとりした感触の生地を使用しました。体格の大きい選手の胸部を圧迫しないよう立体的なシルエットにするなど、ポジション別にフィット性を向上させています。
ほかの国は、ジャージーの機能面までは日本ほど重視していないようです。デザイン面では、日本代表の伝統である赤と白の基本のベースがありますので、一目見て日本代表だと分かる基本のデザインは変えずに、一方でこれまでといかに変化をつけるか、ということには頭を悩ませました。
―改めて、デザインの特長を教えてください
兜の前立てをイメージして赤白のストライプに角度をつけたのは、正面からは体格を大きく見せ、後ろからは、追いかけられた時に遠く離れているように見える錯視効果も狙っています。赤と白に加えて、今回はカクテル光線を浴びた時に輝く、富士山のご来光をイメージしたゴールドを利かせたり、吉祥文様を生地にあしらったり、日本ならではのデザインに仕上げています。
―技術・デザインともに、日本の技術の結晶ともいえるジャージーですね。今大会は日本での開催ですから、気合いも一段と大きかったのでしょうか
私どもはラグビー専業のメーカーとして長年の蓄積があるうえ、1997年から日本代表のサプライヤーを務めさせていただいております。今大会に向けては、前回2015年のワールドカップが始まる前から引き続きサプライヤーになることが決まっていましたので、その頃より準備に動いており、選手とじっくりコミュニケーションを取りながら要望を取り入れて開発にあたることができました。生地そのものだけではなく、プリント技術や色の出し方、縫製もワールドカップのたびに進化しています。
―ある年代以上の人には、ラグビージャージーというと、綿素材で襟付きというイメージを持つ人もいるかもしれませんが、素材はもはや綿ではなく、今や襟もありませんね
襟は対戦相手に掴まれやすいので、なるべく小さく、デザインで工夫をするのが近年のトレンドになっていました。現在は、各国でも襟がついていないデザインを採用するのが主流になっています。
また、昔のジャージーはゆったりしているイメージでしたが、今のジャージーは体のラインに沿うシルエットになっているので、1人で脱ぎ着することが困難です。もちろん、観客向けのレプリカジャージーはゆったりとしたシルエットで着用しやすいものになっています。
7月4日に新デザインを発表し、10日より一般販売をスタートしましたが、オンラインストアでは10時半の販売開始直後から一気に私たちの想像していた以上のアクセスがあり、サーバーに負荷がかかってしまうほどでした。お客さまにご迷惑をかけてしまい申し訳なく、反省点となりました。実店舗でも、青山の店舗では開店前の7時ごろより100人以上が並んでくださいました。
また今回は、オルタネイト(セカンド)のレプリカジャージーの売れ行きも想定以上の伸びがあります。8月に大阪で行われたトンガとのテストマッチで代表チームがオルタネイト(セカンド)を着用したことで、一時は品薄状態となりました。今期の年商は前期比で150%を目標に掲げていますが、達成を見込んでいます。訪日外国人がお土産として買って帰ることも想定されますので、桜のエンブレムや富士山、兜、吉祥文様など日本文化を取り入れたジャージーの魅力をお伝えするため、英語版の案内も用意しています。
―好評だったテレビドラマ『ノーサイド・ゲーム』でも衣装を提供されました。大会の「トーナメントサプライヤー」として、関連商品も取り揃えていますね
ボランティアスタッフ(ワークフォース)向けに、半袖・長袖ポロシャツ、パンツ、ジャケット、キャップ、バックパック、ウォーターボトルとボトルホルダーの8点を1万3000セット提供させていただきました。ポロシャツはMサイズでパンツはSサイズなど、サイズを一律の組み合わせではなく、さまざまな体型の人がぴったり着られるように細やかな気配りをしました。こうした取り組みは、日本ならではかもしれません。
ボランティアスタッフ、レフリー、競技場で控えるメディカルスタッフの衣装も当社が携わることができました。9月20日の開幕戦の相手、ロシアもカンタベリー製のジャージーを着用しています。スタジアムに来る観客の多くもレプリカジャージーを着用してくださるでしょうから、スタジアム全体がカンタベリーで埋め尽くされる光景が見られそうで、とても楽しみです。
前回のワールドカップは南アフリカから金星をとりましたが、今大会の日本代表はもっとやってくれると思います。前回の大会後、国際リーグのスーパーラグビーにサンウルブズとして4シーズン参加し、トップレベルのチームと多く戦ったことは大きな財産となっているようです。選手は確実にレベルアップしていると感じます。
―最後に、読者に向けてメッセージをお願いします
ラグビーは企業経営に通じるところがあるスポーツです。戦術・戦略などのほか、トライは1人の力ではなく、チーム皆で取りに行くものという教育的な観点からも参考になることが多い。ゲーム後のアフターマッチファンクションの場では、選手が敵味方関係なく一緒にお酒を飲む。それも、握手する右手を冷やさず、常にあけておくために左手でビールグラスを持つ習慣があります。相手の立場に立った素晴らしい習慣も見習いたいものです。
前回、現地で観戦した際には、「ノーサイド」の精神を観客側からも体感しました。ゲームが終わると対戦相手の国同士で「ナイスゲーム」と言い合ったり、ハイタッチをしたり。こうした光景が日本でも見られるのではないかと楽しみにしています。企業経営や人材育成に取り入れられそうな点も参考にしつつ、皆で盛り上がっていければと思います。
―本日はありがとうございました
ラグビーワールドカップは9月20日から11月2日まで開催。日本は予選プールAでロシア(20日)、アイルランド(28日)、サモア(10月5日)、スコットランド(13日)と対戦し、プール上位2チーム以内、初のベスト8進出を狙う
■TDB企業コード:984936659
■法人番号:2010601027819
■所在地 東京都新宿区岩戸町4
■資本金 9800万円
■代表 森本邦夫氏
■URL https://www.goldwin.co.jp/canterbury/