本当に個人消費の実態は捉えられるのか? ~景気のミカタ~
2019.11.22
今回の景気のミカタでは、消費税率引き上げで景況感が落ち込んだなかで、個人消費を迅速に捉える指標の開発について焦点をあててみました。
消費税率引き上げの影響、企業の景況感を下押し
帝国データバンクが2019年10月に実施したTDB景気動向調査でも、景況感の落ち込みがみられました(図表1)。前回の引き上げ時と比較すると、景況感の落ち込みは小幅になっています。しかし、アベノミクス効果や駆け込み需要で上昇傾向にあった前回に対して、今回は緩やかながらも景気が下振れ傾向にあったなかでのことから、今後の景気の行方が懸念されます。
小売業や個人向けサービスで顕著な落ち込みも
また、「飲食店」の景気DIは同6.3ポイント減となるなど、消費税率の引き上げを背景とした外食を控える動きに加えて、台風にともなう休業や営業時間の短縮が売り上げの落ち込みにつながっています。
特に、回答企業から寄せられる「消費税増税後に来店客が減った。軽減税率やポイント還元事業の混乱もみられる」(貴金属製品小売)や「消費税率引き上げにより売り上げが前年同月比で40%ダウンした」(肥料・飼料小売)、「消費税増税により外食が控えられている」(一般食堂)といった生の声は、実態を理解するうえで非常に貴重です。
いかに個人消費の実態を捉えるか
現状では個人消費に関して、速報性が高く、包括的に捉えられ、統計的な振れも小さく精度が高い調査統計は存在しません。世界に類を見ない消費統計である「家計調査」(総務省)は非常に有用であるものの、調査対象となっているサンプルの少なさや世帯構成の偏りなども指摘されており、個人消費の決定打となる統計はなかなか見つからない状況です。
GDP統計(確報)は、個人消費の動向を把握するうえで最も精度の高い統計ですが、GDP統計(確報)で利用されている基礎統計もサンプル調査であるため、あくまでも「真の個人消費」の近似値と言えるでしょう。ただし、GDP統計の確報値は、公表までに時間のかかる供給統計も利用しており、当該時期から1年程度、さらに精度の高い確々報値は2年程度遅れて公表されるため、速報性としてはやや苦しい面があります。
進む消費統計の開発、帝国データバンク「個人消費DI」も
今後の景気回復のカギは個人消費が握るといっても過言ではありません。経済の正確な現状把握は的確な政策に欠かせないだけでなく、新たなビジネスチャンスを発見する大きなヒントにもなりえます。消費関連統計のさらなる充実が望まれるところです。
執筆:情報統括部 産業情報分析課 窪田 剛士
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