急増するコンビニ店倒産「ドミナント戦略」に疲弊、倒産理由「同業店との競合」最多
2020.01.08
コンビニ店経営と労働環境問題に対する社会的な関心が高まっている。2019年2月に人手不足で営業時間の短縮を求めたことに端を発した、FC店のオーナーとコンビニ本部の対立。最近では時短営業や省人化などの対策が図られているものの、「利便性」を支え続けてきたコンビニが抱える諸問題がここに来て噴出している。
こうしたなか、コンビニ店の倒産が近年急増傾向にある。2019年(1~11月)におけるコンビニ店の倒産は40件。前年(24件)を既に大きく上回り、2000年以降で最多だった2017年(45件)のペースに次ぐ多さとなっている。倒産したコンビニ店の多くは、大手コンビニブランドのフランチャイズ(FC)加盟店。そうしたコンビニFC店で倒産が増加する背景には、近隣で相次ぐコンビニ店の出店が続いたことで、同業店同士での熾烈な顧客獲得競争があった。
相次ぐコンビニの開業で狭まる1店舗当たりの商圏 「同業店との競争激化」が倒産理由の最多に
一方で、各FC店の頭を悩ませているのは、同業店同士の競争による1店舗当たりの集客力低下だ。日本の総人口からコンビニ店数を割った、1店舗当たり商圏の単純人口平均は19年10月時点で約2260人。10年前(3070人)から約800人、2割強も減った。1店舗当たりの年間平均客数も、2019年は過去10年間で概ね最少となる見通しだ。近隣に同業店の開業が相次げば、当然店舗同士の競争が激化、客足減少に直結しやすい。小売業たるコンビニ店にとって、当初想定した客足を下回ることは経営の根幹を揺るがす事態となる。
実際に、同業他店の開業が近隣で相次いだことで利用客が減少、倒産に至ったコンビニ店は多い。大手コンビニのFC店事業を展開していた森田卓次郎商店(静岡)は、相次ぐ同業店の開店で競合が激化したことで利用客の減少に歯止めが掛からず、経営が破綻した。首都圏で複数店舗を展開していたコンビニ店でも、同業店の開業が近隣で相次ぎ利用客の獲得競争が激化。不採算店舗が続出したことで収益改善のメドが立たず、事業継続を断念した。
同業店との客足の奪い合いで疲弊したコンビニ店の倒産の多さは、全体に占める割合を見ても明らかだ。
2019年のコンビニ店の倒産のうち、「同業店との競争激化」を倒産の理由に挙げたケースは判明しただけで16件、全件(40件)の半数近くを占めている。この割合は直近5年間で最も高い水準となっているほか、倒産件数として過去最多となった17年より10ポイント以上も高い。店舗の極地集中による顧客の獲得競争激化により、コンビニ店の経営に疲弊の色が見え始めている。
止まらぬ人件費上昇に、経営破綻したコンビニ店も FC店の経営安定化に向け、大手は制度改革急ぐ
一方、リクルートジョブスの調査によれば、コンビニスタッフのアルバイト時給が5年間で約1割上昇するなど、賃金水準の上昇が続いている。増加する一方のアルバイト店員の人件費負担に耐え切れず、倒産したコンビニ店も少なくない。そのため、負担覚悟でも人手確保に動くべきか、判断に悩むFCオーナーは多いとみられている。
こうしたなか、コンビニ大手各社はFC店の経営支援に向け本格的に乗り出した。最大手のセブン‐イレブン・ジャパンは営業時間の柔軟化や店舗作業の効率化や省人化に注力。ファミリーマートは2020年2月から加盟店支援の一環として、新規加盟時に支払う基本費用を半減させると発表した。同年3月からは全国1万5千店を対象に、原則24時間とする営業時間の短縮案を容認する構えだ。ローソンはレジ無し実験店を開設、IT投資により省人化を推し進める方針を取る。加盟店の経営安定化がコンビニ産業の持続的成長に繋がるだけに、コンビニ大手もFC店での問題解決に向けた取り組みを急ピッチで行っている。
コンビニは今や社会インフラとして、生活基盤に欠かせない存在だ。それだけに、フランチャイザーとなるコンビニ本部とFC店、そして利用客というステークホルダー全員に、コンビニ店が置かれた厳しい現状への理解と、その改善に向けた継続的な努力が求められていると言える。
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