加熱する温浴ブーム でも収入高は伸び悩み 出店競争激化で集客力に差
2020.01.31
温浴大国、ニッポン。世界を見渡しても、これほど温浴を愛する国はなかなかないだろう。昔も今も温泉旅行が人気レジャーの一つであることは言うまでもなく、最近では都市部や郊外を問わず、真新しい温浴施設を見かける機会も増えた。日本人の温浴への思いはもはや浴場だけに留まらず、ヤマザキマリ氏の漫画が原作で、日本と古代ローマの温浴施設を舞台にした映画「テルマエ・ロマエ」が大ヒットを記録したことは、記憶にも新しい。
従前からの温浴愛に加え、最近はサウナが空前のブームに。爽快感やリラックス効果を求めてサウナに通い詰める「サウナ―」たちは、温浴と休憩を繰り返し「ととのう」境地へと向かう。 ちょっとしたブームに沸く温浴業界は、文字通り“アツイ業界”なのだろうか……?
出店攻勢強める温浴施設
近畿地区に総合温泉施設「水春」を展開する(株)ビーバーレコード(大阪市淀川区)は、2018年12月に京都府京田辺市において宿泊可能な店舗を出店。 首都圏を中心に「おふろの王様」を展開する東京建物リゾート(株)(東京都中央区)は、既存店舗のリニューアルを順次進めるとともに、新たに埼玉県和光市への新規出店を計画している。 温浴施設の出店ラッシュはまだまだ続きそうだ。
盛り上がりとは裏腹に収入高合計は伸び悩み ライバル店増加が原因か
(※各年度の収入高合計は、常磐興産(株)の観光事業における収入高を含む。また、2017年1月に持株会社制度に移行した極楽湯グループ は、2016年度までは現・(株)極楽湯ホールディングス、2017年度以降は(株)極楽湯の決算数値を用いて集計している)
ライバル店の動向を踏まえ、一部には柔軟に施設のスクラップアンドビルドを進める企業もみられる。出店競争が加速するなか、温浴施設運営各社はより多くの利用が見込める立地を虎視眈々と狙っているようだ。
“観光帰りのひとっ風呂”需要取り込む「駅前温泉」 地方部の温浴施設にとっては新たな脅威か
地方部の温浴施設のなかには、観光客の減少やアクセスの悪さなどから、以前ほど集客を見込めなくなったケースが散見される。まだ少数派ではあるものの、アクセスに優れた「駅前温泉」が増えれば、周辺の温浴施設にとっては脅威になりかねない。
“ライバル店との違い” 打ち出せるか
しかし、当然のことながら、人気になればなるほど施設内は混雑し、本来のリラクゼーション施設としての利用価値が薄れるというジレンマもある。”温浴好き”の筆者は地元の温浴施設にはあまり行かず、混雑を避けて市街地の外れにある施設を利用している。温浴が人気を集めるなか、「混雑しない温浴施設」は結構ありがたい存在だ。
温浴ブーム下で加熱する顧客獲得競争。その熱をうまく取り込めるかどうかは、各施設の工夫次第である。
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