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  • 2020年の国内景気はどうなる? ~景気のミカタ~

2020.02.20

日本経済を取り巻く環境はさまざまなショックが相次ぐ・・

今回の景気のミカタは、中国発の新型コロナウイルスによる肺炎(以下、新型肺炎)などのショックを踏まえ、緩やかな後退を続ける国内景気の先行きについて焦点をあてています。

2019年10~12月期の経済成長率は大幅マイナス、内需が低迷

図表1 実質GDP成長率の推移
2月17日に内閣府が発表した2019年10~12月期の国内総生産(GDP)1次速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比-1.6%(年率換算-6.3%)と大幅な減少となりました(図表1)。市場予想を大きく上回る落ち込みです。

実質GDPの6割近くを占める個人消費は、台風19号や暖冬など天候の影響もありましたが、やはり10月に実施された消費税率10%への引き上げが最大のマイナス要因になったと言えるでしょう。その結果、個人消費は同-2.9%(同-11.0%)と全体の成長率を1.6ポイント押し下げています。なかでも自動車や化粧品などがマイナスに寄与したようです。
また、物価変動の影響も含んだ、より生活実感に近い名目値でみると、名目個人消費は同-2.3%(同-9.0%)でその大きさがうかがえます。

さらに、企業の設備投資では、中国など海外経済の減速で製造業が落ち込んだなか、建設や生産用機械などの減少が下押し要因となり、同-3.7%(同-14.1%)と5四半期ぶりの大幅減少を記録しました。

外需はプラスでしたが、内訳をみると輸出の減少よりも輸入が大きく減少したことで、結果的にGDPを押し上げたことに過ぎず、決して芳しい状況ではありません。

悪化を続ける企業の景況感

図表2 景気DIの推移
帝国データバンクが毎月実施している景気動向調査においても、企業の景況感は4カ月連続で悪化を続けています(図表2)。1月調査では、記録的な暖冬で季節需要や農業の落ち込みが響いたほか、製造業の低迷が関連業種へと波及しました。さらに、月後半には中国発の新型肺炎が春節時期に世界的に拡大し、旅館・ホテルや輸出・生産関連などに影響が表れました。

企業から「暖冬や消費税率引き上げ後の需要低迷が顕著に出ている」(繊維製品製造)や「春節時期における中国発の新型肺炎の影響が多少あった」(喫茶店)などの声もあがっており、すでに企業活動のなかで直面している様子がうかがえます。

こうした生産活動の停滞がみられるなかで、設備稼働率の低下とともに在庫調整の動きが製造業や中小企業を中心に広がってきました。2019年5月頃には国内景気が後退局面に入っていたとみられるなかで、経済的および外部的なショックが相次いでいる状況です。

国内景気は緩やかな後退続く

今後の景気はどのように捉えれば良いでしょうか。
やはり海外経済の動向が最大のリスク要因と考えておくべきでしょう。特に、中国は新型肺炎の拡大にともない2020年の経済成長率が0.2~0.4ポイント程度低下すると見込まれ、経済減速が一段と鮮明化しそうです。そのため、中国からの訪日客減少が長引くことが懸念され、観光業や小売業などでインバウンド需要に悪影響が及ぶことは避けられません。また、米中貿易摩擦、イギリスのEU離脱後の展開などは懸念材料です。そのため、輸出は当面、弱めの動きが続きそうです。

輸出だけでなく、輸入への影響も注視する必要があります。繊維製品や食品など、輸入の減少がサプライチェーンを通じた国内の製造業や飲食店などの生産活動を抑制することも考えられます。

さらに、個人消費の先行きも不透明です。2020年6月に消費者ポイント還元事業の終了が予定されているなか、大型イベントの中止や外出手控えなど、消費動向は予断を許さない状況となりそうです。

他方で、世界的なITサイクルの好転や人手不足にともなう省力化需要、東京五輪、そして底堅い雇用・所得環境などは好材料となるでしょう。
図表3
TDBマクロ経済見通しによると、新型肺炎が2020年1~3月期と4~6月期の実質GDP成長率(年率換算)をそれぞれ0.6、0.4ポイント押し下げると見込んでいます。そのため、2019年度の実質GDP成長率はプラスを維持しますが、2020年度はわずかながらも6年ぶりのマイナスに転じると予測されます(図表3)。

日本経済を取り巻く環境にはさまざまなショックが相次いでいますが、企業が持つ“対応力”“成長力”の真価がいまこそ問われるのではないでしょうか。

執筆:情報統括部 産業情報分析課 窪田 剛士

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