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  • 非常時は“情報”が最大の武器となり防御となる ~景気のミカタ~

2020.04.16

非常時における的確な情報提供の重要性とは・・

今回の景気のミカタは、新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた取り組みがより効果を発揮するために的確な情報を伝えることの重要性について、焦点をあてています。

緊急事態宣言の発令、政府による対策が新たな段階に

図表1: 7都府県の休業要請時期
新型コロナウイルス感染症(COVID-19。以下、新型コロナウイルス)が世界的に猛威を振るっています。WHO(世界保健機関)がパンデミックを宣言、さらに加速していると表明したほか、政府は4月7日に7都府県を対象として新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき緊急事態宣言を発令しました。同法による発令で、都道府県知事は住民に外出の自粛を要請したり、事業者に施設の利用制限を求めたりする法的根拠が生まれます(図表1)。知事の要請により人の移動が減ると感染拡大のリスクとなる「密集」「密接」「密閉」の「3密」を防ぐことにつながると期待されます。政府による新型コロナウイルスへの対策が新たな段階に入ってきたと言えるでしょう。

また、法的根拠はありませんが、愛知県や岐阜県、三重県、石川県などでは独自に緊急事態宣言などを出しています。

過去最大規模の経済対策が効果を発揮するには

図表2: 緊急経済対策の概要
新型コロナウイルスの爆発的拡大を防止するための措置ですが、経済には甚大な影響を及ぼします。そのため、政府は事業規模108.2兆円、財政支出39.5兆円にのぼる過去最大規模の緊急経済対策※を閣議決定しました(図表2)。新型コロナウイルスに対する経済対策は未曽有の規模で実施されることになります 。

これは、先の緊急事態宣言とも関連しています。緊急事態宣言は非常に大きなインパクトを持つため、個人や企業などへの補償をともなう必要があり、両者はセットで行われるべきものであるからです。

しかしながら、気がかりな点もあります。これまでの対策等において、政府からの説明不足のために国民の不安払拭につながっていない可能性です。例えば、4月1日に発表された全世帯への布製マスク2枚配布に対する世論の反応です。政府が目的やねらいを丁寧に説明していれば、違った反応になり、より有益な議論が行われたのではないかと考えられます。

この政策の目的は、早朝から並んでマスクの購入を求める人びとの不安を和らげ、勤労者にも購入できるようにして、多くの人にマスクが行き渡るようにすることにあります。そのため、洗濯すれば何度も使える布製マスクの配布が発案されました。また、配布方法として、マイナンバーや徴税システムではなく郵便網を通じた配布としたのは、郵便局が空き家の状況を把握しており、無駄な配布を抑えるためでもあります。

さらに、世帯当たり2枚という内容から、子どもへの対応はどうなる、という批判もありました。実はこの批判への対応も同時に進められています。子ども達には、小中学校などを通じてマスクを配布する予定となっており、その方法は教科書の配布網を利用して行われます。教科書配布に際しては、どの学校に何人必要となるか網羅されていることが背景にあります。

※緊急経済対策には、「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」(2019年12月5日閣議決定)のうち今後効果が発現すると見込まれるもの、「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策」の第1弾(2020年2月13日)および第2弾(2020年3月10日)が含まれる

非常時においては、的確な“情報”が最大の武器であり防御となる

本来ならばこうした内容を踏まえた議論が重要となりますが、残念ながら政府の説明不足が混乱を招いている理由のひとつになっているのではないでしょうか。帝国データバンクが政府の経済対策について分かりやすく一覧表にまとめたところ※ 、多数の問い合わせが寄せられました。これらは多くの事業者・経営者に支援策に対する情報が行き渡っていない証左とも言えるでしょう。

緊急事態宣言、そして緊急経済対策においては、とにかくしっかりとした説明が求められます。政府や行政・自治体・医療機関・企業などは、今回の危機に際して懸命の努力を続けていることは確かです。そのため、政府にはこうした経済対策や支援策を多くの人に分かりやすく“伝える”ことが一段と重要になってきます。

現在のような非常時においては、的確な“情報”こそが新型コロナウイルスに打ち勝つ最大の武器であり防御となるはずです。


※帝国データバンク、「新型肺炎が日本経済に及ぼす影響(2)」、レビュー No.3、2020年3月9日(https://www.tdb-di.com/posts/2020/03/r2020030901.php

執筆:情報統括部 産業情報分析課 窪田 剛士

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