【ウェビナーレポート】海外報告書の読み方~中国編~
2020.07.27
■担当講師
プロダクトデザイン部 海外ソリューション課 加納 英莉子
弊社の調査によると、中国でビジネスを展開する日本企業は約3万社以上あるという結果が出ています。近年、中国に進出する日本企業は減少傾向にあるものの、依然として、中国は輸出先として最も割合が高い国です。実際に皆様からご依頼いただく海外調査の約半数は中国企業の信用調査です。それだけ、中国と取引しているお客さまが多いということもありますが、チャイナリスクという言葉があるように、中国との取引に特別なリスクを感じている方が多いということではないでしょうか。
また、今後は新型コロナウイルスの影響も考慮する必要があります。中国では2020年の1月から3月に、46万社が恒久的に営業を停止したという報道がありました。この中には、法的手続きを経た破産案件だけではなく、営業許可が取り消された企業や自主廃業なども含まれていますので、あくまで参考としての数値となります。しかし、こうした倒産の増加は始まりにすぎず、ピークはこれからになると推測されます。企業の活動が再開してきている今こそ、改めて調査で企業の状況確認をすることをお勧めします
中国の商習慣・日本との違い
中国では、全ての業種が許認可制です。契約時には最新の営業許可証の経営範囲を確認することが重要です。なぜなら、経営範囲を超えた取引や営業許可証を有しない法人との取引は、無効となる可能性があるためです。その企業の経営範囲は、信用調査報告書にも掲載されています。
また、中国企業は毎年1月1日から6月30日までに「企業信用情報公示システム」を通じて政府機関、工商局へ前年度の年度報告を送付する義務があるため、基本的な情報については、インターネットを通じて入手することができます。
取材方法の違い
中国は電話調査であり、販売先や仕入先、競合先の情報を聞き出すほか、依頼企業から頂いた情報が正しいかを確認しています。
図表2は、日本と中国の報告書の項目の違いをまとめたものです。中国の報告書には、日本では掲載される経営者の性格や詳細な経歴などは掲載されません。また、不動産登記についても、インタビューに基づき、主要な設備について掲載されるのみです。中国では不動産登記の閲覧が制限されており、調査会社でも取得することはできないためです。一方、中国では訴訟記録や信用記録などが掲載されます。信用記録は、調査先企業の支払い状況に関する情報です。
中国の調査報告書を見るポイント
1.総合評価
2.登記・ライセンス状況
3.不安要素
4.支払能力
1つ目は、総合的な評価です。長年付き合いのある会社だから、会社案内やホームページが立派だから、といった理由で安易に信用するのは危険です。第三者目線で、様々な要素を基にした総合的な評価を確かめることが重要です。
2つ目は、登記・ライセンス状況の確認です。登記を確認してみると、思っていた企業の実態とは異なることがあります。正式商号が把握しているものとは異なることもあります。他にも、事業内容や法定代表者などが知らされていた事実と異なることや、輸出入に必要なライセンスを持っていないといったケースもありますので、確認しましょう。
3つ目は、不安要素を抱えていないかの確認です。
4つ目は、支払い能力は十分かという点です。支払い能力については決算書を基に確認するとよいでしょう。
総合的な評価
次に総合評価コメントを確認し、企業の概要を把握します。この欄には対象企業の概要と財務分析が掲載されます。中国では日本よりも新設される企業の数が圧倒的に多く、新陳代謝が活発な状態です。そのため、業歴が5年程度でも業歴がやや長いとコメントされていることがあります。財務分析については債務超過となっている場合、最も警戒する必要があり、総合評価はCR7と最低評価になっているはずです。
登記・ライセンス状況
輸出入ライセンスについても確認し、貿易資格があることが把握できたら、次に確認するのは税関信用格付です。これは、税関が付与する3段階の格付けで、輸出入に関する関連規則の遵守や、税の徴収機関を含む関連行政機関からの業務違反の指摘有無などにより格付けされるものですので、信用判断の参考にしてください。
不安要素
なお、2020年4月から、この欄に「新型コロナウイルス感染症の影響」が記載されるようになりました。業界状況、地域状況について、影響が大きいか小さいかが記載されます。影響が大きい業界は、日本と同じく小売業や観光、飲食業界などです。地域状況は、その企業の営業住所に該当する地域の状況や、輸出入を行う国の状況、製品の販売エリアの状況を加味して評価しています。
続いて訴訟記録です。直近3年間の訴訟記録が見つかった場合に、その概要が掲載されます。「原告が銀行である」「賠償金が多額」「訴訟原因が支払遅延、契約破棄、労働紛争、贈収賄」になっている場合は、特に注意が必要です。
信用記録は、調査先企業の信用に関する重要な参考資料です。この項目には、調査先企業の支払い状況に関する情報が記載されます。これは、対象企業の仕入先から確認しており、「先方からの評価」項目にネガティブな内容があった場合は注意が必要です。
支払能力
まとめ
中国では新型コロナウイルスの影響もありましたが、経済活動が再開してきています。今後、中国企業からの問い合わせも増えてくることが予想されますので、その際は信用調査報告書を与信判断に役立ててください。
ウェビナーは30分という短い時間でしたが、スライドでポイントをまとめて説明し、開催後のアンケートでは90%以上の方から業務に役に立つ内容であったとの評価をいただきました。
■海外信用調査報告書
・中国報告書サンプル
(日本語版) https://www.tdb.co.jp/lineup/pdf/samp_china_jpn.pdf
(英語版) https://www.tdb.co.jp/lineup/pdf/samp_china_eng.pdf
・海外信用調査報告書の詳細
https://www.tdb.co.jp/lineup/overseas/index.html