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  • 決算書セミナーQ&A ~初心者のための財務分析入門編~

2020.09.23

TDBカレッジでは様々なセミナーを定期的に開催しています。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、本年5月以降はウェブ配信に切り替えていますが、引き続き多くの方にご参加いただいています。
今回は、決算書の見方のセミナーのうち「初心者のための財務分析入門編」にご参加いただいた方からの質問と、講師の回答をご紹介します。なお、このセミナーは「決算書について読めるようになりたいが、どのようなものかわからない」という初心者の方を対象に、決算書の見方や財務分析の基礎を解説しています。
Q1.貸借対照表の各科目を月商比でチェックするとありましたが、その際、何かしら目安はあるのでしょうか。

A1.現金であれば月商分以上の確保が理想、有利子負債月商倍率は6カ月以内にとどめたい、といった通説はありますが、業界やビジネスモデルによって目安は変わってきます。そのため、まずは平均値を把握して比較したり、当該企業の過年度からの推移と比較したりするのが良いでしょう。

Q2.同業種の企業でも規模やビジネスモデルなど特徴は様々ですが、一企業の財務分析をしたい場合、どのような企業と比較すべきなのか、何か目安はあるのでしょうか?

A2.比較対象企業の選択にも様々な考え方がありますが、目安の一つとして「規模」「ビジネスモデル」「地域性」が軸になります。同業種でも規模が大きく違う企業と比較するより、近い年商規模の会社と比較した方が良いでしょう。また、副業で他の業種を営んでいる企業と比較すると、ビジネスモデルの違いにより分析がうまくいかないことがあります。そのため、同業種でも、より細かく見てビジネスモデルが近い企業が良いでしょう。また、東京の会社と地方の会社では環境やドメインが大きく異なることがありますので、同地域の企業が良いと思われます。
Q3.資金繰り状況はどの部分を見たらよいでしょうか?

A3.貸借対照表であれば、「売上債権回転期間+棚卸資産回転期間-仕入債務回転期間」から導き出される必要運転資金の規模を把握したいところです。業態や規模に照らして、必要運転資金(=商売を続ける上で必要となる資金)が大きすぎないかチェックしましょう。さらに、手元現預金残や借入のバランスはもちろん、より踏み込んでキャッシュフロー分析から資金の流れの実態を把握できると理想的です。

Q4.貸借対照表は決算期末時点以外では作成されないのでしょうか?

A4.貸借対照表の日付は、その会社の決算期に依存しますので、決算のタイミングで作成される貸借対照表は、期末時点の状態を表したものですが、企業が期中に何も作成していないわけではありません。例えば、3月末決算の企業であれば、4月の時点では試算表などの入手による確認が必要となります。一般的に、月次では試算表を作成して管理されるケースが多く、期末には合計残高試算表などを作成した後に期末処理をして、貸借対照表が作られていきます。取引先との信頼関係にもよりますが、試算表を開示してもらって期中の状況を把握できると理想的です。
Q5.自己資本比率が高く、かつ借入金も特段の懸念のない水準の企業でも倒産する事例がありました。そういった先の与信判断をする際はどのような点に着眼すれば宜しいでしょうか?

A5.自己資本比率が高くても、売上債権回転期間や棚卸資産回転期間が長期化し、資金繰りに悪影響を及ぼしていることがあります。もちろん、借入金や親会社等のグループ企業に対する貸付金のほか、キャッシュフローの状況など着眼すべきポイントはいろいろありますが、決算書だけでは一時点の財務情報、過去の経営成績となってしまいますので、それだけで与信判断することは大きなリスクを伴います。決算書だけでなく、定性情報も踏まえて企業の総合的な信用を評価した信用調査報告書もご利用ください。

Q6.個別注記表とは何でしょうか?決算書本表以外にも注意を払った方が良いでしょうか?

A6.個別注記表は、重要な会計方針に関する注記や貸借対照表・損益計算書に関連する注記等をまとめた決算書本表以外の帳票です。さらに、「損益上はまだ表面化していないが、係争中の案件について、損害賠償を負う可能性がある」といった内容が、偶発債務として注記に記載されるケースもありますので、入手された場合は目を通されることをお勧めします。個別注記表については、関連するカレッジコラム「企業審査人シリーズ vol.124:財務諸表の注記の話 ~見落とすべからず~」も、併せてご参照ください。
Q7.特別損失の例として挙げられた「減損損失」はレアケースとのことですが、計上される原因には何が考えられるのでしょうか?

A7.減損を計上するケースは、対象の資産グループが将来獲得できると見込まれるキャッシュの減少ですが、要因は様々です。投資したものに対し、予想以上に競合が出てきてしまったり、外部環境の変動により市場価値の落ち込みが激しく対応できない等のケースが想定されます。

Q8.新型コロナ感染拡大に伴う業績悪化により、業績見込みの不確実性が高くなってきていますが、今後、どのようなポイントに注意すべきでしょうか?

A8.新型コロナウイルスの影響は、なかなかはっきりとした見通しが立たないのが現実ですが、同じ業種であっても個別企業により落差が大きいケースがあります。テレワークを早期に実施するなど対策ができていたか否かや、もともと財務的な余裕があるか否かによって差が出てきています。コロナ関連をテーマとしたコラムも連載しておりますので、企業審査人シリーズのバックナンバーをご参照ください。
Q9.業界・業種別の状況について、TDBで目安になるようなデータはありますか?

A9.マクロ的な視点で、業界・業種のトレンドを把握したいというのであれば「業界天気図」がおすすめです。よりミクロな視点で、かつ財務的な資料集としては「全国企業財務諸表分析統計」があります。業種別の財務分析値の平均など、財務分析における「モノサシ」としてお役立ていただけると思います。
これまで配信していた初級編に加え、今後は「キャッシュフロー計算書の見方」セミナーも実施する予定です。「財務分析はひととおり理解しているが、キャッシュフロー計算書についてより深く学びたい」という方に向けて、事例研究を交えたキャッシュフロー計算書の構造や、企業の状態の良し悪しを解説します。

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