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  • 日本の技術貿易と知的財産権~景気のミカタ~

2021.02.19

人とモノの移動が制限されたなかで・・


今回の景気のミカタは、新型コロナウイルスによる影響で人とモノの移動が制限されたなか、海外取引において知的財産権の重要性が高まってきたことについて焦点をあてています。

日本の技術貿易は27年連続で黒字となるも・・・

図表1:技術貿易の推移
2020年12月15日に総務省が発表した「2020年(令和2年)科学技術研究調査」によると、2019年度の技術貿易収支額(輸出-輸入)は、3兆1,190億円(前年度比4.9%減)と3年ぶりに減少しました(図表1)。輸出入額では、受取額(技術輸出)は3兆6,626億円(同5.4%減)、支払額(技術輸入)は5,436億円(同8.0%減)で、いずれも2年連続の減少となりました。

技術貿易とは、諸外国との間における特許権、ノウハウの提供や技術指導など、技術の提供または受け入れなど、技術に関連する収支額のことを言います。技術貿易収支は、科学技術に関する研究活動の成果でもあることから、企業の技術力・産業競争力を把握する指標の1つになっています。

日本の技術貿易収支は1993年度以降27年連続して黒字が続いていますが、リーマン・ショック後に大きく減少した2009年度の1兆4,804億円と比較すると、2.1倍に拡大しています。国際的には、2015年時点で、日本は米国の469億ドルに次いで2番目に黒字額が多く(日本:277億ドル)、技術立国としてのポジションが表れていると言えます。

技術貿易額を相手国別にみると、受取額、支払額ともに米国が最も多く、受取額は米国が1兆3,812億円で受取額全体の37.7%を占めています。以下、中国4,615億円(12.6%)、タイ3,515億円(9.6%)、イギリス3,085億円(8.4%)が続いており、米英やアジアが中心です。

また、支払額では米国が3,940億円で支払額全体の72.5%となっていますが、続いてドイツ357億円(6.6%)、オランダ233億円(4.3%)、スイス213億円(4.0%)など、ヨーロッパ諸国が多くなっています。このように、日本の技術は主に北米を中心とした先進国が主要取引国であることが分かります。また、受取額ではアジアが38.5%を占めており、技術輸出は北米とアジアで8割を超えています。

他方、日本の技術貿易は海外の親会社・子会社との取引が多いことも特徴的です。とりわけ受取額では74.1%を占め、技術輸出の大半は親会社・子会社間での取引となっています(支払額は32.9%)。
さらに、産業別では、自動車を含む「輸送用機械器具製造業」が、技術輸出1兆9,537億円で、技術輸出全体の半分以上を占めています。

これらの結果をみると、日本の技術貿易は特定の地域、産業に偏っていることが分かります。そのため、技術輸出における産業別構成として「医薬品製造業」(構成比17.1%)や「情報通信機械器具製造業」(同6.7%)など、自動車に次ぐ分野への広がりを持たせることが課題であると言えるでしょう。

2020年のサービス収支は特許権や著作権等の使用料が最大の黒字に

図表2:知的財産権等使用料の収支の推移
2020年は新型コロナウイルスの影響によって人やモノの移動が大きく制限されました。特に海外との取引は大幅に制約されました。同年の経常収支(速報値)は17兆6,976億円の黒字でしたが、前年より2兆8,283億円減少(13.8%減)する結果となっています(財務省・日本銀行「国際収支統計」)。

 とりわけ、サービス収支は前年より3兆6,610億円減少し、3兆5,362億円の赤字となりました。最大の要因は、訪日外客数が87.1%減少するなどインバウンド需要がほぼ消滅し、旅行収支の黒字額が大幅に縮小したことにあります。

 こうしたなか、サービス収支のうち最大の黒字額となったのが、特許権や著作権等の使用料の収支を表す知的財産権等使用料でした。2020年の知的財産権等使用料は1兆6,059億円(前年より6,421億円減少)の黒字を維持していたのです(図表2)。

 今後、世界的にデジタル化が一段と進むなかで、知的財産権は日本の対外取引において重要な地位を占めることになると考えられます。そのため、政府だけでなく、企業の海外戦略においても2020年に得た経験を生かすことが重要となるでしょう。

執筆:情報統括部 産業情報分析課 窪田 剛士

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