米国の大規模経済対策が日本経済に与える影響とは~景気のミカタ~
2021.03.19
今回の景気のミカタは、米国で成立した約200兆円にのぼる大規模な追加経済対策が日本経済に与える影響について焦点をあてています。
米国で約200兆円規模の追加経済対策が成立
また、2月25日にNBER(全米経済研究所)が発表した2020年10~12月期の実質GDP(国内総生産、2012年連鎖価格)は18兆7,839億ドル(前期比+1.0%)でした(図表1)。7~9月期(同+7.5%)から2四半期連続のプラス成長となっており、新型コロナウイルスによる危機前(2019年10~12月期)の97.6%の水準まで回復しています。その差は4,701億ドルであり、1.9兆ドルにのぼる金額は財政出動による経済過熱が懸念されるほどの規模と言えるでしょう。
今回の追加経済対策にはワクチンや医薬品の供給支援、失業給付上乗せ、中小企業支援などが含まれますが、その柱は高額所得者を除く国民1人当たり最大1,400ドル(約15万円)の現金給付です。しかし、米国はすでに2回の給付で一人当たり1,800ドルを支給しています。名目GDPの11%に相当する給付金は米国民のなかで積みあがっていて、新型コロナウイルス感染症が収束に向かい経済活動が強まってくれば、消費が必要以上に過熱する可能性もあります。
米国の長期国債金利が急上昇、日本の株式市場にも影響
金融緩和と低金利という両輪で拡大していましたが、大規模な財政出動の可能性が高まったことでその一角が崩れた格好です。米国の長期金利が上昇する一方で、株式市場からは資金が流出し株価が大きく下落、さらに米国株式市場との連動性が高くなっている日本の株価も大幅に下落することとなりました(図表2)。
ここまでの市場動向は、経済学のテキスト通りに推移しています。しかし、問題はここからです。本来、米国の景気回復および長期金利の上昇は、ドル高・円安をもたらす要因となり、日本株にとっては輸出企業を中心にプラスに働くはずです。
また、金融市場の動揺が長引き金融システムへと波及するようであれば、日本銀行は金融システムを安定化させる政策を打ち出す可能性があります。もちろん、短期的な変動で金融政策が影響されることがあってはなりませんが、しっかりとカバーする必要があるでしょう。
バイデン政権による追加経済対策は米国の家計を支え、個人消費を活発化させる要因となります。また、ワクチン接種の普及・拡大により経済活動の正常化に向けた動きが加速することにもつながります。この政策の行方は、今後の日本経済に対しても影響を与える可能性が高いと言えるでしょう。そのための情報収集は欠かせません。
執筆:情報統括部 産業情報分析課 窪田 剛士
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