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  • 貸借対照表の構造 前編(資産の部)|財務会計のイロハのイ

2021.06.29

初心者向けシリーズ「財務会計のイロハのイ」Vol.3

決算書には、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュ・フロー計算書、注記表など複数の帳票が存在します。今回は先輩社員が貸借対照表の構造(資産の部)をレクチャーしますので、新入社員とともに聞いてみましょう。
先輩社員 「今日は貸借対照表の構造についてお話しします。貸借対照表は一時点の財政状態をあらわしたものでしたよね。ではイメージ図を見てみましょう。大きく左右に分かれていますね」

新入社員 「確か、借方(かりかた)と貸方(かしかた)というんですよね?どっちがどっちだか、よくわからなくなってしまうんです」

先輩社員 「簿記・会計を習い始めた人の「あるある」ですね。ひらがなで借方の「り」をイメージすると、最後に左側にはらっているので左が借方、そして貸方の「し」は右側にはらっているので右が貸方と私は覚えました」

新入社員 「なるほど、それは面白い覚え方ですね!私も今日から、左・右は卒業します」

先輩社員 「その一歩一歩が大切です。さて、貸借対照表は借方合計と貸方合計が必ず一致します」

新入社員 「知ってます!左右が必ず一致してバランスをとっているから、バランスシートと呼ぶんですよね?」

先輩社員 「たしかに貸借対照表は英語でBalance Sheet、略してB/Sと呼びますが、「均衡」という意味でのバランスではありません。Balanceには「残高」や「差額」という意味もあり、会計的には本来そちらの意味から名付けられたものです」

新入社員 「勘違いしていました・・・。聞いて良かったです」

先輩社員 「さて、貸借対照表の借方に計上されるのが「資産」のグループです。これはイメージしやすいかと思います」

新入社員 「そうですね!現金や建物、土地といったものならわかります。まだ、よくわからない科目もありますが…」

先輩社員 「順を追って中身を紹介していきますから、焦らないで大丈夫です。資産はその名の通り、お金そのものや売れそうなものが計上されます。他にも、商品を販売したけど期末時点で回収できていない代金や、ソフトウェアといった無形のものも計上されます」

新入社員 「上半分が「流動資産」、下半分が「固定資産」とありますが、なにが違うのでしょうか」

先輩社員 「資産は「流動資産」と「固定資産」として、営業に深く関連するかどうか、1年以内に現金化するかどうかという観点で区分して表示するルールがあります。それぞれ正常営業循環基準、ワンイヤールールといって、今度説明する負債も同様の考え方で区分していますよ」

新入社員 「1年以内に現金化するかどうかはイメージができます」

先輩社員 「ワンイヤールールの方はわかりやすいですよね。貸したお金で考えてみると、1年以内に返してもらう予定なら「流動資産」で、1年以内に返してもらう予定ではない分は「固定資産」に表示します。では、正常営業循環基準は聞いたことはありますか?」

新入社員 「いえ、聞いたことはありません。ただ、言葉のイメージから、普段の営業で取引するときに使う科目ということでしょうか?」

先輩社員 「なかなかいい線行っていますよ!正常な営業サイクル、例えば商品を仕入れてきて残った在庫、それを売って入金待ちとなっている債権は、入金予定時期に関係なく「流動資産」に分類されます」

新入社員 「正常な・・・ということは異常なものもあるんですか?」

先輩社員 「その通り。正常な営業サイクルから外れてしまったものとして、経営破綻や実質的にそのような状態の会社に対する債権があります。破産債権、更正債権と呼びますが、これらは正常営業循環基準ではなく、ワンイヤールールに照らして「流動資産」と「固定資産」どちらに表示するかを決めます」

新入社員 「まずは正常営業循環基準、次にワンイヤールールで考えるということですね。「流動資産」と「固定資産」の区分がよくわかりました!」

 次回のテーマは、貸借対照表の構造 後編(負債の部・純資産の部)です

ポイントの整理

1:貸借対照表には借方と貸方があり、左右の合計が必ず一致する
   
2:資産・負債ともに正常営業循環基準とワンイヤールールによって、流動と固定に区別される

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