固定資産 後編(投資その他の資産)|財務会計のイロハのイ
2021.09.21
前回まで、固定資産に含まれる「有形固定資産」「無形固定資産」について説明してきました。今回は、すぐに現金化するものでないため固定資産に記載されている「投資その他資産」について、記載される項目や内容、気を付けたいポイントをおさえましょう。
新入社員「そうなんですね。やはり固定資産の分類なので、すぐに現金化するようなものとは違うんですね?」
先輩社員「はい。投資その他の資産というカテゴリーで、投資目的の財貨や他の会社等に対する1年を超える長期の貸付金などで、これまで話した有形固定資産や無形固定資産に属さないものが計上されます」
新入社員「確か有価証券は当座資産の中に出てきた記憶があるのですが、こちらに計上されるケースもあると言うことでしょうか?」
先輩社員「よく覚えていましたね!そうです。有価証券は、その保有目的によって計上されるカテゴリーが変わってくる、という会計ルールがあります。当座資産の中に計上される有価証券は、短期の売買目的のものになります。では、投資その他の資産に計上されるのはどのようなケースだと思いますか?」
新入社員「ワンイヤールールのことを考えると、1年以内に売買しないような、長期で保有しようと考えている株式等でしょうか?」
先輩社員「正解です。特に満期まで保有する意図がある社債等の債権を、満期保有目的債権と言います。その他にも、子会社株式や関連会社株式といった、当面売却することはなく、他の会社を支配または、影響力を及ぼす目的で保有している株式も投資その他の資産に計上されます」
新入社員「社債と聞くと、資金調達のために発行する負債科目をイメージしますが、購入した場合は債権として資産勘定になるんですね。ちなみに、どうするか迷っている株式があったときはどうするんでしょうか?」
先輩社員「明確に短期で売買する目的や、子会社株式のような支配の目的がなければ、その他有価証券として投資その他の資産に計上されます。また、売りたくても売れない、つまり上場されていない株式もこちらに計上されることになります。決算書上の勘定科目は投資有価証券という名称になることが一般的です」
新入社員「目的が途中で変わったら振り替えるんですね!」
先輩社員「そうなりますが、会計ルールまた税務の観点からも保有目的の区分を変えるのは正当な理由がなければダメです。この考え方は、他の適用している会計方針などもそうで、その会社が勝手気ままにコロコロ変えられては困りますからね」
新入社員「確かにそうですね。毎期流動比率が大きく増減するなど、分析もわからなくなってしまいます」
先輩社員「それと、この投資その他の資産で忘れて欲しくないのが「破産更正債権等」や「長期の貸付金」の存在です」
新入社員「破産更正債権等は確かに資産価値がなさそうですね。でも貸付金などにも注意すべきなのでしょうか?」
先輩社員「破産更正債権等は、通常は貸倒引当金が設定されることにより簿価に計上される金額が小さくなっていると思いますが、貸付金は、例えば赤字続きのグループ会社に貸し付けているお金だと、必ずしも返ってくる保証はありませんよ。もちろん、貸付金そのものが悪い、というわけではなく、その中身の見極めが重要になってきます」
新入社員「なるほど。長期滞留している債権ではないか、といった着眼点ですね。以前、月商でチェックする方法を教えてもらいましたので、多額の貸付金が計上されているときは気をつけたいと思います」
次回のテーマは、繰延資産です。
ポイントの整理
②投資その他の資産に計上される有価証券は、満期保有目的債権と子会社・関連会社株式、また、その他有価証券である
③破産更正債権等や長期滞留している貸付金などは、その中身に注意する
関連コラム
一般債権は流動資産に計上されますが、一年以内に回収されない見込みとなった貸倒懸念債権や破産更生債権等は投資その他資産に区分計上されます。
■企業審査人シリーズvol.122:有価証券と評価 ~カブの話~
有価証券は保有目的によって計上する科目が決まります。いずれの有価証券についても売却時の価格が簿価を上回っていれば売却益、下回っていれば売却損が損益に計上されます。