休廃業の可能性を予測する ~第1回 休廃業の現状~
2021.09.09
地域経済を支える企業の望まない休廃業を回避し、早期に必要な支援が行き渡る社会インフラの整備に貢献するため、帝国データバンクでは、信用調査によって収集した企業情報をもとに、企業が1年以内に休廃業・解散する可能性を予測する統計モデル「休廃業予測モデル」を開発しました。本コラムではモデル開発で明らかになった企業の特徴に触れながら、事業承継や休廃業の問題に関して解説していきます。
倒産と休廃業・解散の定義
■倒産の定義
「倒産」という言葉は、法律用語ではありません。一般的には「企業経営が行き詰まり、弁済しなければならない債務が弁済できなくなった状態」を指します。具体的には、以下に挙げる6つのケースのいずれかに該当すると認められた場合を「倒産」と定めます。
1. 銀行取引停止処分を受ける ※1
2. 内整理する(代表が倒産を認めた時)
3. 裁判所に会社更生手続開始を申請する ※2
4. 裁判所に民事再生手続開始を申請する ※2
5. 裁判所に破産手続開始を申請する ※2
6. 裁判所に特別清算開始を申請する ※2
※1 手形交換所または電子債権記録機関の取引停止処分を受けた場合
※2 第三者(債権者)による申し立ての場合、手続き開始決定を受けた時点で倒産となる
倒産は会社を清算(消滅)させる“清算型”と、事業を継続しながら債務弁済する“再建型”に分けられます。
清算型:「破産」「特別清算」、大部分の任意整理
再建型:「会社更生法」「民事再生法」、まれに任意整理の一部
■休廃業・解散の定義
一方で休廃業・解散は、「倒産(法的整理)によるものを除き、特段の手続きを取らずに企業活動が停止した状態の確認(休廃業)、もしくは商業登記等で解散(但し「みなし解散」を除く)を確認した企業の総称」としています。
どちらも企業が存続できなくなるという点では共通していますが、そのメカニズムは異なります。実際に弊社が作成している倒産を予測する「倒産予測モデル」では、企業の資金繰りに関する情報を中心に算出していますが、休廃業・解散を予測する「休廃業予測モデル」では代表者の属性や取引企業・金融機関との関係性を中心に算出しており、それぞれに使用するデータは異なります。
倒産の7倍!?休廃業件数の現状
また、2021年1月~6月の休廃業・解散件数は28,400件と前年同期比で4.6%減でしたが、業種別にみると件数にばらつきがあります。観光関連の休廃業・解散が前年から大幅に増加しており、「ホテル・旅館」(104件)は過去5年で初めて6月時点で100件を超えたほか、旅行代理店など旅行業全体の休廃業・解散は過去最多ペースとなっています。
2021年1-6月 全国企業「休廃業・解散」動向調査
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p210705.html
休廃業の主な要因 ~後継者不足~
また、日本政策金融公庫が2020年に発表した『中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2019年)』でも、後継者難を理由に廃業を予定する企業が29%もあることがわかりました。社長の平均年齢は、弊社が毎年行う『全国社長年齢分析』でも年々右肩上がりで、2020年は1990年の調査開始後初めて60歳を上回りました(図2)。
高齢化が進む中、後継者不足に悩む企業への支援が遅れれば今後も休廃業・解散件数は減少せず、高水準で推移していくことが予想されます。
休廃業は他人事ではない
企業の休廃業・解散は、このように地域経済にとってマイナスの影響をもたらし、決して他人事ではありません。地域や産業ごとに実態は異なりますが、特に自社の取引先や関係する業界の動向は注視する必要があるでしょう。
次回は「第2回 相談できない事業承継問題」です。
第1回 休廃業の現状
第2回 相談できない事業承継問題
第3回 休廃業予測活用事例