休廃業の可能性を予測する ~第3回 休廃業予測活用事例~
2021.10.07
休廃業リスクは業種によりばらつきが大きい傾向がある
※QPランクとは予測モデルで算出された確率を10段階に格付けしたもので、QPランク1から10へ上がるにつれて休廃業リスクが高まります
2021年7月時点で算出可能な全体のデータでは、高リスク群とされるQPランク6~10の割合は41%でした。地域別では、いずれの地域も全体割合の41%から±2%程度の差となっており、地域による休廃業リスクの差はあまりないことが分かります(図1)。
一方、業種別をみると、鉱業や運輸・通信業ではQPランク6~10の割合が20%代と比較的低く、卸売・小売業,飲食店や不動産業は約50%となるなど、業種によって休廃業リスクにばらつきがあることが分かります。
休廃業予測モデルの活用事例
1.事業承継の支援対象先選定に悩む自治体A
自治体Aは地域の企業が相次いで休業や廃業をしてしまい、働き口が減ってしまうなど地域経済が衰退していくことに危機感を抱いていました。そこで自治体側から企業へ積極的にアプローチを行う「プッシュ型の事業承継支援」を行おうと考えました。しかし、地域内の企業は約2,000社あり、総当たりでアプローチをしていくにはマンパワーも時間も足りません。
⇒休廃業予測モデルでは地域や業種、売上規模などを絞って抽出することが可能です。エリア内の休廃業リスクを把握し、高リスク先からアプローチを行うことで、効率的に事業承継支援を行うことが出来ます。
2.取引先の休廃業リスクを知りたい金融機関B
金融機関Bは融資先企業が年々休廃業していき、その対象が減っていくことに危機感を覚えていました。融資先の社長たちは金融機関に休業や廃業を検討していることを知られると、今後の関係性にマイナスの影響が生じるのではないかという懸念からか、なかなか相談してくれません。
⇒企業指定で休廃業予測モデルの抽出が可能です。また、融資先以外も把握したい場合は、「○○銀行と取引あり」などの条件での抽出もできます。
3.サプライチェーンを守りたい大手食品卸C社
大手食品卸のC社は販売先である小売店が年々休廃業などで減少していることを問題視し、販路の縮小を防ぐための打開策を模索していました。
⇒自社取引先の休廃業リスクを把握し、例えば低リスク先と高リスク先をマッチングさせてM&Aや業務提携を促すなど、休廃業への対策を行うことが可能です。
4.新規事業を計画する倉庫業D社
倉庫業を営んでいるD社は新規事業として、貨物の運送に着手しようと計画していました。しかし許認可の取得や設備投資、人材の確保など、1からすべて揃えることはハードルが高いため、M&Aによる買収を検討しましたが、その候補先選定に悩んでいました。
⇒休廃業予測モデルでは地域や業種、売上規模、従業員数などによる企業の絞り込みが可能です。他には許認可の取得状況や保有設備の情報といった情報を加味して、希望条件に近い候補先の選定が可能です。
本コラムでは3回に渡り、休廃業の現状や事業承継支援制度とその課題、弊社が開発した休廃業予測モデルについて解説しました。新型コロナウイルスの影響もあり、不安定な状況だからこそ、客観的な指標である休廃業予測モデルを活用頂くことで、望まない休廃業の防止やサプライチェーン維持等への一助となれれば幸いです。「地域の休廃業リスクの状態を知りたい」「取引先の休廃業リスクを知りたい」等のご要望があれば、お気軽にご相談ください。
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第1回 休廃業の現状
第2回 相談できない事業承継問題
第3回 休廃業予測活用事例
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中小企業庁によると、2025年に日本全体の3分の1を数える企業が、後継者不足などによる廃業リスクに直面すると試算しています。休廃業を見極める定性的な要素にも触れています。